第4試合
GW中1日1話投稿予定です。
「私の挑戦、受けていただき感謝しますぞ。」
まずは老獪のお爺さんと言えるウルドさんが話しかける。
「構わないよ。ボクにはやるべき使命のために此処にいる。
相手が誰であろうと僕の力を示すだけ。」
パトから聞いてた喋り方と違う気がする。
イケメンと相まってミステリアスな雰囲気になっているな。
「使命、とな?優勝を目指しているというわけでもなさそうですな。」
「個人的な理由だよ。」
「ふむ、貴公を動かすほどの何かがこの大会に出場するだけの意味があると?」
「そう受け取ってもらっていい。」
「左様ですか。深くは聞きますまい。
勇者には勇者としての宿命もあると聞いておりますぞ。それと関係しているのであろう。」
勇者としての宿命?
そういえば職業勇者になると変更できないんだっけ。
変更できないせいで呪いの装備とか思っていたが強ち間違いではないのかな?
話を一区切りさせたのか勇者が手に持っている二つの棒を目の前で先と先を当てて
「タイプ:アイビー」
そう呟くと持っていた武器が合わさるようにつながり、弧を描くように変貌していく。
そしてすぐにその変化も終わり一つの武器、弓へと変わったことがわかる。
「もしかして全部の武器に変えられるってこと?」
「そういうことですね。
プロテアは状況に応じて武器を変えることができます。
一つの武器として存在しているプロテアは出し入れしなくていいため遠中近距離への対応力は随一ですが、全ての武器で戦える、となると彼の方以外いらっしゃないのです。」
「便利な武器なんだね。」
「剣や弓、槍としても扱えるからこそ輝く武器なので、なかなかクセの強い武器だと思いますよ。」
レナさんが苦笑いを浮かべながら答えてくれる。
俺の目指してる方向と同じだから便利、と感じるがやはり基本武器は一種類、多くても2、3くらいだからこの世界でもあの武器は特殊なんだと実感する。
「しかし弓聖さんと呼ばれる人相手に弓に変えるとかあまりに挑発しすぎてない?」
「それは違いますよ。」
「どういうこと…?」
この問いはすぐにウルドさんによってもたらされた。
「久々に見ましたが、鮮やかな武器ですな。
しかも弓を使っていただけるとは儂も感極まりそうじゃ。」
「君は弓の第一人者なんだろう?
侮辱行為とは受け取らないのかい?」
「何を言うか。儂が弓師の頂点を目指そうと思ったのは貴公がいたからこそじゃ。
そしてその機会に恵まれ、感謝こそすれど怒りを覚えるなど以ての外。」
「僕と君は初対面のはずだが?」
「そうじゃろうな。貴公は50年程前に倒した魔王のことは覚えているだろうか?」
そんな昔からあの勇者は魔王退治しているのか?
というかあのイケメンは何歳なんだ?
見た目的には20代といってもいいくらいだ。
「数が多すぎて覚えていないな。」
「そうか。貴公の戦歴は皆も知っての通りだしそれも仕方ないよの。
そしたら少し老いぼれの昔話に付き合ってくれるかの。」
勇者はなにも返答しない。
無言を肯定と受け取ったのか、ウルドさんは話し始めた。
「儂がまだ若かった頃じゃ。
突如辺境の地で魔物の繁殖が増え、調査することになった。
その原因だったのが獣魔王:コベルユーグリアン。
調査の末、魔王だと気づいた時には儂ら調査団は風前の灯じゃった。
逃げ惑う儂らは獣からしたらまさに獲物。
追いつかれる、そう思った瞬間一条の光が魔王を襲った。
光の先をみると弓を構えた貴公。
そして当時、使えないとお荷物だと言われていた弓で魔王を完膚なきまでに射抜ぬいた貴公に、助かった安堵や死ぬかもしれなかった恐怖とともに弓の可能性に心が踊った。
そして貴公を超えると。
そうすれば逃げることしかできなかったあの時とも決別できると言うもの!」
距離を取り弓を構えて素早く放つ。
勇者もすぐに弓を構えて放つ。
見た感じではお互い普通に弓を放っただけだが、その一発は会場を黙らせるのに十分だった。
矢と矢がぶつかった瞬間、轟音とともに爆心地のように陥没している。
これが弓同士の戦いなのか。
弓は使えない、とは思わないが少なくとも俺の常識は簡単に崩れそうな戦いになるのは明白だった。
「儂のユニークスキルで威力をあげているのじゃが簡単に防いでしまうのぉ。」
「会場のことは気にせず全力を出していい。
そのことごとくを撃ち墜とそう。」
あれで手を抜いていたのか…。
もう乾いた笑いしかでてこない。
「ありがたい。それでは参りますぞ!」
今度は数発同時に矢を放つ。
ただその矢は直線的な動きをしていない。
勇者の左右と真上、真正面と逃げ道を無くすように動いている。
魔力であんなこともできるのかと感心していた。
勇者は空いている後ろにバックステップをし、矢を一瞬で撃ち落とす。
撃ち落とすごとに轟音が鳴り響き会場が崩れるかと思うほど揺れる。
しかし防がれたのはウルドさんも想定済みのようで、すぐさま追い込みをかけるようにあらゆる方向から攻撃していく。
勇者はというと動きながらでも正確に、そして律儀に一つ一つ撃ち落としている。
だが少しずつ端へと追いやられていく。
そして好機だと言わんばかりに強烈な一撃を放つウルドさん。
これは防げない、そう思った瞬間あらぬ方向から勇者が放ったであろう矢が、ウルドさんの放った矢を射抜いていた。
撃った素ぶりは見せていなかった。
「どこから放ったのじゃ…?」
不思議な光景はウルドさんすら理解できていなかったようだ。




