ユニークスキル
ジューザさんが説明してくれる
「ワシの鑑定は少々特殊でね、ユニークスキル<教導者>。
鑑定した相手の所持スキルだけではなくスキル適正を知ることができる。
人には伸びやすい適正というものがあるし苦手な分野ももちろん存在する。
伸び代があるものは熟練度を上げれば上級職も選ぶことができるが、伸び代がないものを伸ばそうとしても適正の上限に簡単に引っかかる。」
そこで聞いたことのない言葉が出てきた
「適正の上限?」
「適正上限は聞いてなかったか?
そうじゃな、本人の希望でスキル獲得出来るこの世界でいくら希望があっても伸び代がないものが存在する。
一定のスキル熟練度を迎えると伸びなくなる。
辛辣な言い方をすればその分野の才能がない。
この世界には魔術というものが存在するが、例えば火魔術だな。
少しでも火魔術の適正あるものは魔力を使えばこんな風に火を生み出せる。」
ジューザさんはそういって手の平に火を起こした。
(おお、これが魔術!)
と少し感動してジューザさんの話を聞き逃しそうになった。
「適正があっても熟練度で性能が変わるのじゃ。
ワシはこの火を起こすだけでも相当な魔力が必要とする、適正上限が低いからの。
ただ適正上限が高い者はこんな火を起こすなど児戯に等しい。
それをあらゆる生活でスキルを使っていくのがこの世界の仕組みじゃ。
ただ火魔術に適正があるものが必ずしも同じ戦い方をする、というわけではない事は知っておかねばならんぞ。」
そこで俺は疑問に思う。この世界には代表的な魔法「ファイアーボール」とか存在しないのか、と。
その答えはジューザさんがすぐに教えてくれた。
「魔術とは火であったり水、風、土と言ったものを扱える力にすぎんということだ。
ある者は火魔術系統にて火を操り極大の火の玉を作り魔物の群れを一掃した。
別の者は剣に火を纏わせて自身の剣術と組み合わせた接近戦特化の火魔術使いもいた。」
要するに魔術においても一つの魔法、例えばファイアーボールとかいうのは存在しないってことか。
ただ自分で火を操りファイアーボールみたいなものは作れる。
魔術も剣術みたいに日頃の鍛錬が大事なのだろう。
そして戦い方は人それぞれということか。
魔術を使えるからと言って必ずしも遠距離タイプではない。
気をつけておかないと魔術使うから接近すれば大丈夫!という昔の知識でいたら返り討ちに遭いかねない。
それにしても<教導者>というのは前の世界でいう教える立場の人達が欲しそうなスキルみたいだね。
生徒一人一人の才能を見極め、希望と現実を擦り合わせていく。
ただこっちの世界はスキルによって本人の才能が明確にわかってします。
ジューザさんは続ける
「異世界人にとって才能の有無をはっきりわかる世界でなかったのは聞いておる。
ただワシの役目は誰にでも特定の分野でエキスパートとして活躍してもらうためにいる。
もちろん希望は尊重はする。ただ特に異世界人というこの世界の仕組みを知らない子たちには
生きてもらうためにも現実を教えてやらんといかん。」
そこまで聞いて俺は考えた
(たぶん、言いづらいほど才能の無さに真っ青になってしまったんだろうか?
もしくは主人公補正という才能がありすぎて…いや希望的観測はやめよう。)
俺は覚悟を決めてジューザさんに尋ねる
「それを説明する、ということは俺の伸び代のある才能がなにもない、ということですか?」
ジューザさんは重く閉じた口を開き一言
「……そうだ」
楽観視してたわけじゃないけど異世界転生で、小説のようにとはいかなくても普通に過ごしていけるんじゃないかな思っていた。
やっぱりそんな甘い考えで異世界にきたらダメだったのだろうか?
そんな事を考えているとジューザさんが
「お主は確かに飛び抜けた才能がない、というよりもおそらくどの分野でも普通だ。ただその普通ががおかしいのだ。」
「…普通がおかしい?」
「ユニークスキルの影響だろう。ユートのユニークスキル<憧憬者>、本来適正があるかないか、0%か100%しかないスキル適正も存在する。しかしユートの場合、今後獲得できる可能性は50%。
解放条件もあるから適正100%でない時点で解放条件を満たすことはないだろうがな」
「…ユニークスキル持ってたんだ、でも<憧憬者>って、いろいろなものにあこがれていたからかな?」
「お主がどういった生活を送ってきたかは聞かん。
ただそのユニークスキルがある限り何にでもなる可能性を秘めている、ただ辛辣な言い方をすれば全てにおいて一流にはなれん。」
「…悪く言えば器用貧乏?中途半端?かな」
「そしてそれを象徴するようにユートの獲得スキルは異常だ。
おそらく特殊な条件を満たして獲得できるスキル以外の獲得でき得るスキルをほぼ全て習得しておる。
この膨大なスキルを人間が制御できるとは思えん。
ワシが真っ青になった理由はこっちが原因だ。
ただ全てのスキルで普通止まりだけど。」
ジューザさんが一呼吸置いて
「…<教導者>というスキルを持ちながらユートを導くことができないのを申し訳なく思う。」
「いえ、そんなことありません。前の世界はどう生きていいかわからないところがありましたから、少しでも導いて頂き感謝しかないです。」
「ただ困った事があればワシのとこへ来い。これでも多くのものを視てきたからの。異世界人は特殊な者が多い。勇者へ至った者、魔王の素質を宿した者。」
(勇者に憧れた人と魔王に憧れた人、か…ああ予想できる、きっと同士だ。会ってみたいな。)
そういえば冥宮殿の管理しているということはルージュさんと会うことができる方法をしっているのかな?
「ジューザさんにお聞きしたい事があったんです。
ここは冥宮殿、ルージュ様が祀られてると聞いたんですが会う方法はご存知でしょうか?」
「まさか女神ルージュ様に会いたいと言うものが現れようとは。いや、これも異世界人の感覚なのかの?」
「異世界人とは関係無いかもしれないですが、知りたいことを知りたければ会いに来い、と。」
そういって大事なことは伏せつつルージュさんの事を聞こうとした。
だがジューザさんは勢いよく座っていた椅子から身を乗り出してきた。
「ルージュ様にお会いになった、のか!?」
「この世界に来る前にちょっとだけですが。」
「なんとも羨まs……ゴホンっ、いや、お会いになる方法だったな。
そうだな、正直に言おう、分からん。お主以外に会ったという者は聞いておらなんだ。
ただ会いに来いと仰っていたのであれば条件を満たせばお会いなってくるということなのだろう?
だったら困った事がなくても少し進歩したらここに来るがいいさ。」
少しだけ笑ってジューザさんが答えてくれた。
「はい!ありがとうございます!!」
とりあえず出来ることをしていこう。
エキスパートが簡単に生まれる世界で器用貧乏、オールラウンダーの俺。
「あとは職業を選べば終わりでしょうか?」
「これだけの大量スキル持ちは初めてだからね、変わった職業があるかもじゃ」