本戦前日
次回週末予定です。
俺も予選通過者です、っていえばタダでもらえるんだろうか?
そんな邪な思いを振り払い、
「あの人がアサギリさん、なのか。」
「悠斗さんはご存知の方なのですか?」
不思議そうに聞くレナさん。
俺がこの世界で知っている人はだいたいレナさんの知っている人だから、自分の知らない人を知っていることに不思議に思っているのだろう。
予選通過者とはいえ、昨日は試合自体してないから知る機会はなかっただろうし。
「昨日ニコラさんにもう一人の予選通過者について聞いてたんだよ。
全員棄権とか聞き捨てならないことだったからね。」
「そうだったんですね。悠斗さんの試合のあと、審判の方々が慌てていたのはそういう理由だったのですか。」
「そういうこと。だから俺も名前以上のことは知らないよ。」
「ふふっ、少し妬いちゃいそうでした。
でも綺麗な方ですね。」
自然な流れだったから俺も
「そうだね、本当に綺麗な人だったね。」
ついそのままの感情で他の女性を褒めてしまった。
「やっぱり悠斗さんは…ああいう方が…。」
「俺はレナさんの方が……。」
大事なことは口に出せない俺があたふたしてるところで遮ってくれたのはユウちゃんだった。
「ユウ、あの人会ったこちあるかも?」
「あるかも?」
少しだけ冷静に…たぶん元から冷静だったのかもしれないが、レナさんがユウちゃんに聞いてくれたのでなんとか場を乗り切った…のかな?
「昔、旅してた頃に声かけてきた人だと思う?」
さっきから疑問形なのは記憶が曖昧だからだろうか?
旅してた、という時点で例の時期だからあまり思い出したくないのか、それとも仇を倒した以外は覚えていないのか。
何にしてもユウちゃんにとってのあの話題は避けるべきだな。
「まぁ、何にしても予選で観れるしとりあえず今は出店巡りでもしようか!」
俺は有無を言わせないように、二人に「次あそこ行こう」と声をかけた。
そして俺たちは先程の女性のおかげか繁盛し始めた食べ物を一緒に食べることした。
……もちろん予選通過のことは言わずにお金を払ったのは決して俺に意気地がなかったからではない。
楽しい時間はあっという間に過ぎて辺り一面暗くなり始め、
「そろそろもどろうか?」
「そうですね。」
「うん♪」
俺たちは宿に戻ることにした。その途中で、
「はい、ユウちゃん。これ受け取ってくれないかな?」
「うん?ユウに?」
俺は紙袋を取り出してユウちゃんにさっき購入したプレゼントを渡す。
「これなぁに?」
不思議そうに聞いてくるので俺も勿体ぶって、
「開けたらわかるよ。」
「んーなにかなー?」
ガサゴソと袋を開けた途端、ユウちゃんはプルプル震え始めた。
「こ、これってさっきの…!」
「修業つけてくれたお礼、まだだったからね。
ユウちゃん、本当にありがとう!」
「そんな…ユウも楽しかったし…。」
ポロポロ涙を流し始めた。
泣かれるとは思っていなかったから心で慌てた俺だが涙を拭って、
「ほらほら、可愛い顔が崩れてるよ。」
そう言うと、ユウちゃんも少しだけ笑ってくれた。
「えへへ…本当にユウ可愛い?」
「ははは、何を今更言ってるの?
ユウちゃんは可愛いよ。」
「…お兄ちゃん、ありがとう。」
少しだけモジモジしながらお礼を言ってくる。
お礼を言うのは俺の方なんだが、それを言ったら無粋かな。だから俺も、
「どういたしまして。」
笑顔でそう答えた。
「ねぇ!ねぇ!付けていい!?」
「もちろんだよ。付けたところ見てみたいよ。」
そしてユウちゃんは羽をモチーフにした髪飾りをつけて、
「似合う?変じゃない?」
嬉しそうにしてくれている。
「ああ似合うよ、ユウちゃんに送れて良かった。」
ここまで喜んでるくれるなら送った甲斐がある。
そして俺はもう一つの紙袋、色違いの同じものを今度はレナさんに渡す。
「悠斗さん、これは?」
「レナさんにもお礼、だよ。
レナさんが近くにいてくれたからここまでやって来れた。ありがとう。そしてこれからもよろしくね、という意味でも送りたかった。」
「私にも、なんて…少し想定していませんでしたので…、その、なんて言えば…いえ、ありがとう、ございます。」
喜んでくれてる、かな?
レナさんも中身を確認して、
「これはユウちゃんと同じ形のもの、ですね。それに…。」
気づいたのかな。
「ユウちゃんのは白だったから同じもの買っちゃうとレナさんは綺麗な白髪で見えにくくなるかなって。
だから、ユウちゃんの髪の色、桃色にしてみたんだけど…。
俺からみても仲のいい姉妹だからそうやってお揃いだと回りもそう見えるかなって。」
「お姉様と、お揃い?」
「ふふふっ、ユウちゃんとお揃いです。」
そう言ってレナさんも髪飾りをつけてくれた。
初めてのプレゼントだったけどもう少しレナさんのことを重視して選ぶべきだっただろうか?
ただ二人で嬉しそうに髪飾りを触ってる姿は嬉しそうにしてくれてるので俺は少しホッとしていた。
今日のイベントも終わり明日に備えるだけ、だったのだが大事なことをわすれていたようだ。
宿についたタイミングで怒りを露わにして待ち構えてる女の子一人と、表情ではニコニコしている女性が俺を待っていることがわかり、
(そういえば今日到着だったのだな…。)
俺は一気に気が重くなったのがわかった。




