本戦出場者紹介
次回3日以内予定です。
「さぁやってまいりました!ネオンブライア武闘大会!!みんな盛り上がってるーー!!?」
「うおおおおー!」
そんな実況らしき人の言葉と会場の盛り上がりを聴きながら俺たち出場者はステージ脇の通路で出番を待っている。
「うんうん、盛り上がっているようで何よりだよー!
さぁボルテージ冷めやまぬ間に出場者の紹介へと移っちゃいましょう!!」
「うおおおおー!」
一つ一つの実況の言葉で興奮していく観客達。
それとは裏腹に空気がピリピリと重くなる俺たちのいる場所。
早くこの空気から離れたい気持ちと、あの観客たちの前に一番乗りで放り込まれたくないジレンマ。
だが無情にもその時がやってくる。
「さぁさぁ予選を勝ち抜いた二人を紹介していきましょう!
まずは倒した魔獣はたった一体!
しかしその魔獣はここ最近騒がせた魔獣だった!
それをたった二人で倒し、英雄への階段を登り始めた若き異世界人!
予選では他者を圧倒し、楽々と勝ちを決めた少年は過去例をみないツワモノ揃いの今回、他の本戦出場者の牙城をくずせるのか!?
入場します!その名も!ユウト・ヤナギ選手です!」
……なんだこの口上は…。ものすごく恥ずかしい。
ただ名前を呼ばれたので緊張した足取りで俺はステージへ向かう。
俺の姿が見えた瞬間、会場が一気に盛り上がった。
熱気、歓声、地響き。あらゆる感覚が伝わってくる。
ダメだ。こんなの緊張するなっていう方が無理だ。
そこから俺はひたすら無心を心がける他なかった。
「さてさてお次も予選を勝ち抜いた選手の入場だ!
その容姿を見たものは心を奪われる。
その美しさは男も女も虜にする。
実力は未知数。それもそのはず!
予選では彼女の前に荒くれ者の冒険者たちはこぞって武器を捨てた!
全員棄権という前代未聞の決着!
果たして本戦で彼女の強さを我々は見ることができるのか!?
さぁ入場です!アサギリ選手です!!」
そして着物の女性が入場すると一瞬会場が静かになる。
そして一気に盛り上がる。俺の時とは全然違う反応。
目を奪われうっとりするものが続出だ。
やはりは傾国の美女だ。
「お次は皆さんご存知かと思います。
毎回本戦出場しているバトラー侯爵家お抱え騎士!
エリク・ハイルド選手です!
この大会では珍しく前回は一回戦を不戦勝という皆さんの記憶に残ってるかもしれません!
だがしかしここで真実を話しましょう!
なんと彼が本戦にでることを決まっていたにも関わらず、予選に出場して予選参加者を全員叩き潰してしまったんです!」
…ナニヤッテルンデスカアノヒト。
「そして歴史を繰り返させるかのように今回も予選出場していた!
だが今年の予選通過はきちんと二人いる!
これが意味することは一体!?
さぁ入場していただきましょう!!」
この実況なんかエリクに恨みでもあるのかと思わせるくらい俺達とは違い落としに落としている。
そして出てきたエリクにブーイングをする観客もちらほらと。
「ブーイングも止みそうにないですが次行ってみましょう!
お次はこの方!槍師の憧れはこの人と言っても過言ではない!
槍捌きは超一流という言葉では生温い、その槍に貫けぬものはないと言わしめた強烈な突きは数多くの魔獣を屠ってきた!
槍師の頂点に君臨するはこの男!クリスト=ハイルマン選手です!」
あの人も相当な実力だったのか。
しかし過剰な説明しているんじゃないかと思えてきたな。
実際本当のことだったら俺、間違いなく負ける自信がある。
「次に出てくるのは最近噂の新進気鋭の女の子。
だが内に秘める刃は総てを切り裂く。
他者を寄せ付けず近づくものには愛斧:ホウセンカで真っ二つ。
その一撃は大人数人がかりでも止められない。
超大型魔獣も切断するその一撃で、犠牲者がでてしまうのか!?
ランクB冒険者だがその実力はランクAにも劣らない。
入場していただきましょう!ミーシア=リンスレット選手です!」
あの小柄な女の子が斧を振り回して、しかもどんなことをしたら大人数人でも防げない一撃を放てるのか…。
もうこの辺りで俺の場違い感をひしひしと感じ始める…。
「そして今大会注目の一人!
見た目はごくごく普通の女の子。
だがその見た目とは裏腹に彼女の炎は万の魔物を一瞬で消し炭に変える。
そしてその蒼炎は燃やすだけではなく彼女だけに許された世にも珍しい凍らす蒼炎!
あなたが見る蒼炎は触れたもの凍らす炎か、それとも燃やす炎か!?
かの有名な儀礼剣:シオンに魅入られし少女。
一体どこにそれほどの力があるというのか!?
誰もがこの通り名を聞いたことがあるだろう。
皆さんお待ちかねのこの方に入場していただきます!
元ランクA冒険者、蒼炎の戦姫!ユウラシア=カーネット選手!」
うおおーというよりキャーという声が勝っている。
ユウラシアちゃーんとか戦姫様ーとかいろいろ聞こえてくる。
ユウちゃんも律儀に手を振っている。
本当に有名人なんだな。
それにしてもいろいろ俺の知らない情報があったな。
儀礼剣:シオンに元Aランクか。
あの剣のことについて言ってるのはわかっているが、そんな高い武器じゃないって言ってたけど有名な武器と…やはり過剰実況か?
まぁ時間があれば聞いてみようかな。
「この方も皆さんご存知でしょう。
弓師の活躍を見せるためならと出場を承諾してくれた。
最近では弓師が増えてきたがそれは彼の功績あってのこと!
だが少し前までは弓師はパーティの邪魔と言われ続けた。
だったら弓師の実力を見せてやろうと弓師のみパーティーで災厄の元凶:炎帝ドラゴフラムを屈服させた生きる伝説。
そのパーティーでリーダーを務めた彼の弓の一撃は魔獣を貫いてなお勢いは衰えず大地を穿つ。
魔獣の弱点を射抜くその腕は誰もが感嘆をもらす。
果たして武闘大会の狭い戦場で長弓:ヤグルマギクをどうあつかうのか!?
それでは入場していただきましょう!
弓聖!ウルド=マーク選手の入場です!」
災厄の元凶って…しかもドラゴフラムとかいう名前から明らかにドラゴンだよな。
それを討伐とかこの人が一回戦の相手じゃなくて良かった。
それに俺の知らない情報ばかりで実況の説明だけで頭の中がいっぱいになりそうだ。
歓声もユウちゃんに負けず劣らずの大きさだった。
よかった、こんな後に紹介されてたらさすがに誰アイツの空気に耐えられなかっただろう。
そして最後は勇者か。
一体どんな説明されるのだろうか。
「さて、皆さんお待ちかねのこのお方!
おそらく彼を見るために武闘大会へ来たという人も多いだろう。
かく言う私もその一人!
今まで一度たりとも首を縦に振ってくれることはなく、出場することのなかったこの人は!
誰が呼び始めたか、『銀髪の貴公子』
倒した魔王は数知れず。
世界が魔王の混沌に包まれないのは彼がいる他ない!
孤高の強さは一体何を求めているのか!?
その説明不要の強さを我々は遂に見ることができる!
なぜ出場を決めたのか、未だに謎ではありますがそんな些細なより彼の伝説を我々は今ここで生き証人となる!
さぁ入場していただきましょう!
勇者!シュージ=ヤスイ選手です!」
その言葉とともに会場がドッと沸いた。
そして勇者の姿が見えると更に歓声が上がる。
勇者コールのおまけ付きで。
これが魔王から世界を救い続けた勇者か。
俺みたいな虚像の英雄とはわけが違う。
多くの人が平和な世界を勇者に託している。心の拠り所。
少しだけ羨ましさや、ああなりたいと思う気持ちが俺の心の中で渦巻いた。




