第二十三話 「勇者様のやり方」
「クソッ、離せ!」
「ケイ! 早く!」
「ごめんッ!!」
かつては守り抜くと心に決めていた仲間を背から貫く。
おかげで向こう側にいる男の心臓を貫くことができた。
「か……ハッ……」
二人から剣を抜くとアクラインだけが純白の床を血で染めて倒れ、そして何事もなかったかのように起き上がった。
「グゥ、大丈夫?」
「これくらいなら問題ないわよぉん。アナタの腕が良かったおかげでね」
吸血鬼の再生能力を持つグリゴールもまた傷を塞いでケイの隣に並んだ。
「……これで一度か。少々貴様らを見くびっていたようだ」
「一年前のアタイと同じだと思わないことねぇん。真の乙女は日に日に強く可愛くなっていくものなんだから。今なら三十回に一回はラファーダルに勝てるわよ!」
「アレンくんも遊んでないで魔法を使えば? このままだとすぐにあと二回倒しちゃうよ?」
「クク……言うじゃないか」
三つしかない命を一つ失ったというのにアクラインの声はなおも愉悦を帯びている。
その声を聞いて悪寒が走った。
口では余裕綽々なフリをしていても、頭の中では認めざるを得ない。
彼は究極奥義の「普天愚者」どころか裏アレン流の技を一つも使わずに戦っていた。
自分達は一段階手加減している状態のアレンに勝てただけであると。
「それではお言葉に甘えて、魔法ではなく武器を使わせてもらおうか。来い、クアッドフォルト――」
アクラインが右手を開いて名を呼ぶと。
どこからか黒い筒が飛んできてその手の平に吸い付いた。
「力を貸せ」
アクラインが筒を力強く握りしめると、ヴーンという重低音と共に筒から真っ赤な刀身が生え、程よい長さまで伸びきってから禍々しい光を帯びた。
どこからどう見ても魔剣や妖刀と呼ばれる類の代物だ。国によっては所持しているだけで罪に問われるくらいの。
「悪そうな刀ねぇん。世界平和のために折ってア・ゲ・ル」
小手調べとばかりにグリゴールが威勢よく飛び込んだ。
吸血鬼の身体能力と幼い頃より練り上げた技術を併せて矢のような速度のタックルを仕掛け。
しかしアクラインはマントを翻してひらりと躱した。
「アタイから逃げ切れるつも……り……ぃっ?」
彼女は即座に向き直って再度仕掛けようとしたが、それは叶わなかった。
まず初めに右腕が床に落ち、次に左腕、そして両脚から上が滑り落ちた。
「何よ……今のは」
「貴様はそこでじっとしていろ。勇者よ、覚悟は出来ているな?」
コーホーと不気味な呼吸音を立てて一歩また一歩と迫りくる。
ケイの聖剣を握る手には汗が滲んでいた。
(――勝てる気がしない)
初めてロジャーとラファーダルの強さを垣間見た時と同じ思いを抱いた。
どうにか目で追うことのできた太刀筋を見て思い知らされた。
さっきまでとは別次元の強さだ。
アレンにとって空手で戦うというのは単なる手加減に過ぎないことを理解できた。……いや、少し考えればわかることだ。
生涯を剣に捧げて極めた者と拳に捧げて極めた者がいるとして。二人が戦えばどちらが勝つかは決まりきっている。
武器持ちが徒手より強くて有利なのは当たり前なのだから。
「…………ミィ、お願い」
「――《常勝己隆》《四面ノ歌喰エ洞鏡》」
だから仲間を頼る。
自分が唯一アレンより優っている身体能力をさらに引き上げる。
「はぁああああっ!!」
こちらから飛び込み、ロジャーの元で一年かけて修めた『双竜の型』を繰り出す。
圧倒的な力と手数で防御を強制させ、その上から叩き潰す。
これが今の自分に最も適した剣術だ。
「それが勇者様の戦い方か? まるで加減を知らぬ暴れ龍ではないか」
「アレンくんこそ、守ってばかりでつまんないね」
思いっきり反撃してきなよと遠回しに挑発する。
すると乗ってくれたのか反撃に転じ、躊躇なく左腕を犠牲にして裏拳染みた回転斬りを放ってきた。
これを待っていた。
ここで全身全霊をぶつけてアレンの刀を弾き飛ばす――
「やァァッ!!」
歯を食いしばり、足腰に力を込め、刀を弾き飛ばすより叩き折ってやるくらいの気持ちでリターンエースを振るう。
そして聖と魔が重なった刹那、爆発音にも似た金属音と衝撃が迸り、
「ククク……」
「……どうして」
――結果として、どちらの得物も折れず弾かれず。
「力比べなら勝てるとでも思ったか?」
その通りだ。
純粋な力比べにおいて人族には生まれてこの方負けたことがない。もちろんアレンにだって。
ではどうして今、お手本のような鍔迫り合いが成立している?
ミロシュに身体能力増加の魔法をかけてもらってさえいるのに、どうして拮抗している?
「不思議か?」
仮面の下で薄気味悪い笑みを浮かべたのが分かった。
このままではやられる気がしたのでひとまず鍔迫り合いを中断して距離を取る。
だけどアレンは追撃をしてくるわけでもなく、禍々しい刀をまるで愛猫にするように優しく撫でていた。
「貴様の剣リターンエースは悪を滅するがために燃え上がり強くなる。対して俺のクアッドフォルトは持ち主が抱く悔恨の数だけ強くなる。二度と過ちを繰り返すなと力を貸してくれる」
どちらも同じ時代に同じ血の流れた兄弟が命を捧げて造ったものだ……と、全てを実際に見てきたかのように語った。
おかげでどうして拮抗しているのかが分かった。
アレンは地上の誰よりもクアッドフォルトの力を引き出すことができる。
しかし自分はリターンエースの力を引き出すことができない。どうしてもアレンを悪だと思えないからだ。
これだけの差があってまだ押し負けずにいることの方が奇跡だ。
(……ありがとう)
自分を育ててくれた人達と、自分を産んでくれた名も顔も知らぬ両親に心の中で感謝を述べた。
そしていつか出会えた時に誇れるように、声に出して誓う。
「わたしは絶対に負けないッ!!」
自分でも喧しく思える雄叫びをあげて突っ込んだ。
力の全てをぶつける。
学んだ全てをぶつける。
ひたすら全力をぶちかます。
「ははは、青いな。青すぎる」
「ぐぅゥ!」
だからといって威勢だけでどうこうできるのなら、彼は《龍おろし》や《剣神》とまで呼ばれていない。
ケイは技、知恵、そして経験の全項目でアクラインに劣っている。唯一自信のあった力ですら今となっては優位を取れない。
グリゴールも切断された手足を治すたびに加勢してくれるが、鬱陶しい羽虫を叩き落とすようにすぐさま斬り捨てられてしまう。
「貴様のように生意気な奴を五百六十人殺した」
何度も決定的な隙を晒し続けているのにアレンはひと思いに首を斬り落とそうとはしてこない。
歴史の重みを教えてやると言わんばかりに一つ、また一つと皮膚を浅く斬ってくる。
つまりは圧倒的な力の差があって、遊ばれているということだ。
だけど諦めない。
百に一つ、万に一つでも勝ち目がある限り諦めない――
「はぁアア!」
「んなっ!?」
「ここ、だァッ!!」
それはまさしく奇跡だった。
ほんの一瞬、自分でも信じられないくらいの力が出た。
グリゴールとアレンが得意とする筋力の制限解除、俗に言う火事場の馬鹿力を発揮できた。ロジャーと一年修行してもまだ四割しか発揮できないが、この瞬間だけは間違いなく限界を超えた力が出ていた。
おかげでアレンをのけぞらせ、
「貴……様ァ……!」
がら空きの左胸を貫くことができた。
万に一つを掴めてしまったのだ。
ケイがリターンエースを抜くとアクラインは力なく倒れ、そして五秒後に当たり前のように立ち上がった。
ただしわなわなと怒りに身を震わせている。
「てめぇもかよ。戦いの最中に都合よく強くなりやがってよォ。クソッたれがよォ……!」
まるで活劇において二枚目役に倒されるためだけに湧いて出てくる、下っ端のならず者染みた口ぶりで吐き捨てた。
ただしこの男は中身まで小物のそれではない。どころか最終章の最後に立ちはだかる巨悪と言ってもいいくらいの力がある。これは一種の詐欺だ。
「あー、もういいや。なんだかんだ生かしてあげるつもりだったけど気が変わった。ぶっ殺す」
アクラインは今なお仮面を被ったままではあるが、取り繕った口調は完全に脱ぎ捨てた。
「――《我々ト同化セヨ》」
それはなんとも冷静で冷徹な声音だった。
アクラインはこの世のどの書物にも記されていない言葉を唱え、虚空から発生した黒い靄に包まれた。
そして一分と待たずに靄が消え去り中から現れたのは、これまでと何一つ変わらない黒い影。
「今のって変身する魔法……だよね?」
身体が巨大化しているわけでも翼や尻尾が生えているわけでもない。
一体どこが変わったのだろうと警戒していると、アクラインが勢いよくマントを脱ぎ捨てた。
「……あれ?」
ケイは少しの間錯覚を起こしているのだと考えた。アクラインの両腕が二重に見えてしまったからだ。
しかし何度か瞬きをしても目を擦っても見えるモノは変わらない。
「アナタ、ついに人間をやめたわねぇん?」
「吸血鬼に言われる筋合いはない」
アクラインの両肩からは二本ずつ腕が生えていた。
ケイ達がそれに気づくと同時に得物を持たない三つの手を広げて「来い」と命ずると、クアッドフォルトと同じように黒い筒がどこからか飛んできてそれぞれ吸い付いた。
それらを力強く握りしめるとやはり重低音と共に刀身が生え、程よい長さまで伸びきってから禍々しい光を帯びた。
刀身と光の色はクアッドフォルトと異なり青、緑、紫と様々であるが、どう見ても魔剣の類である。
「夜にだけは会いたくないね……」
「あんなの昼でも嫌よぉん」
子供が見たら喜びそうな色合いと光り方をしているが、ケイはすでに成人している。
ゆえに恐怖以外の何も感じなかった。
「さて、あと一度俺を殺せば先へと進めるが……万に一つも勝てると思うな。我に死角なし」
アレンの宣言が虚勢やハッタリだとは到底思えなかった。
この手でたしかに二度殺したはずなのに、三度目は不可能だと心のどこかで諦めてしまっている。
身体が強張る。本能が、アレはどうやっても倒せないと認めてしまっている。
「ねぇアレンくん。その、弱点とかって……ないの?」
「あるにはある。四刀流に集中するためにロクに魔法が使えな「――《狂イ踊レヤ巌ノ亀ヨ》《舞ッテ爪弾ケ炎尾鷹》《浮環雷導》」
今までごろ寝で静観を決め込んでいたミロシュが即座に立ち上がって杖を大きく振るう。
壁と天井から百の巨礫が刳り抜かれ、礫の一つ一つが炎と雷を纏いてたった一人の人間に猛烈な勢いで襲いかかる。
魔法を使えないアクラインに情け容赦ない裁きが下され――
「――《風抗盟毘》《霜ヨ積モリテ嶺ヲ越セ》」
突如として現れた風と氷の防壁により、百の巨礫はアクラインを砕くことなく砕け散った。
死刑執行の直前に恩赦が与えられたのだ。
「今の声って……まさか!?」
ミロシュの対怪物用魔法を防いだのはアクラインではない。
アクラインの背後、魔王の元へと通ずる扉から隙間風の如く乱入してきた人物が唱えたものだ。
「言っただろ? 死角はねえって。俺の代わりに優秀な弟子がそっちの魔導士を抑えてくれるって寸法よ。というわけで梅雨払いは任せたぜルーア」
「はい師匠」
ルーアと呼ばれる弟子はアクラインと同様に漆黒の仮面とマントで性別すらも覆い隠していたが、その明朗な声に覚えのない者はいなかった。
「カレン……よねぇん? アナタまでどうしちゃったのよぉん?」
「邪魔をしないで。本気で私とやるつもり?」
決め手を台無しにされたミロシュが不機嫌そうに問う。
「《追エヨ貪レ蛇蒼炎》《百渦猟嵐》」
その問いに対してルーアは無数の竜巻と燃える蛇の群れを遣わして返答した。
よって強大な魔法使い同士の決闘が始まってしまった。
「ミィ……カレン……」
「ケイ! 来るわよ!」
「オイオイ勇者様よ、自分の身より仲間の心配をしている場合か? お優しいこったなァ……。ならお望み通りてめえから殺してやるよ!」
アクラインが前進を開始した。
二本の刀を回転させて床を削りながらケイを視界の中心に据えて歩を進める。
そうだ。
今はミロシュの心配をしている場合じゃない。
アレンから一瞬でも目を逸らすな。瞬きすらもするな。意識を研ぎ澄ませろ。さもなくば首を持っていかれるぞ。
そのように自戒してリターンエースを構えた。
「ククク……遺言は決まったか?」
アレンはじりじりと、一定の歩幅で確実に迫ってくる。
ならば間合いに踏み入ろうと足を上げた瞬間に仕掛けよう。
「アタイを無視してんじゃないわよッ!!」
アクラインがあと二十歩進めばケイに斬りかかれるといったところで、アクラインの視界から外されていたグリゴールが回り込み、斜め後ろの死角から虎のように飛びかかった。
しかしアクラインは振り向くことすらせずに関節を外して四本の刀を振るい。
「……馬鹿が」
クアッドフォルトだけを手にしていた時よりもさらに細かく、一瞬にしてグリゴールを二十等分に切り分けた。
「グゥッ! そんな……」
一連の流れを目の当たりにしたせいでこちらから仕掛けようという浅はかな考えはかき消された。
死角から飛び込んでああなるのだ。
馬鹿正直に真正面からいったらどうなるか、背筋に嫌なものが走った。
クアッドフォルトに斬り裂かれた傷が激しく痛んで警告してくれている。
「どこへ行く? 今更逃げるつもりか?」
攻めても守っても絶対にやられる。
今の自分じゃどうしようもならない。
とにかく今は逃げて、逃げて、逃げ続けて、グリゴールの回復とミロシュがカレンを抑えて合流してくれるのを待つしかない。
「待たせたわねぇん!」
グリゴールが百秒とかけずに飛び散った身体を繋ぎ合わせて復帰し、アクラインから距離を取り続けるケイの横に並んだ。
(どう? 二人で同時に行けば勝てそう? それともアタイを囮に使ってみる?)
(たぶんどっちも無理)
自分とグリゴールだけでは天地がひっくり返っても倒せはしない。
ミロシュを含めた三人ならば僅かに勝機が生まれるが、そのミロシュは今現在カレンと互角の勝負を繰り広げている。
(じゃあどうしろっていうのよぉん? 弱点とかないワケ?)
(アレンくんの弱点……弱点は…………そうだ――)
アレンは大人げない意地悪な男ではあるが悪人ではない。絶対に乗り越えられない試練を与えたりはしない。
そのように考えたケイに革新的な閃きが生まれた。
(ケイ? 何か思いついたの?)
(……うん)
ケイは苦い顔で答えた。
その閃きというのは勇者の資格を失うどころか人の道すらも外れるものだからだ。
だが、それ以外に生き残る術はない。やるしかない。
自分にそう言い聞かせて獣めいた聴力を持つアレンに聞かれないよう見られないよう、背中でサインを出す。
「グゥ、頼んだよ!」
「本当にそれでいいのね?」
「こんなところで死ねないから」
「……そうねぇん」
ケイとグリゴールは最終確認を取り合ってすぐ、二手に分かれてアクラインを挟んだ。
「また挟み撃ちか? 芸がないな。今度こそすりおろしてやる」
「あらやだ、怖いわぁん」
グリゴールが挑発するような独特のステップを踏む。アクラインは一度だけ振り返ってグリゴールを視認したが、即座に危険性はないと判断してケイだけを視界に収めた。
そして二本の刀を回転させて床を削りながら前進を開始した。
「そうそう、わたしから目を離さない方がいいよ。アレンくんがあっちを向いた瞬間にロジャーに教えてもらった必殺技を出すから」
「ハッ、生まれたての吸血鬼など目を瞑ってでもあしら――」
アクラインが何かを察知して急転換した。
(もうバレたの!?)
グリゴールの駆ける音が近づくどころかその逆、遠ざかっていることに気付き。
その目的にすらも気付いたようだ。
流石は数千年の経験を積んだ不死者なだけある。
「野郎ッ!!」
アクラインはとある一点を目がけて駆けるグリゴールに対し、二本の刀を高速で投擲した。
一本は右の太ももに、もう一本は背中のど真ん中に突き刺さってグリゴールの動きを止めた。
「チッ、まだ生きてやがんのか」
「させない!」
そしてトドメの三本目を投げようとしたところでアクラインの前に勇者が立ちふさがった。
「邪魔だ! 退け!!」
「グゥ! 早く!! あんまり持たない!!」
二本減ったとはいえ、今の自分ではアレンと渡り合うことはできない。
なので仲間を信じて防御に徹する。
あと十秒でも耐えることができれば勝てるのだから!
(お願い! もう一回だけ出て!)
それでも唯一アレンを凌駕できる奇跡を信じて剣を振るい――
「らぁアアッ!!」
――極限下においてそれは再び起こった。
「畜、生ォ……」
「もらったァッ!」
得物を二本同時に弾き飛ばされ、体勢を大きく崩したアクラインに勇者が聖剣を振り下ろす。
「……なんてな」
だがしかし、アクラインはケイが奇跡を起こすことまで予測して罠を仕掛けていた。崩れたのも演技だったのだ。
即座に体勢を正し腕を三本犠牲にしてリターンエースを受け止め、残りの一本でケイの首を掴んで持ち上げた。
「あっ……ぐ……」
苦しい。
息ができない。
痛い。
視界が狭くなっていく。
苦しい。
助けて。
岩をも砕くアクラインの手に握られ、さしものケイといえど死にずるずると引きずり込まれていく。
首の骨を折られるのが先か意識が飛ぶのが先か、この世の淵にひっかけた最後の指が外れる寸前に――
「――そこまでよぉん!!」
今しがた命を救ったばかりの仲間が救いの手を差し伸べてくれた。
途端にアクラインの握力が弱まり視界が広くなる。
土壇場の秘策が通じたのだ。
「さ、早くケイを離して大人しく斬られなさぁい。それとも“この子”がどうなってもいいワケ?」
グリゴールはルーアの首根っこを片手で掴んで持ち上げ、もう片方の手でその仮面を外した。
あっさりと正体を晒された少女は申し訳なさそうな顔でだらりと脱力して俯いている。
「それがてめえらのやり方か?」
何より大切な弱点を人質に取られてしまったアクラインの震えが腕を通して伝わってくる。
「それが勇者様のやり方かって聞いてんだよォオオオーーッッ!!」
雷が至近距離に落ちたような咆哮。
鼓膜が破けるかと思った。
「うん、そうだよ。でもわたしが考えたわけじゃないよ? だってこれはアレンくんが教えてくれたやり方だもん」
広い空間に反響する声が消え去ってからケイは答えた。
アクラインは「ああそうかよ」とぶっきらぼうに返答してケイを放り捨てる。
それから黒い筒状に戻っていたクアッドフォルトを引き寄せ。
「……クソが」
再び握りしめて生やした刀身を自身に向け、
「合格だよ」
その首ごと仮面を外した。




