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1回戦第一試合その2

水曜日に1話予定です。

 

「あはは、探し物はコレ?」

 そう言ってミーシアは手のひら大の蒼炎を発動させていた。



「やっぱりユウのスキルを奪ったんだね…。」

「ふふふ、どう?蒼炎を使えない蒼炎の戦姫さん?

 凍すほどの力は感じないからあなたが凍らせてるのはユニークスキルの力かしら?

 まぁ安心していいの、ユニークスキルだけは奪えないの。」


 観客席にいる人たちは驚いている。もちろん俺たちもだ。

 多少スキルを組み合わせれば蒼炎自体は作れる。

 だが奪うと言うことはユウちゃん自身のスキルということだ。


 人のスキルを奪うスキルとか危険にもほどがないだろうか?

 あまりにもバランスが壊れてる気がする。


 だが実際は違うらしい。

「まぁ、自分がなんで負けるのかもわからないまま負けるなんて嫌でしょ?

 だからネタばらしをしてあげる。


 私のユニークスキルは<簒奪者>って言うの。

 相手のスキルを奪うことのできるスキルなの。

 ただ発動条件が面倒でね、私を殺すほどの攻撃スキルを受けようとすること。

 要するに殺されそうになって使えるのよ。」


 酷い発動条件だな…。

 つまり奪うためには死ぬ寸前の経験をするってこと。

 ユウちゃんと変わらないくらいの年齢っぽいあの子も凄腕の冒険者と言われている。

 いったい今までにどれだけ死ぬほどの攻撃を経験してきたのだろうか?


 それでよく平然と…いや、心が壊れかけてるからこそ普通の女の子があそこまで邪悪な笑顔と鋭い目つきになっていったのだろう。


「あはは、ただこのスキル、完全に簒奪するには相手を屈服させないといけないの。

 だから今までの相手は簒奪したスキルで痛みつけてやったの!

 私を殺そうとしたスキルで痛めつけられて、人の痛みを理解できるって素晴らしいことだと思わない?


 そして最後には『俺が悪かった、命だけは助けてくれって!』って私を襲ってきた人間が許しを乞う姿は何物にも代え難いほどに最高に気分がいいの!」

 思い出しながら恍惚な笑みを浮かべるミーシア。



 精神が狂っている、けど何故かあの子を責める気になれない。

 一番最初、本当になにも力がない状態で殺されかけたのを簡単に想像できる。

 どうしてそう言う状況になったかはわからない。

 だがその時に目覚めたスキルで道を踏み外してしまった。


 ユウちゃんも似た過去を持っている。

 死にかけた時に生きたいと願った。

 思うところもあるだろうし一体どう言う反応するのだろうか?


「ユウが勝てばスキルは戻ってくるの?」

「ええ、あなたが勝てば簒奪したスキルはあなたに戻るの。

 それに私のスキルも一つあげることになる。

 それがユニークスキル<簒奪者>の効果の一つ、奸臣なの。」


 発動条件も酷い上に負けた時のデメリットも酷いな。

 奪われたスキルなしで戦わないといけないから一点特化型の人は勝ち目ないけどね。


「どうして教えるの?」

「だってただいたぶられるのはつまらないでしょ?

 だからせめて可能性がある方があなたもやる気でるでしょ?

 あはは、まぁ私はコレを使うけどね!」


 そして笑いながら蒼炎をユウちゃん向けて放った。

 おそらく避けるの前提の攻撃だろう。

 ユウちゃんも簡単に避けて剣を構える。


「その剣を持てるってことは剣術使えるんでしょ?

 早く武器を変えなさい。その時間くらい待ってあげるの。」

「これだけで十分だよ。」


 そう言って今度はユウちゃんから攻撃を仕掛けた。

「そんな剣ですらない剣で!

 魔術師が剣士の真似ごとをするなーー!!!」

 脆い剣で斬りかかられてバカにされてるとでも思ったのだろうか?

 笑みが消え、今度は怒りが滲んだ瞳でユウちゃんを睨み叫んだ。


「どいつもこいつも蒼炎の戦姫の方が凄いだの私の方が劣っているだの!

 だからあんたがこの大会出るって聞いて私も出ることにしたの!


 私の方が強いんだって周りの奴らに分からせてやる!

 もう私を襲う奴なんていなくなる!

 もう殺される思いはしたくないの!!」

 過去には同情するがユウちゃんへの敵意は完全に八つ当たりだった。


「あんたも影に隠れて何をしてたの知らないけど、おとなしく冒険者を辞めていれば蒼炎の戦姫のままでいられたのにね!」

 そう言って特大の蒼炎を発動させていた。


 情緒不安定だったミーシアだが自分が発動した蒼炎を見るや、

「あはは、今日から私が蒼炎の戦姫ね!」

 すぐに邪悪な笑みが戻り名前すら簒奪しようとしている。


「ユウもね、生きる希望がなかったんだよ。

 それでもお姉様の料理を食べて、世界にはこんなにも美味しいものがあるんだってわかった。


 だからユウはお姉様と同じ料理人になりたいって思った。

 料理で世界はこんなにも変わるんだってみんなに知ってほしいよ。もちろんミーシアにも!」


 ユウちゃんは避けるでも戦うでもなく、対話を選んだようだ。

「ふん!たかが料理で何がかわるっていうのよ!!」

 このセリフを聞いた途端、レナさんが、

「あっ…。」と呟いた。


 俺が「どうしたの?」って聞くと、

「ユウちゃんが本気で怒るの、初めて見ました。」

 その言葉を聞いた俺たちはユウちゃんの方を見るが別段変わった様子はない。


「ミーシアにもわかってもらうんだから!!!」

 だが確かにユウちゃんにしては激しい口調だった。


「うるさいうるさいうるさーい!」

 ミーシアは聞く耳を持たず特大の蒼炎を投げつけていた。


 炎熱支配、火炎の加護も奪われているだろう。

 その状態で攻撃を受けたらさすがにひとたまりもない、そう思えたがユウちゃんは躊躇せずに突っ込んだ。


 ユウちゃんが剣を振ると蒼炎が斬れた。

 比喩でもなんでもなく蒼炎を切断していた。


「なん、で…?」

 驚きのあまり固まるミーシア。


「ユウは誰よりもそのスキルを使ってきたんだから。

 ユウのスキルっていうならユウは自分自身なんかに負けられないの!!」


「ふ、ふざけるなーーー!!!」

 怒りを露わにして愛斧:ホウセンカを構えて飛び上がり、落下のスピードと合わせてユウちゃんに襲いかかった。



 剣対斧。普通では勢いのつけた斧に軍配が上がる構図だ。

 しかしユウちゃんは迎え撃つ。


 そしてミーシアの渾身の一撃はユウちゃんの迎撃とともに、ホウセンカが刃先の部分が綺麗に真っ二つになることで終わりを迎えた。


「どうして…どうしてこんな力があるのに!

 料理人になろうとするのよぉ…。

 その力、いらないんなら私に頂戴よぉ……。

 私はもう、怖いのはイヤなのぉ……。」


 肩をプルプルと震わせ、手に持っていたホウセンカの残骸を地面に落とし、今にも泣き出しそうなのを必死に堪えている。


「ユウも一緒だったよ。料理で世界が変わるなんて思わなかった。

 でもね、お姉様が作ってくれた料理はすっごく美味しかったの。

 いまでも同じもの作ってもらってるよ。」


 そう言って一つの鍋を取り出した。湯気も出ているシチューのような食べ物らしい。

 武器みたいに入れれるのね。しかも状態そのままで保存できるとか本当に身分証(ギルドカード)って便利だな。


「食べて!」

 ユウちゃんがスプーンを取り出してスープを掬い、ミーシアの目の前に向ける。


「…いらないの。」そう言って食べようとしないと、

「いいから食べる!」

 無理矢理スプーンを口に突っ込んだ瞬間、堪えてた涙が一気に溢れ出す。

「…美味しい、…おいしい、の…。」


「わかった?お姉様の料理は世界一だよ!

 だからユウの夢はお姉様を超える料理人になること!

 それをバカにすることは許さないよ!」

「…ごめん、なさい…。」

「うん、わかればいいよ!」


 泣き崩れるミーシアと、気持ちを理解してもらえて嬉しいのか満足そうなユウちゃん。

 もう完全に試合どころではない。

 だが試合による戦闘で完全な決着がついたわけではなく、審判の人がでてきて状況確認しているが対応に困っている。


 そんな審判をみてか、

「…私の、負けでいいの…。」


 その言葉で第1試合はユウちゃんの勝利となった。

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