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治癒魔術

 

「あの、ヘーティさん?」

「なにかしら?」

 ニコニコ笑顔でこちらのをみてくる。


「いや、その…覚えてもらうわって言ったのは聞こえましたけど、どうやって覚えるんでしょうか?」

「どうやって覚えるもなにもあなたはさっき自分でしたことも忘れちゃったの?」


「…危険だといったのはヘーティさんだったような。」

「ふふふ、そんなこと言ったかしら?」


「言ってたような気がしま…

「気のせいよ!」

 言葉を遮るように早口でかぶせてきた。


「いっ

「アタシがきちんと守るからやりましょう!」

 絶対にやりたいだけだよね?

 俺がジト目で見ていると視線をそらされた。


「はぁ…わかりました。先生を信じますから無理そうなときは止めてくださいね。」

「ええ、もちろんよ!物わかりのいい教え子に恵まれてアタシは幸せだわ!」

 結局同意してしまう。

 強くなる機会があるならみすみす逃すのも…、という欲もあったのは間違いない。


「さて、全部覚えてもらうことになるんだけど、あなたはどれから覚えたいかしら?」

「まさか今日中に覚える、とかないですよ?」


「ん~?アタシがついてるから安心なさい!」

 これは覚えるまで帰らせてもらえないパターンかな?

 上位魔術、全部覚えるまで帰れません、みたいな感じだろう。

 俺はあきらめるほかなかった。


 さて、上位魔術でどれを覚えたいか、そんなもの決まっている。

「治癒魔術でお願いします!」

「まさかの回復系で来るとは思わなかったわ。」


 どうせ全部覚えるのなら順番なんて関係ないのかもしれない。

 それでも回復できる手段はきちんと整えておきたかった。

 それに…


「ヘーティさんの仕事は治癒魔術がメインだと聞いてます。

 それを間近でみれて習得できるなら習得したいと思うのは弟子として当然ですよ。」

 ヘーティさんがすごい感動してくれてる。

「もうなんて師匠思いの弟子なのかしら?

 アタシがあなたをきっと強くしてあげるわ!」


 興奮冷めやまぬ様子だった。

 ちょっと変なスイッチを入れてしまったがいつものことだとあきらめよう。


「治癒魔術からでいいのよね?」

「はい!お願いします!」


「わかった。使うスキルを説明するわね。

 まずはスキル<治癒魔術>これは当たり前として、エクストラスキル<回復補正>

 アタシの職業、治癒術師のアビリティスキル<癒しの加護>ね」


「やっぱり先生は治癒魔術の職業だったんですね。」

「ええ、珍しいエクストラスキル持ちだったからね。」


「エクストラスキル<回復補正>ですか?どういったスキルなんですか?」

「その名の通りよ。簡単にいえば大けがして血が足りない人に安定するまでは魔力が血の代わりになったり、ね。」

 いろいろ便利なスキルもあるんだね。俺が感心していると得意気に話をつづけた。

「ふふふ、このエクストラスキル持ちは世界でもあまりいないのよ。」


「そんな貴重なものを覚えてもいいのでしょうか?」

「…ユニークスキルを覚える人のセリフかしら?」


「あはは、そうですよね…。」

 たしかにそういわれるともう何も言えなかった。


「それに火炎術師でもないあなたが火炎術師のアビリティスキル<火炎の加護>を覚えてる方がよっぽど変なのよ。

 この際その辺はあなたは気にせずできることをやりなさい。

 どうしてこの力をあの時もっていなかったんだろう…って後悔しないようにね…。」


 少しだけ暗い表情になったヘーティさん。

 スキル獲得と関係があったなにかあるんだろうか?


 {ヘーティさん?」

「ふふふ、しんみりしちゃってたわ。さて治癒魔術をおぼえましょうか。」

「よろしくおねがいします!」

 そう言って手を差し出してくるヘーティさん。


 その手をにぎり、俺は共有スキルを発動させる。

 そしてさっき言われたスキルを思い浮かべ手元に集中する。

 スキル<治癒魔術>、エクストラスキル<回復補正>、アビリティスキル<癒の加護>。


 治癒魔術だけは前にも共有スキルでつかったことがあるから簡単に発動できた。

 そこから他二つを一緒に発動するイメージ。


 手元が熱くなる。治癒魔術の性能が向上したのだろう。

 そのタイミングを見計らったようにヘーティさんが共有スキルを解除する。

 そしていつもの声が聞こえた。


【スキル<治癒魔術>、エクストラスキル<回復補正>、アビリティスキル<癒しの加護>を獲得しました。】


 その声を聴いたとたん膝をつく。たぶんまた魔力をつかったのだろう。

 近づいてきたヘーティさんが俺を支え、共有スキル本来の使い方である魔力渡しをしてくれた。


「大丈夫かしら?」

「はい、急に力が抜けましたが獲得できたようです。」

 俺が発動しようとしたら手をつかまれて止められた。


「アタシが昨日言ったこと、もうわすれたのかしら?」

「先生が見ている間は無茶しない、ですね。

 すみません、成果をすこしでも早く見てもらいたくて…。」


「まだまだ時間があるのだからゆっくりしなさい。

 ただ今日中に全魔術は難しそうね。

 数日かけて覚えていく方向にしましょうか。」


 優しい笑顔をみせてくれるヘーティさん。

 この笑顔だけだったら本当に美人のお姉さんなんだけどね。

 ちょっとだけ照れ臭くなって視線を外す。


「ご迷惑をおかけします。」

「ふふふ、迷惑だなんて思っていないわ。

 アタシに付き合わせてあなたの方が迷惑じゃないかしら?」

「いえ、そんなことは…。」

 言葉に詰まる俺。


「その間が気になるけど…。今は次の魔術をどれ覚えるか決めながらゆっくり休みなさい。」

 俺は床に寝かされながら目を瞑って一休みすることにした。

毎日(週7話)12時30分投稿予定です。

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