武闘大会・その5
追記
書いた内容少し変更したいため明日(3/13)の朝までには投稿致します。
「無理に防ぐことをせず、だからといって避けるとも違う反撃の一撃。
私が飛び込んだ力をも利用する素晴らしい一撃だった。
君とここで戦えたことは私の財産となるだろう。」
戦意が消えてない目とは裏腹に負けを認めたエリク。
「ありがとう、ございました。」
俺は無意識にお礼を言っていた。
「負かした相手にお礼とは私を侮辱するのかい?」
怒っているように感じたのはそれが理由なのだろうか?
「いえ、そう言った理由ではなくあなたが俺を鍛えてくれているように感じたから、お礼は無意識で侮辱するつもりはありませんでした。」
スポーツの対戦が終わった後など挨拶は基本だったしそういう感じで挨拶してしまったが、この世界の常識は違うのだろうか?
ふぅ、と息を吐き、
「いや、私も少し神経質になっていたようだ。
ただ気になったことを少し聞いてもいいかい?」
誤解は簡単に解けたが本題はそれではなかったようだ。
「はい、なんでしょう?」
「何故、攻撃を止めたんだい?」
「えっ…?」
俺は予想外の質問に少し戸惑ってしまった。
攻撃を止めた理由は人を斬りたくなかったから…だけど侮辱行為と捉えられそうだったから単刀直入に言うのは躊躇われた。
「いや、君たち異世界人はこういった戦いは少なかったのだろう。自分手で血を流させるのが怖いかい?」
その言葉にドクンっと動悸が激しくなった気がする。
「そ、それは…。」
口に出され、否定しようのない事実だと口ごもってしまう。
「やはり、か。少なくとも君は私に斬りつけていた。
その辺の戸惑いはないのだろう。
剣を振ること自体に躊躇いはないと言っても良いほど曇りのない剣筋だった。」
詰問されるのかと思ったら褒められ、どういう態度で接すればいいか悩んでいると、エリクは言葉を続けた。
「だが、剣を止めたことはいただけない。」
スッと目を細め睨むように俺を見ている。
その視線だけでもの凄いプレッシャーを放っていた。
負かした相手から説教。
そんな状況と考えたら反発もしたくなりそうだったが、不思議とエリクの言葉に耳を傾けたのはエリクの方が俺より実力が上だと感じたからだろう。
手を抜いている、というよりかは制限された中で全力ーーエリクが言うには本気ーーで戦ってくれた、という感じとしか思えなかった。
「君は救える人を救いたいと言ったね?」
「ええ、言いました。」
それこそが俺の強くなりたい動機。
生きる希望がなかった俺がようやく見つけた、人を救える事の喜び。
それが偽りの感情だとは思わないが、それと今の話がどう繋がるのだろうか?
「君が人を救うため倒したい相手は全員魔物だと思うのかい?」
「……それは…。」
俺は言葉に詰まってしまう。
人間だって悪事を働く。
それにへーティさんに言われた事を思い出した。
この世界は人同士でしかコミュニケーションが取れない、というわけではない。
魔物とは言え、会話やそれ以外の方法で意思疎通可能だった場合、俺は躊躇いなく斬ることができるだろうか?
「君は君なりの生き方もあるだろう。
君は私の問いに覚悟は決まった、と答えた。
だが蓋を開ければ君は“敵”である私に情けをかけた。
救いたい相手がいる場合、敵には容赦はしないことだ。」
色々教えてくれるエリクを敵認定するのに躊躇いは生じるがいいたいことは理解できた。
何か経験でもあるのだろうか?実感のこもった言葉の重みを感じた。
「ご忠告、ありがとうございます。
だれかを救いたい。そのためにはただ強くなればいいと思っていたのかも知れません。」
困難な道でも選ぶと決めた道。
エリクの言った“敵”にもいつかぶつかるだろう。
きちんと覚悟を決めないと、な。
「なに、今教えられて良かった。
長剣術だけだが君の実力はわかった。予選通過も容易だろう。
それに勇者候補はイヤでも注目を集める。
君自身の覚悟に期待しているよ。」
そう言ってエリクが闘技場を後にしようとしたら審判がエリクに話しかけていた。
「あの、今回はよろしいので?」
なんかものすごく贔屓感を抱かせるほどの話し方だった。
「何か問題があるのかい?」
「い、いえ!そう言うわけではありませんがここ最近は予選通過の厳選されていたから今回も、とおもったのですが…。」
なんだろう?聞いてはいけない内部事情を聞いてる気がする。
「私に一撃入れれるほどの実力者だと君も見ていただろう?
それなら彼が予選通過しても問題ない実力だとわかる。」
「まだ一回戦ですし彼が勝ち上がるとは限りませんが…。」
「なに、彼に勝つ実力があるならそれこそ予選通過の実力があると言うこと。
それに間違いがあるのかい?」
エリクが威圧しているようだった。
それに耐えかねてビクっとして審判が、
「いえ!そんなことは!!」
「そういうことだ。今は君は君の仕事をしたまえ。」
「はい!申し訳ありませんでした!」
そう言って審判が俺の勝ち名乗りをあげ一回戦が終了した。




