本戦開始
本日2話目です。
次回3日以内予定です。
本戦がスタートする朝。
俺はというといつも通りの朝を過ごしている。
もちろんへーティさんに修業をつけてもらってた二人や、今日戦うかもしれないユウちゃんも一緒にご飯を食べる。
というかユウちゃんは本戦で戦う相手がだれであれご飯の時は気にしないみたいだ。
レナさんのご飯で活力をもらい、
「悠斗さんもユウちゃんも、危なかったら絶対に無理はしないでくださいね?」
少しだけ不安があるのか真剣な表情で俺たちを送り出そうとしている。
「できること以上のことは望まないよ。
だからレナさんには安心してみてて欲しい。」
「ユウは勝つからね!お姉様、ちゃんと見ててね!」
「はい、二人の頑張り、見届けますね。」
そう言って送り出してくれた。
千佳や七海さんからも応援をもらい気力も十分だ。
会場についたが俺はともかくユウちゃんは本当にいつも通りだった。
「緊張するねー。」といいつつもそうは見えず、むしろ俺の緊張を解いてくれようとさえしている。
こういうところは戦い慣れた経験なのだろう。
出場者の待機場に案内されて見渡すと俺たち含め5人いた。
一人は奥の方で長弓らしきものを扱っている。
残り二人は談笑しているようだがその一人は…、
「……オッサンナニヤッテルンデスカ。」
そこにいたのはエリクだった。
「おやおや、これは初めまして。君も本戦出場者なのかい?
しかしいきなりおっさんとは失礼だな。」
惚けたように聞いてくる。
「あんた俺に予選一回戦で負けたよな?」
「はっはっはー、それは誰のことか私にはわかりかねるな。」
「そのわざとらしい笑い方やめてくれ。
それで実際どういうことなんだ?」
口を割る気ないのかと思ったらそうでもないようだ。
「なに、予選の試合数はあまりにも多い。
それを2日で終わらせる日程はなかなかに骨が折れる。
そこである程度実力をもつもの以外を間引く必要があるのさ。」
「それと本戦にもでてくるのがどう繋がるんだ?」
「我々が予選に出場する際は契約魔術の一種、制約で実力を制限する。
もちろん命の危機とかだったりで解除は可能だがね。
制限された我々に勝てるようであればまずは本戦出場しても大丈夫だろう、と判断される。
そして本戦一回戦目で我々の制限なしの実力でもう一度相対してもらうというわけだ。」
「どうしてそこまで回りくどいことをする?」
「本戦免除枠はある意味で化け物揃いだ。
だが形式上、予選も開催しているが実力にはかなり差が出てしまう。
予選を戦った君ならわかるんじゃないだろうか?」
「たしかにあなたを基準に考えてた2回戦3回戦は呆気なかった。」
「そういうことさ。特に今回の実力は過去最高水準。
勇者筆頭にそこの蒼炎の戦姫殿含めてな。
だがいきなりそういう実力者にぶつかって心を折らせるわけにはいかない。
だから制限魔術で順序よく実力に合わせて戦わせるのさ。」
ニコラさんが言った予選を通過した人が戦う相手が決まっているというのはそういうことだったのか。
「つまり今日の俺の相手はエリクで、今回は本当の意味で本気ということ?」
「そういうことだね。君と全力で戦える日をどれだけ楽しみにしていたことか!」
「たった2日前に戦ったばかりなんだけどね…。」
俺は逆ハの字に腕をあげ、やれやれのポーズを作る。
そこで思い出すのがもう一人の予選通過者だ。
「ということはもう一人の予選通過者の方は棄権した中にいたんでしょう?大丈夫なのか?」
「大丈夫も何も…
そこまで言いかけたところで待機していた一人が話しかけきた。
エリクの鎧姿とは違い、動きやすさ重視の格好だ。
「心配には及ばん。俺としても何故棄権したのか覚えていないが今回は制限がかかっていない。
それで防げないようなら相手の方が実力が上だということ。俺の仕事もそこまでということだ。」
エリクは戦うこと自体楽しんでいる節があったが、この人は仕事としてやっているという感じか。
「えっと、クリスト、殿?」
「ほう俺の名前を知っているのか。」
「審判の人があなたも棄権したとかなんとか。」
「ぐっ…。」
苦虫を噛み潰したような顔をしている。
口では平静を装っているが屈辱だったのだろうか?
だがそれ以上の言葉を紡ぐことはなかった。
「ねぇねぇ、ユウの相手は誰なのー?」
話を聞いていたユウちゃんは気になったのかエリクたちに質問していた。
「私の相手はともかく、本人がいない状況で不公平に君の相手を話すわけにはいかないな。
それに開会の儀式はすぐ始まる。どうせすぐにわかるさ。」
「むぅー、ケチ!」と頬を膨らませて拗ねる姿をちょっとだけ微笑ましくも苦笑いを浮かべているエリクとクリスト。
そんなタイミングでまた一人、出場者が案内されてきた。
「…女の、子?ユウちゃん以外にも?」
案内されていたのは遠目からでもわかるほど敵意むき出しで目つきの悪い小さな女の子だった。
「あぁ、彼女はミーシア=リンスレット。
最近ランクBになったばかりの冒険者だが、実力はAランクに届いているといわれているよ。」
そんな彼女が辺りをキョロキョロ見渡して獲物を見つけたような笑みを浮かべてこっちに近づいてくる。
そして俺たちに近づいて、
「あんたが蒼炎の戦姫?」
「ユウはユウだよ!」
用があったのはユウちゃんの方にだった。
「冒険者をやめたあんたが何しに戻ってきたか知らないけど、大会で当たったらすぐにその化けの皮剥がして無様這い蹲らせてあげるから覚悟してなさい!」
「むぅー!ユウはお姉様の前で負けないよ!」
「ふん!せいぜい残りの時間を怯えて過ごすといいわ!」
その言葉を残して彼女はその場を離れていった。
「もーなんなのあいつ!ユウ、あいつキラーイ!」
「ははは。」と俺は苦笑いを浮かべてユウちゃんの機嫌が直るのを待つことになった。
次に案内されてきたのは着物の女性、アサギリさんだ。
辺りを一瞥したらユウちゃんとミーシアって子を少しだけ見つめていた。
昨日子供たちといたから子供好きなのだろうか?
ただ直ぐに視線を外し、他には興味なさそうに隅の方へ移動して目を瞑ってしまった。
クリストが反応したのがわかったが武者震いというやつか。
これで7人。最後の一人がおそらく勇者だろう。
そしてすぐに案内されてきた銀髪長身のイケメン。
外見からしてもモテる要素を詰め込めるだけ詰め込んだような、主人公そのものだ。
ただ勇者もアサギリさん同様興味なさそうに…、と思ったら一瞬こっちを見た気がする。
だがすぐに視線を離して誰もいない場所に向かっていった。
見てた気がしたが気のせいだろうか?
まぁ気にしても仕方ないか。俺自身があった記憶がないしな。
そもそもあんなイケメンは俺の敵!そして世の男ほとんどの敵!
冷静さを失いそうになった心を落ち着かせていると、審判らしき人が入場の手順を説明している。
俺はなぜか一番最初に入ることになった。
(どうして予選の時といい俺が最初なんだ…。
前の世界では出席番号でもいつも最後の方だったのに。
そもそもヤスイとヤナギで勇者より俺の方があとだぞ!)
と意味のない愚痴をこぼしていたが勇者が最後の時点で実力者が最後なのかなと納得してしまう。
最初に勇者だして最後の方に誰だアイツの空気で紹介されるよりよっぽどいい。
そして緊張が高まってきたところで入場が始まった。




