予選通過後
次回3日以内(目標週末2話)です。
勝利が確定して俺はその場に倒れこんだ。
「これじゃーどっちが勝者かわかんねーな。」
苦笑いをしつつも俺に手を差し伸べてくれる。
俺はその手を取って立ち上がり、
「ありがとうございます。」
「おめーがなんで嬢ちゃんの蒼炎を扱えるかはしらねーが、敗者は黙って去ろう。」
そう言って振り返って立ち去ろうとしたがもう一度こちらを振り向き、
「……ヒロナさんのことよろしくな。」
その言葉だけ残して後にした。
「……。」
なんだろうこの空気。せっかく勝ったのに台無しな気分だ。
ただ、ようやく目標だった予選通過できて肩の荷が下りた気がする。
エリク戦終わったあとはどうなるかと思ったが、本当に良かった。
観客席を見るとユウちゃんは相変わらず全身を使ってぴょんぴょんと喜んでいる。
その隣で目元には涙を浮かべているようなレナさんと目があい、微笑んでくれた。
俺も少しだけ笑って応える。
今日まで強くなっている実感はあまりなかった。
というのも修業つけてくれた二人が強かったっていうのもあるんだが…。
それでもこうして自分の成長を実感できたのは気持ち的にも嬉しいものがある。
落ち着いたところで本戦について説明を受けるもルール自体は変わらず明後日、今日話しかけた受付に話しかけるように、とのこと。
明日はオフになったしやっぱり観光かな?
とりあえず疲れを取るため今日は宿に戻ることにした。
「ユウト!よくやった!あとすまんかった!!」
宿に戻るなりいきなりニコラさんに話しかけられた。
「あ、あのいきなりなにを…?」
「いやなに、いきなりお前が本戦に出るとは思わなかった!」
「は、はぁ…?」
真っ正面からそんなこと言われても受け答えに困るだけなんですが…。
「それはともかくよくやった!
おかげでお前の魔獣討伐はマグレじゃなかったと他のギルマス達も納得してくれたぞ!
「そういえば監査みたいなことするって話でしたね。」
試合見てたのか…全然気づかなかったな。
「ああ、お前の冒険者ランクも上げられそうだがどの辺りまでかは本戦次第だ。
とりあえず本戦出場はよくやった!」
頭を鷲掴みにされてるように撫でられている。
「…あ、…ありがとうございます。」
俺は撫でられてる手を少し外しつつ、
「それで謝る理由はなんですか?」
「あ、ああ…、ガッツ戦のことだ。
中途半端な鎚聖術を教えてすまなかったな。」
「いえ、それは…何も知らないまま鎚術で挑んでいたら何もできないまま終わってた気がします。
鎚聖術だったからこそガッツさんが剣聖術に変えさせるだけの間を作ってくれたんだと思います。」
「そうか…。そう言ってもらえるの助かる。
それはともかく本戦も頑張ってくれ!」
「はい、その辺はできる限り…。」
「おいおい、自信持っていいんだぞ?」
「あはは…、いきなりユウちゃんに当たったら負けそうだなっと。」
「それはないから安心しろ。予選通過者の相手はもう決まってるからな。」
「予選通過者同士で戦うとかですか?」
「いや、そういうわけでもないんだが、とりあえず俺があまり口外するわけにはいかねーのよ。」
そうすると第1シード相手とかそう言った感じだろうか?ということは勇者とかかな?
「なるほど…。そういえばもう一人の予選通過者ってどういう人なんですか?
なんか全員棄権した、とか不穏なこと聞いたんですが。」
「あぁ、それな。俺としちゃ下手な試合見らずに済んでありがてーんだが、別に試合したわけではねーからようわからん。
名前は確か…アサギリ?だったか。多分お前さんと同じ異世界人だろう。」
「アサギリさんですか。何があったわからないんですね。」
「まぁな。全員殺してたんなら問答無用で討伐部隊が派遣されてただろうが、戦闘形跡すらなく全員が棄権だからそれ以上のことはわかってねーな。
今は観察対象にして即処分できる体制を敷いているが、ギルドとしてもそれ以上は踏み込んでおらん。」
全員を棄権させる力…他人を操作するスキル?
そう考えると確かに危険な力、だよね。
それなら警戒するのも仕方ないのかな。
ただ聞いてはいけないことを聞いてしまった気がする…うん、忘れよう。
しかしアサギリさんか。どんな人なのだろうか?
「それよりガッツさんのこと聞いてもいいですか?」
この人なら何か知ってる気がするから、俺は戦いで気になったことを聞いて見ることにした。
「ガッツのこと?なんだ?」
「暴風魔術についてです。」
「なるほどな、たしかにあいつはあの戦いで使っていたな。」
「あれだけの魔術なのに結局使ったのは一度だけでした。
しかも使った後に動きが鈍くなって後悔、しているような感じさえした。」
「ほう?良く見ているんだな。
だが俺から話すことはできねーな。
ギルマスとしても一個人としてもギルドメンバーの過去を他人に話すわけにはいかねーよ。
信用問題に関わってくるからな。」
そこで区切るタイミングだったが、近くにいたのかガッツさんが俺に話しかけけてきた。
「坊主、いやユウト。俺のこと聞いてたようだな。」
「いえ、それは…。」
「いやなにただ話してるのが聞こえただけだ。
それに俺が勝ったらお前からいろいろ聞くつもりだったし、お前が勝ったんだから聞く権利もあるだろうよ。」
ちらっとニコラさんの方を見ている。
「まぁおめーが話すんなら俺は何も言わねーよ。
それじゃ俺はこれで行くからな。」
「いろいろありがとうございました。」
「なぁに気にすんな。鎚聖術の修業、余裕があればつけてやりたいが時間が足りん。
それに今からやっても本戦に出てるやつには通用せんだろう。」
「ははは…今日で存分に思い知りましたよ。」
今度は俺がちらっとガッツさんを見る。
「本当に修業つけてもらってたんだな。」っと、そんな小声が聞こえたが、ニコラさんが「そうか、まぁ頑張れや」と言葉を最後に席を外すと、
「それじゃ、少しだけ俺の昔話をきいてくれ。」
そこからガッツさんの昔話が始まった。




