ユウちゃんの剣聖術と
ここまで軽く去なす程度だったユウちゃんが剣戟を受け止め始めた。
「ちょっとお兄ちゃん!急に成長するなんて聞いてないよ!」
「確かにビックリしたけどユウちゃんのおかげだからね。」
俺はどんどん打ち込む。身体が軽い。
「もー調子に乗るなー!」
ユウちゃんの反撃に合う。
いくら動きが良くなっても俺には経験が無い。
それは覆せない結果として訪れる。
「もう手加減は必要ないよね、お兄ちゃん?」
これがヤンデレ系妹の笑顔か…。
打ち込んでもユウちゃんには当たらない。
フェイント入れようとしたが動きがお粗末になる。
力いっぱい斬りつけるが簡単に躱される。
そこからは叩かれ続けた記憶しかない。
ユウちゃんは満足したような笑顔を浮かべ動きを止めた。
「お兄ちゃん、今日は終わりにしようー。」
「わかった、よ…。今日はありがとう…。」
そう言って俺はその場に倒れ込む。
「お兄ちゃん!?」
俺は疲れただけだよ、と笑って答える。
「ごめんね、ついつい楽しくなって手加減できなかったよ。」
「ユウちゃんを本気にさせれたなら結構進歩したかな?」
「んーまだダメダメだけど、全然動きが違ったからビックリして楽しくなってきたよ!」
ダメダメか…。
「それはともかく剣聖術って本当に凄いんだね。」
「ユウも獲得した時は戦闘中だったけど、獲得してなかったら死んでたと思うよ。」
サラッと恐ろしいことを言うユウちゃん。
「…もう一人で冒険に出かけたらダメだからね?」
「料理人見習いだからもう行かないよ!
それに、行くときはお兄ちゃんがユウを守ってくれるんだよね?」
そんなことを言われてユウちゃんの方が強い、とはいえない。
「ああ、もちろんだよ。今日でだいぶ強くなったからね。」
「あはは、調子に乗らないのー。」
2人で笑い合う。楽しんでもらえて何よりだ。
「でも共有スキルっていろんなことができるんだね。」
「んー、お兄ちゃん以外こんなことできるって聞いたことないよ?」
「俺以外できない?」
「たぶん、だけどね。」
…こういう俺以外、といわれると心当たりがあるにはある。
「お兄ちゃんのユニークスキルは変わってるからね。
学習特化なら覚えてもおかしくはないんじゃないかな?」
たしかにユニークスキルの効果もあるんだろう。
ただたぶん加護の力が大きいと思う…ユウちゃんにもまだ言えないけど。
「どうなんだろうね、でもこんな簡単に獲得してしまうのはユウちゃんに申し訳ないかな。」
ユウちゃんはユウちゃんなりの経験があったからこそ獲得できたスキルだ。
それを苦労もせず手に入れることに罪悪感がある。
「お兄ちゃん、それは違うよ。ユウだけの考え方かもしれない。
でもね、お兄ちゃんがその力でみんなを守ってくれるなら、ユウの今までが無駄じゃないって思えるんだよ。
ユウの力でいっぱいいっぱい、いろんな人を守れるんだって嬉しくなるよ。
それに今はお兄ちゃんを守れている気がする。」
「わかった、大事に使わせてもらうよ。」
「えへへ、まだダメダメだから修行頑張らないとね。」
「あはは、ユウちゃんは手厳しいな。」
「それに形はユウの剣聖術かもしれないけど、これから強くなるのはお兄ちゃんの力が必要だからね。
ここからはお兄ちゃん自身の力だよ。」
これが経験の差なのだろうか?
冒険者の大先輩として俺を励まし、導いてくれている。
ユウちゃん自身に言われて心の中に残っていた棘が無くなった気がする。
「ありがとう、ユウちゃん。俺、やれるだけやってみるよ。」
「うん!追いつかれるのを楽しみにしてるね!」
落ち着いたところで俺は間食用のサンドウィッチを出す。
ユウちゃんの目が輝き始めた。
「それってお姉様の!?」
「うん、そうだよ。一緒にたべれるようにね。」
「わーい、ありがとう!」
「それじゃいただきます。」
ユウちゃんの笑顔を見ていると全部食べさせたくなるがこれからへーティさんとの修行…。
体力をつけておかないと精神的に持たない。
食べている間は他愛のない話がメインだった。
「そういえばレナさんがユウちゃんの料理の腕が最近上がった褒めてたよ?」
「本当に!?」
「食べさせたい人ができたんだろうって。
レナさん自身のことなのに本人は気づいてたないよ。」
「えっ、うん、そうだね。いつかお姉様にもちゃんと食べてもらいたいよ。」
「その時は俺も食べていいかな?」
ユウちゃんがレナさんのために作る料理だ。
美味しいに間違いないし食べてみたい。
そう言うとユウちゃんも笑顔で答えてくれる。
「いいよ!約束だからね!ぜったいだからね!」
勢いよく来たから慌てたが、食べれることが嬉しくて頭を撫でて俺も笑顔で答える。
「楽しみにしているよ。」
「うんっ!」
えへへ、頑張らないと、そんなことを言いながら嬉しそうに笑っている。
レナさんに食べさせる機会ができて嬉しいんだろうな。
そんな会話をしていたときユウちゃんが思い出す。
「共有スキルで使う魔術の方はどうするの?」
「俺はいつでもいいけど、ユウちゃんはいいの?」
「んー、簡単に獲得できること?
それならさっき言った通りだよ!」
「そっか…、それなら今からお願いできるかな。」
「それなら急いで食べないとね!」
そこから急ぎつつ、だけど味わいながらサンドウィッチをたべ、今日の修行の締めとしてユウちゃんの魔術を共有スキルで使うことになった。
「ユウのスキルはスキル火炎魔術、エクストラ炎熱支配、アビリティスキル火炎の加護、ユニークスキル<反転者>だよ。」
そう並べられて改めて驚く。あの凍らせる蒼炎にこれだけのスキルが組み合わせられてたのか。
耐性なんて意味ないものになっても仕方ないだろう。
俺はユウちゃんの手を握り共有スキルを発動させる。
イメージするはユウちゃんの蒼炎。
精一杯の魔力を使い掌に発動する小さな蒼炎。
発動させるだけで魔力がなくなった感覚だ。
俺には燃費の悪い魔術だと確信する。
ユウちゃんは発動したところを見計らい、共有スキルを解除する。
そしてまたあの声が聞こえる。
【スキル<火炎魔術>、エクストラスキル<炎熱支配>、アビリティスキル<火炎の加護>、ユニークスキル<反転者>を獲得しました。】
「………えっ?」
俺は驚きのあまり声を失う。
毎日(週7話)12時30分投稿予定です。




