武闘大会・その7
次回3日以内!多分3日後です…。
やはりこちらの待機室は少し騒ついている。
これだけ人がいるんだから毎回出て流れを知っている人もいるのだろう。
いきなり初日に全試合やるとなると魔力のことも気にしないといけなくなる。
俺はへーティさんのユニークスキルのおかげでなんとかなっているが、普通は一試合で全魔力使っていたら次の試合に差し支えが出る。
その辺の考慮しないといけない分、あらゆるものを魔力に変換できる俺に有利な状況になったのかな?
ただ、次からの対戦相手は一度は5人戦を勝ち抜いたエリク並みの実力の可能性も否定できない。
油断せずに一試合一試合を全力で、出来ることならあまり使ったことのない武器術使いが相手なら使い方を覚えて行こう。
そう意気込んで見たものの、2回戦3回戦は余裕があった。
なにしろ対戦相手で一番強い相手が2回戦は魔術師、3回戦は剣術使いだったからだ。
師匠二人に比べたら魔術の規模も大したことなく、手加減されていた剣の鋭さにすら劣っていた。
(やっぱりあの二人は特別だったんだな)
そう思わざるを得ない結果となってしまった。
勝ち上がりだけが残る待機部屋では人が減っていき、揶揄う人間もいなくなり、口数も減っていく。
次の対戦相手かもと、逆に増えていくのは視線と敵意。
そして迎えた予選最終戦。これに勝ち上がった一人が本戦出場の切符を手にする。
対する相手の一人は予想通りガッツさんだった。
「へっ、ここまで勝ち上がってくるとはさすがヒロナさんが認めた英雄“様”だな。
負ける覚悟は済ませてきたか?」
鎚を手に俺への敵意を剥き出しにしている。
「俺にも認めて欲しい相手もいる。
その人たちが見ている以上、負けるつもりはありません!」
「勝てるものなら勝ってみろ!俺はお前に勝ってヒロナさんに認めてもらう!」
俺は一挺の鎚を思い浮かべて“出てこい”と念じる。
エリクの時と違い、最初から使い方を学ぶため鎚を取り出した。
「ほぅ、魔獣を倒した時に使ったとは聞いていたが、俺に鎚術で挑むつも、り……?」
俺が武器を構えた途端、ガッツさんが言葉が途切れた。
そして戸惑いからか肩を震わせながら、叫び声を上げた。
「どうしてだ…。どうしてお前が!ニコラさんと同じ構えをしている!!?」
ーーーー修行が終わった2日後。
俺はへーティさんと共にニコラさんの部屋を訪れていた。
「ニコラさん、言われた通りへーティさんと一緒に来ましたが何のようなんですか?」
「おう、よく来たな。とりあえず座って話を聞いてくれ。」
そういって俺たちを椅子に座らせた。
「それで用件なんだが、魔獣討伐の件だ。」
「インビジブル・ワームイーター、ですか?」
「ああ。俺もあれからいろいろ考えててな、お前達への個人的な報酬を渡したいと思っていた。」
「生活出来るほどのお金をもらって、治療までしてもらった上に予選出場枠まで与えてくれてます。
修行の場所として部屋を貸してくれたりと十分すぎると思うのですが…。」
俺の困惑とは他所に話を続ける。
「それはあくまでギルドとしての報酬だ。
だがこのギルドも新人冒険者がなくなったり、人数が欠けて冒険者をやめたものもいる。
パトリックが報告してくれたらまた違った対応も取れたんだが…。
それは置いておくとしても個人的にも渡しておきたいのだ。」
「それでどうしてアタシまで一緒に呼ばれるのかしら?」
二人の修行を終えて、機嫌良さそうだったへーティさんがみるみる不機嫌になっていっている。
「まぁ落ち着けって。お前呼んだのはこれからユウトに鎚聖術を渡そうと思っているからそのアフターフォローを頼みたい。」
「えっ!?」
俺は困惑が余計に強くなり驚きを隠せなかった。
だがへーティさんはというと一瞬で目を輝かせ本当にいいいの?という感じでそれぞれ違った驚き方をしていた。
「ユウラシアの嬢ちゃんから剣聖術獲得したことについては報告を受けている。
変わったやり方だが出来るんだろう?」
報酬としては破格すぎてどう返答しようか迷っていると、
「ええ!出来るわ!アタシが保証するからすぐにやりましょう!ここ…、では何かあったら危ないわね。さぁ移動するわよ!」
こうなったらへーティさんは止められない。
「もう、早くしなさい!」と、俺たちは急かされながら例の修行部屋へ移動した。
「渡し方は共有スキルの希少武器でいいんだよな?」
「えっ、あっ 、はい。ユウちゃんのときは共有スキルで持ったまま解除したら獲得できましたけど…。」
「そうか。」といってニコラさんは赤を基調とした鎚を取り出した。
「火焔鎚<グロリオサ>だったかしら。あなたと違って綺麗な武器よね」
「うるせぇ。言われなくても俺に似合わねえのはわかってるが、使い方間違えると回りを巻き込む武器だから他人に渡すわけにもいかねぇんだよ。」
なにその危なそう武器。というか、“火焔”鎚、ねぇ。
RPGでよくあるボス戦後にそのボスの弱点武器が手に入るパターンを目の当たりにしてる気分だ。
それがあるだけでも戦いがだいぶ変わってはいたのではないだろうか?
いや、警戒心が強い敵だから危険極まりない武器持ってたら逃げられてたのかな?
まぁ倒した敵については考えても仕方ないか。
「じゃ始めるか。」
そう言って手を出してくる筋骨隆々のニコラさん。
うん、わかってるよ?共有スキル発動には通らなければならないルーティン。
今までレナさんやユウちゃん、へーティさんと可愛い女の子や綺麗なお姉さんとやってきた。
その次が逞しいおっさんと手を握るって…。
俺は心のフィルターをオフにしてこの出来事を記憶させないよう無意識のうちに終わらせていた。
【スキル:鎚聖術を獲得しました】




