武闘大会・その6
次回3/16(20時30分)投稿予定です。
勝ち名乗りを受けた俺は観覧席の方を見るとレナさんと目があった。
無事だった事をホッとしているような、それでいて喜んでくれているような。
レナさんの喜んでくれている顔を見れただけでも勝てた喜びが何倍にも増して込み上げてくる。
隣ではユウちゃんがぴょんぴょん跳ねて喜んでいる。
相変わらず見た目通りだなっと少しほっこりしてしまう。
ただエリク戦を経験して思ったのはこの大会を舐めていたのかもしれない。
緊張でまわりが見えなくなっていたのは置いておくとしても、2回戦3回戦とエリク並みの相手4人との戦いならいつかは負けるだろう。
エリク自身は予選通過できるだろうとか簡単に言ってくれるが、毎回毎回ここまで苦労するなら目標の決勝進出は下方修正しないといけないかもな。
勝てた喜びと今後の戦いへの不安が入り混じった複雑な気分だった。
緊張により全く話が頭に入っていなかった俺は審判の人から今後について聞かされた。
まず今日中にできるとこまで、例年では2回戦の途中まで行うとのこと。
二日後の本戦までに予選通過者を決めたいのと、出来るだけ予選通過者の休養時間をとるため予選は過密日程で行いたいらしい。
試合自体は無理に急ぐ必要はないが、実力が伴わないと判断されるような長引い試合は失格だそうだ。
…一度説明されたらしいが全く記憶がない。
緊張でテンパっていたから仕方ないな、うん。
これから少しずつ冷静でいられる努力をしていけばいい。
一通り説明を受けた後、俺は待機室に戻ろうとしたタイミングで慌てた様子の人が入ってきて、審判に近寄って話しをしているようだ。
「どういうことだ!?」
審判の人はいきなり怒声にも似た声で叫んでいる。
気になって耳を傾けてみると、
「いえ、それが次のグループの出場者ほぼ全員棄権する、と。」
全員棄権?どういう状況なのだろうか?
出場者全員が潔く負けを認める、とは思えない。
そもそも試合前に棄権するくらいなら出場すらしないだろう。
気になってしまい待機部屋に戻るに戻れなくなってしまった。
「だからどうしてそうなっているのだ!?
あの方もいるのだろう?なんと言ってるのだ?」
「それがその…。」
「ええい、、はっきりと言え!」
「…クリスト殿も棄権する、と。」
「はぁ!?」
審判の人が素っ頓狂な声を出していた。
クリスト、と言うのはだれか知らないが、おそらくエリク見たいに内部の人間が出場者に紛れ込んでいるのかな?
「とりあえずそっちのグループは一旦飛ばしてこっちのグループから終わらせよう。
お前はエリク殿に報告しろ。残ってるものは何人いるのだ?」
「一人です!」
「一人!?それ以外全員が棄権したのか?」
「はい!」
「そうか…。とりあえず状況はわかった。
エリク殿に報告を頼む。おそらくその者が予選通過になるだろうが…。」
会話が終わったのか報告しに来た部下っぽい人が出て行ったので俺も紛れて戻ることにした。
そう、揶揄われてたあの部屋に戻ることに。
「おいおい、あの坊主帰ってきたぞ!」
「マジかよ!?あんなガキが勝てるほど敵が弱かったのか?」
「あんなガチガチだった奴が勝てるような奴なら俺が当たりたかったぜ!」
すごく視線が痛い。そして相変わらず好き勝手に言ってくれている。
いや、あれだけ緊張していたのだから、たしかにカモを見つけたと思われるだろうな。
ただ冷静になって出場者を見ているといろんな人がいるな。
相手を威圧して自分の優位を疑わないもの。
出番を今か今かと待ち望んでいるもの。
俺のようにビクビクしているものがいるのは意外だった。
そんな感じで同じ出場者を見渡して思ったが、エリクほど強そう、と感じる人はいなかった。
いや、人を見た感じで判断するのは良くないか。
最たる例が師匠と呼ぶと頬を膨らませて不機嫌になる女の子がいる。
ただだれが相手でも俺に出来ることをすればいい。
その結果勝とうが負けようが自分の糧になると信じよう。
俺は気を引き締めて対戦するであろう出場者等を眺めていると、見知った顔と目があって案の定、敵意を向けられた。
予選のグループが別だったり戦う前にお互いどちらかが負ければよかったんだが、勝ち進んでしまうと予選で当たってしまいそうだ。
相手もユウちゃんに予選免除枠を譲ったとはいえ、それなりの実力があるからこそもとは予選免除枠だったのだろう。
ヒロナさんの思いつきで敵意を向けられるが、それでもレナさんの前では負けたくないな。
変に力が入りそうなので深呼吸をして気持ちを落ち着かせているとさっきの試合の審判の人が部屋に入ってきて試合順が変更になった、と連絡している。
ほかのグループが一人を残して全員棄権、という状況は伏せて話している。
状況がわかるまで伏せておくのかな?
結局今日の試合数が半分にとなり、本日中にこのグループの予選通過を一人を決め、明日を予備日(休養日)とすることになった。




