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その後

 

「ふう、終わった終わったー。」

 倒れている俺を尻目に食後の運動を終えたように背伸びをしている。

 最後の最後でトラウマが増えるところだった。


 へーティさんは俺に近づき手を差し出してくる。

「大丈夫かしら?」

「あ、はい。ありがとうございます。」

 魔力を渡してもらったおかげでだいぶ楽になる。



 落ち着いて話をするために机と椅子を出してくれた。

 あと意外にもティーセットまで常備している事に少し驚いたのは内緒だ。


「さて、今日で修行終わりだけど改めて忠告ね。」

 ティーセットの準備も終わり真剣な表情で俺を見つめる。


「まず魔力切れはこれからも気をつけることね。

 本来獲得出来るはずのないスキルを持っていてそれを行使するには魔力が相当必要だわ。


 アタシのユニークスキルで日常生活はカバー出来るとは言え、戦闘であの子のユニークスキルを上乗せした戦い方ばかりしているとすぐに限界が来るわ。」


「はい。重々承知しています。」

 修行期間中、スキルを行使していなくても魔力を少しずつ消費していることがわかった。


 そのためへーティさんから獲得したユニークスキル<変換者>を無意識に使える特訓も修行に組み込まれた。


 嬉しい誤算だったのが<変換者>の無意識発動は思った以上に相性がよく、その技術はすぐに習得できた。

 変換効率は悪いものの常時使っている魔力を補うよう発動させる分には十分だった。

 おそらくはこういう補佐が得意なスキルが頑張ってくれているんだろう。


「さて次に共有スキルによるスキル獲得ね。

 内心では止めたくないわ。

 正直ここまでの面白素材、手放すのも惜しいくらいよ。

 あなたがスキルを獲得し続けてどうなるか見てみたいの。


 でもこれだけ頑張ってる姿見せられて愛着があるのよ。

 だからアタシがいないところで倒れるようなことはしないように!」


 いろいろ本音を包み隠してさえいないが心配してくれている。

「ありがとうございます。」


「あとはそうね…。武闘大会はきっとダークホースとして活躍してくれると思うわ。

 全上位魔術をエクストラスキル込みで習得している子はいないからね。

 火炎魔術に至ってはアビリティスキルまであるもの。


 それにいろいろ言ったけど、短期決戦の武闘大会の予選ならある程度ユニークスキル込みで戦えば魔力切れが起きる前に倒しきれる可能性もある。」


「たしかに凍らせる蒼炎や、ユウちゃんですら使ったことのない反転させた上位魔術。

 これをいきなり見せたら対応に苦慮すると思います。


 ただ…へーティさんに修行つけてもらって申し訳ないですが、剣術以外の武器術持ちと初めて相手するときは同じ武器術を使って戦おうと思っています。」


「そう。アタシは別に止めはしないわ。

 もともとあなたが武器術を覚えるために出る大会だものね。


 剣聖術持ちに修行をつけてもらっていた以上、剣術使い程度ならあの子の修行だけで十分でしょうしね。

 それより魔術師相手の時はどうするの?」


「魔術師の時は正直何も考えていなかったですが、剣術と同じです。

 俺には最高の師匠がいるのですから参考になることがないと思っています。

 師匠の名に恥じぬよう全力で戦うだけです。」


「もうー可愛いこと言うんだから。」

 嬉しそうな表情を浮かべている。


 ただ緩んだ表情が、元の真剣な表情にかわり、

「ただ言っておくわ。アビリティスキルで上乗せされた特化型の魔術師の時は気をつけなさい。


 アタシがユウラシアちゃんの火炎魔術を防げないように、きっとアタシでも単純な耐性だけでは防げない特化型魔術師も出てくるわ。」


「そのためのへーティ先生を驚かせる魔術修行ですよ。任せてください。」

 俺は少しだけ笑って答える。

 ユニークスキル込みならへーティさんの耐性の上をいけることはわかっている。


 魔術で相殺をメインに置かれたら簡単に防がれてしまうんだけどね。

 だからこそあとは戦術をどうするか、それが驚かせる特訓の目的だ。


「ふふ、わかっているならこれ以上アタシから言うことは一つよ。

 全力を持って勝ちなさい。」


「はい!今までありがとうございました!!」

 俺は頭を下げてお礼を言う。

 こうしてへーティさんとの修行も終わった。



 そのあとはレナさんがくるまで軽い雑談となった。

 もちろん質面責めにあってはいるがこっちも聞きたいことがある。

「へーティさんは冒険とかしないのですか?」

「そうねー、エルフの里でひっそりと過ごす生活が嫌で冒険に憧れていたわ。それに…。」


「それに?」

「いいえ、なんでもないわ。

 でもアタシは冒険者よりかはこっちの生活の方が性に合ってると思っているわ。」


「治癒術師ですか。」

「ええ、冒険にでて同じパーティの一人救うより、今日みたいに怪我人が大量に来た時に大勢救う方がアタシは好きなのよ。」


 やっぱりこれは誘えないか。

「もしかしてお姉さんを口説こうとしていたのかなー?」

 ニヤニヤしながら図星をついてくる。


「誘うだけなら、と思っていたんですが難しそうですね。」

「ふふふ、アタシとの修行を頑張ったご褒美もまだだしそうね…。」

 意外にいけるのかも?と期待したがそうはいかなかった。


「あなたが世界を知って、それでもなおあなたの気が変わらなかったらもう一度誘ってくれるかしら?」

 これは小さい男の子が年上お姉さんに告白して先延ばしにされるパターンかな?


「わかりました。一緒に冒険できる日を楽しみにしています。」

「ふふふ、あなたを慕う子がいるんだからあんまり他の女を口説くのは感心しないわよ?」


 そう言いつつも嬉しそうに表情を浮かべてくれたことにホッとした。

 ちょうどレナさんもやってきて、いつか一緒に冒険できる日が来ると信じて、たった2週間、それでも充実した2週間の修行が終わりを迎えた。

毎日12時30分投稿予定です。

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