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【私は智慧の女神の加護に残されていた、智慧の女神の意思の残滓と個体名:リーファレナ=リスアミィの知識が一時的に同期して、智慧の女神の意思と能力の一部を体現している存在です。】


(……はい?)

 え?普通の答えてくれたことにビックリだけど内容の方がよっぽど驚きだった。


(残滓?レナさんと同期?体現?)

【はい。】


(どういうこと?)

【智慧の女神の加護とは、所有者を陰ながらサポートするスキルでしかありません。本来ならこうして言葉を交わすことはありませんでした。】


(サポートというのはユニークスキル<変換者>の無意識発動とか?】

【はい。】


(正直、無意識発動は助かってるよ。

 他にも前の戦闘の時も。お礼を言いたかった。

 きみ…えっと…?)


 そこでなんと呼べ良いのかわからなかった。

(智慧の女神様の残滓さん?名前は何ていうの?)


【私には名前という概念はありません。それに必要ありません。】

(必要ない?)


【はい。今回で最後だからです。】

(…最後?)


【前回、力を使ったことにより残滓の一部の消失を確認しております。状況から推察すると、今回の召喚魔術の補佐をすることでほぼ全ての残滓の消失が予想されます。】

(つまりあなたが消える、と。)


【その通りです。】


【もともと私という存在はあくまで意思の残滓に過ぎず、加護スキルでのサポートに必要な存在ではありません。

 加護スキルに影響を与えることはありませんのでそこはご安心ください。】


 消えるを受け入れているようで形容し難い感情が渦巻く。

(もしこのままあなたの力を使わなければあなたはこのまま残るの?)


【それは承服しかねます。女神ブランが女神として残っていた力を全てあなたに託し、私は悠斗様(マスター)、あなたのお役に立ちたいという意思そのものです。】


(女神として残っていた力?)

【加護のことです。女神の加護とは自分自身の力を分け与えること。

 女神ブランは世界創造に力のほとんどを使いきりました。

 あなたに加護を与える分だけを残して。

 そして女神ブランはあなたに加護を与えることで女神としての力を失った。】


(力を失うことになってまで、どうしてそこまで俺にこだわる?女神ブランとは誰なんだ!?)

【その問いに私がお答えすることはできません。】


 私が、か。ルージュさんの可能性もあるが

(……女神ブランは生きている、ということでいいんだね?)

【はい。力を失ったに過ぎません。私はあくまで意思の残滓。あなたの役に立ちたいという想いがあっても記憶がありません。】


(どこにいるかとかは教えてくれるのか?)

【あなたの近くにいて、遠い場所です。】


(それはどういう…


「悠斗さん?」

 何もしない俺を心配したのかレナさんがこちらを向いて首を傾げている。


 俺はレナさんを見つめながらさっきの言葉を思い出す。

 近くにいる、という言葉だけならレナさん、だよね。

 いろいろ謎が多いしそもそもレナさんと同期と言っていた。

 女神ブランの母体だからこそできることではないのか?


 だけど遠くにいるというのはどういうことだろうか?

 レナさんであってレナさんでない?


 近くにいるというのが加護スキルのことならレナさんであるという前提にする必要がない。

 考えてもわからないことだらけだな。

「ごめん、なんでもないよ。ちょっと長い間ぼーっとしてた。」


「ほんの数秒ほどだと感じましたが…。

 少し気になった程度ですので謝る必要はありません。

 いい子が来てくれるといいですね。」

 そう言って微笑んでくれるレナさん。

 少しキュッと結ばれた手に力が入ったのがわかった。


 結構長い間話していた気がするが数秒、か。

 …今は目の前のことに集中しよう。


(手を貸してくれないだろうか?)

【了解しました。】

 そして俺は召喚魔術を発動させる。


悠斗様(マスター)の願いのもと、召喚する最適の人物を特定。実行します………失敗。魔力が足りないため召喚することができませんでした。】


(失敗って大丈夫なのか!?暴走とかは起きないだろうな!?)

【問題ありません。ユニークスキル<変換者>の発動、及び生命力変換により可能と推察。実行しますか?】


(また生命力、か。倒れるのだけは勘弁してほしいから他の選択肢はないのか?)

【前回の記録からユニークスキル<変換者>と合わせることで倒れることはないと推察されます。】


(わかった。あともう一つだけ聞かせてくれ。召喚する人物と言ったね、相手はこっちにくることを望んでいるのか?)

【召喚魔術とは、一方的な意思による召喚ではありません。両者の願望があって初めて実行できます。】


 さすがは希望が反映される世界。

 相手も異世界に行きたいとかそう言った想いがあるのかな。


 親と離れ離れにさせるのはしのびない。

せめて子供一人でくることがないことを祈ろう。

 俺が望まない、それだけでこの世界にくることはないだろう。


(わかった。あなたに任せます。)

【了解しました。召喚魔術を実行します。】

 魔力、と生命力だろう。一気になくなったのかガクッと膝から倒れそうになるのが必死に堪える。


 そして魔方陣が光始めると同時に吹き荒れる暴風。

 ただでさえ立っているのもやっとなのに、耐えられるわけがなく吹き飛ばされる。

 レナさんの手は咄嗟に離したから一緒に吹き飛ばされることはなかったが、いつもの声が聞こえた。


【スキル<召喚魔術>の獲得に成功しました。】

 あっ、はい。それより今は途中で解除してしまったのか心配で召喚魔術を行った方を見る。


【問題ありません。無事二人とも召喚に成功しました。】

(へ?二人?)

 そう言われて暴風で吹き荒れた砂埃のせいかはっきりと見えないが二つの影があるのがみえた。


【私はこれから影ながらサポートする存在へと戻ります。どうかあなたの生きたいように生きてください。私はあなたと会える日を近くにいながら楽しみにしています。】


 最後の言葉は残滓というより女神ブランそのもののようだった。

(今までありがとう、早く会いに行けるよう頑張るよ。)

この言葉を呟くと少しだけ心の奥が暖かくなった気がした。

毎日(週7話)12時30分投稿予定です。

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