もう一人の予選通過者
次回3日以内予定です。
今日の朝ごはんはレナさん一人で作ってくれたみたいだ。
ユウちゃんは朝が、というよりかは寝起きが苦手らしい。
そういえば俺が魔獣戦で倒れて目が覚めたとき、ユウちゃんが泣き疲れてて寝た後、寝起きそこまでよくなかったね。
その割には修業の時はお弁当作ってきてくれたりと朝早くから作業してたような?
……いい子だなっとユウちゃんの寝起きを見つめながら少しだけニヤ付いていた。
(傍からみたらロ○コンなど揶揄されそうな状況だな。)
そんなことを考えているとレナさんの殺気みたいなのを感じて…気のせいだ気のせい。
俺は気を引き締め直して朝ごはんに集中する。
朝ごはんも終わり、俺たちは街へと繰り出した。
まずは出店巡り。
昨日レナさんが言った通り数がものすごく増えている。
元いた世界も祭りが始まる数時間前から営業している出店もあれば開始直前のギリギリ夜になってから、と言うところもある。それに近いのだろう。
そういう世間話を見かけなかった店主にしていると実際は、移動費や護衛費に比べて本戦開始日までは客もまばらで儲からないから、という世知辛い理由だった。
そんな感じで観光していると希少武器を扱ってた武器屋で見知った顔があった。
「ガッツさん、武器を探しているんですか?」
俺たちは武器屋にいたガッツさんに声をかけた。
「おー、ユウトに蒼炎の嬢ちゃんにレナさん。
いやなに、誰かのおかげで武器が粉々になってよー。」
「あー…、そういえばそうでしたね…。」
「だがまぁちょうど良かったのかもしれんな。」
「???」
俺は頭に中に疑問符で埋め尽くれたが、すぐに理由がわかった。
ガッツさんの手にあるのは槌ではなく長杖。
何もなくても魔術は使えるが、魔術補助道具として精度をあげるために使われる武器だ。
「今度は使い方、間違わないようにしないとな。」
手に取った武器を強く握りしめて呟いた。
「ええ、きっとニコラさんもヒロナさんも喜んでくれますよ。」
そこで終わっていればいい話だったのだがパーティーメンバー二人が、
「かっこいいこといってるけど、結局負けたのが悔しくて暴風魔術で今度こそはと、と息巻いてだけだぜ。」
「そうそう、昨日酒が入って途端ひどかったんだぜ。」
いい雰囲気をぶち壊したのだった。
「お前らなー!!」
また3人で戯れあい始めたので俺たちは離れることにした。
いろいろ出店も増えて行っているので何か買い物しようかと思ったら、ユウちゃんの視線が一つのアクセサリー店に向いていることに気づいた。
「あそこ行ってみようか。」
俺はさりげなく二人にそう言うとユウちゃんは少しだけ嬉しそうに、
「うん♪」
と、一目散に走っていった。
俺たちはすぐに追いかけてレナさんが、
「もうユウちゃん、人がいっぱいなんですから走ったら危ないですよ。」
「ごめんなさい。」
俯いて少し落ち込むユウちゃん。
「まぁまぁレナさん。せっかくのお祭りだから、ね?」
お姉ちゃんというより完全にお母さんだよね。
「もう、ユウトさん…。」
少し困った表情をしてたのでその間に話題を変えようと、
「それで欲しいのは見つかった?」
「これいいなってちらっとみえて…。」
羽をモチーフにした髪飾りを見ている。
たしかにユウちゃんに似合いそうだ。
だが物欲しそうにしているが買おうとはしていない。
「んーーーーーいいや!次いこう!」
結局買わずに店を離れて行ってしまった。
レナさんと見つめ合う。
「どうして買わなかったんだろう?」
「おそらくですが、料理人として必要ない、と結論を出したのではないでしょうか?」
「なるほど…。」
あれだけ欲しそうにしてたのに…、っとそこで思いつく。
「俺から送ったら受け取ってくれるかな?」
「ふふっ、きっと喜んでくれると思いますよ。」
「そうかな?修業のお礼もまだだったしこれ送ってみようかな。
レナさん、向こうでユウちゃんがこっち見ないようにしててくれるかな?」
「わかりました。ですが、すぐに合流してくださいね?
ユウちゃんは勘が鋭いのですぐにバレてしまいますよ。」
「ありがとう、レナさん。それじゃよろしくね。」
そう言ってレナさんが離れたのを確認して俺はさっきユウちゃんが見てた髪飾りと色違いの髪飾りを購入した。
さっきは親子みたいな状況だったけどやっぱり仲のいい姉妹みたいなものだからね。
色違いだけどお揃いの形ものを送ったら喜んでくれるだろうか?
そんな期待に胸を膨らませて俺は二人に合流した。
合流して間もなく回りが凄いざわついてて、一方を見ているのに気づいた。
「何かあったんだろうか?」
俺たちも気になってその方向を見ると子供に囲まれた傾国の美女、というのだろうか。
男も女も彼女に視線を釘付けになっている。
着物姿に長い黒髪に前から見ても羽が見える、蝶の羽をあしらったような大きな髪留めを付けて優雅に歩く女性。
「誰だろう?綺麗な人だね。」
俺の呟きに反応したのはユウちゃんだった。
「お兄ちゃん、ああいう人が好きなの?」
レナさんもピクっと反応したような気がする。
「好きというか…俺が前いた世界の服装だからね。
それにあそこまで綺麗に着こなせる人は見たことないかな。」
「へー、お兄ちゃんの前いた世界の服なんだね。」
俺たちが他愛の話をしていると、彼女に付いてきている子供たちは一つの出店、薄い生地にクリームやら具材を入れて食べるクレープみたいなものに興味があるようだ。
そして子供たちは一つ、商品を注文したようだ。
出来上がってすぐにさっきの女性のところへ行き、
「お姉ちゃん!予選通過、おめでとう!」
「ふふふ、お前たち…。まこと、ありがとぇ。」
嬉しそうに軽く涙を流している。
「ほー?嬢さんもしかして武闘大会でてるんか?」
「えぇ、まぁ。」
「それで予選通過とは大したものだ!
ヨシ!俺からのお祝いだ!子供達の分はタダにしよう!好きなものたのでいいぞ!」
綺麗な女性の前だからいいところを見せようとしたのかな?
ただもう子供達も大はしゃぎでどれを食べようか悩んでる。
その時だった。彼女が子供達に声をかけた。
「ほらお前たち、“言うことがありんしょう”。」
その言葉とともに子供たちが一瞬静かになった。
そしてすぐに何か考えるような仕草をして一人が、
「あっ!おじさん!ありがとう!!」
そして次々と他の子供達も
「ありがとう!」
「gracias!」
「СПАСИБО!」
ありがとう、といったのだろう。
ただ店主の人は何を言われたのかわかっておらず、
「ぐら…、なんだって?」
「gracias、俺の国でありがとうって意味だぜ!」
「ほう、勉強になった。よーし、これはサービスだ。」
そう言ってクレープみたいな食べ物の上に一つ大きな果物を乗せていた。
「イバンだけずりー!」
「おじちゃん、あたしにもちょーだい!」
収拾がつかなくなりそうなところで着物の女性が、
「ほらほらお前たち、はしたないでありんしょ。」
その言葉に「はーい」と返事して子供たちは目の前の食べ物に集中していた。
彼女はもう一度店主の方を向き、
「まことありがとぇ。」
店主が惚けているのを確認してか、子供を引き連れ次の出店へ向かっていった。




