有名人レナさん
料理人高ランクということで多少は有名人だろうとは思っていた。
冒険者ギルドに向かう途中、市場みたいな活気のある場所を通っている出来事だ。
最初に声をかけてきたのは魚屋のおじさんと肉屋のおばさんだった。
「おやおや、レナちゃんじゃない?ついさっき新鮮な魚がはいってきたんだよ、買っていかないか?」
「ふっふっふっ、残念だったわね、今日はこの魔獣の肉!危険度Cランクの肉を仕入れたんだ。みていってくれよ」
「なんだなんだ、今日はやけに仕入れに力を入れたんだな?
貴族様相手ならまだしもここでそんな高級食材、採算とれるのか?」
「そりゃもちえろん、レナちゃんのこと見てたら今日がレナちゃんにとって大事な日だっとはわかるだろ?
だったら私たちがやれることはいい食材を仕入れることさ。
何よりレナちゃんが選んだ食材は売れるからね。」
そんな会話を繰り広げる二人。
レナさんは周りがわかるくらい今日楽しみにしてくれたんだなっと、ちょっとうれしくなった。
いや、肉屋のおばさんの会話は女性特有のしたたかさに若干引き気味になったけど。
と、そんな会話を聞いてると八百屋にいた上半身裸、エプロン姿の筋肉質なダンディーおじさんに見つかってしまった。
「おい、坊主。もしかしてレナちゃんが待っていた男か?」
ものすごく睨んでらっしゃる。
威圧感がすごい。
そして値踏みするような目で見ている。
俺も威圧感にまけないように堂々と答える。
「ああ、俺の名前は悠斗、今日初めてこの世界にやってきた。わからないこともたくさんあって迷惑をおかけると思いますが、これからお世話になります!よろしくお願いします!!」
そう言って頭を下げる。最初は勢いよく言うつもりが、どんどん丁寧語になってしまったのは愛嬌ということで…。
「おう、元気なやつだな。オレの名前はジャンバルだ。そうか、お前が待ち人か。
へなちょこだったら追い払おうとも思ったが及第点、だな。
レナちゃんはこの辺りでは知らない人がいないくらい顔が広い、人当たりもよく何より食材をおいしく作ってくれる。
ここにいる奴等は全員レナちゃんの味方だ。もし泣かしたら、わかるよな?」
「言われなくても泣かせたりしない、レナさんの笑顔は俺が守ってみます!」
その言葉を聞いて納得してくれたのか、いつのまにか集まっていた市場の人達に囲まれてうなづいていた。
「だ、そうだ、レナちゃん。いい男じゃねぇか」
ジャンバルさんはレナちゃんに向かってニカっと笑って親指を立てている。
「もう、ジャンさん…恥ずかしいですよ…。」
レナさんは顔を真っ赤にして両手の人差し指同士をツンツンしていた。
そのしぐさもすごくかわいかった。ただこのままでは先へ進むにも時間がかかりそうだ。
レナさんにそろそろ冒険者ギルドに向おうかと言おうとしたらレナさんと目が合った。
同じ気持ちだったみたいで頷いてくれた。
「みなさん、あの、冒険者ギルドへ向かうのでそろそろ…。」
レナさんの一言で急に静かになった。
「…レナちゃんが、冒険者、だと?お、おい!坊主!どういうことだ!!??」
すごい権幕で詰め寄られた。どう、といわれても一緒に冒険するようになった、としか。
いや懸念してたことかな?高ランクの料理人を冒険者に引き抜きのことを言ってるのだろう。
「ジャンバルさん、さっきも言った通りです。レナさんは俺が守ってみます。安心してください。」
「お、おう…そのことはさっき聞いたが…そのことはいいんだが…おや、坊主がいいならオレがとやかくいうのもおかしいか。」
ジャンバルさんはどうもレナさんが冒険者すること自体をおそれているような?何かあるのかな?
まぁ、一緒に冒険するんだ。少しずつ知っていけばいい。
「はい、がんばります!。」
落ち着いたところで今度こそ冒険者ギルドに向かった。
市場を抜けて少し歩いたところでひときわ大きい建物の前についた。
「ここがクエスト受ける冒険者ギルドになります。」
「俺たちのスタート地点、だね。」
「はい、一緒にがんばっていきましょう。」
俺たちは扉を開きギルド内にはいった。
入った途端に感じる突き刺さる視線。初めて入るところだから緊張していた。
だけどレナさんは一度入ったことがあるのかこっちに少し微笑んでから「こちらです。」と先導してくれた。
一つの受付の前まで行き、椅子に座っている
「ヒロナさん、お久しぶりです。」
「あれぇ?レナさんじゃないですか~?どうしたんですか?冒険者ギルドに来るなんて久々じゃないですか??」
「今日からまた冒険者としてお世話になろうかと思いまして、よらせていただきました。」
「え?レナさんが冒険、ですか?てっきり料理人としてお店開くとばかりおもってましたよ~。
すっごく楽しみにしてんですよ~。
た~だ~そ・れ・よ・り・も~後ろの人がレナさんの彼氏なんですか~?」
すっごくニヤニヤしながら俺のことをみてくる受付嬢のヒロナさん
これは揶揄われていることはわかっているのと、市場の時にも経験したから少しだけ落ち着きつつ冷静に自己紹介することができた。
もちろんレナさんは“まだ”彼氏ではないと言ってヒロナさんにそれを拾い上げられて揶揄われる。
しばらくは揶揄われそうだからなれないと、な。
そんな感じでファーストコンタクトが終了したタイミングで周りの冒険者の声が聞こえてきた
「おい、あれって料理人のレナさんだよな?料理人やめちまうのか?というよりもレナさんって戦えるのか?」
「やれやれ、これだから新人は。」
「あのレナさんってあれだろ?魔術が使えないくて大剣二本持って双小剣術のように扱うっていう…」
……ん?“大剣”二本で双“小剣”、術…?
ものすごく不安にさせてくれる情報を昼間から酒を飲んでる冒険者が話しているのが耳に入ってきた。
もしかしてジャンバルさん達が物凄い剣呑でレナさんが冒険するのかきいてきたのはこれが原因だったのだろうか?
俺は聞こえなかったフリをしてヒロナさんに冒険者としての手続きをしてもらうことになった。