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虚像の英雄

 

「さて坊主、どういうことか聞こうか。」

「なんのことでしょうか?」


 ヒロナさんのことだろうけど、こんな感じで迫られるほど思い当たる節がない。


「とぼけんじゃねーぞ、坊主!」

 そう言って机を叩くガッツ。食器など飛び上がりガシャンと音を立てる。


「リーダー落ち着いてくだせぇ」

「そうだぜ、リーダー。ここで女将に目をつけられようものなら、俺たち行き場がなくなるぜ。」


 酔ってるのか?武闘大会もどうとか言ってたな。

 仲間が宥めているが、一度上がったボルテージは簡単に下がるわけもない。


 酔っ払いの相手なんて今までしたことない。

 どうやって宥めようか考えていたら、騒ぎを聞きつけたのかチェスカさんが近づいてきた。


「なんだい、ガッツ。ウチの店で騒ぎを起こそうってんじゃないわよね?」

「くそう、俺が何したってんだ!

 俺は坊主とちょっと大人の話をしてるだけだ!」


「こっちの客に迷惑かけるんじゃないよ。

 まったく…、聞いてやるから話しな!」

「なんでおめぇに話さねーといけねーんだ。」


「せっかくこんな美人が聞いてやるっていうんだ、何が不満なんだい?」

「はっはっはっ。誰が美人だって?

 冗談は顔だけにしなって。ヒロナちゃんならいざ知らずおめぇのどこが美人なんだ?」


 こんな感じの会話を繰り広げているとチェスカさんがしっしっと俺の方に向けて手を振る。

 今のうちに離れろって意味だろう。


 チェスカさんに甘えて、俺は少しだけ離れたところに座る。

 そうするといきなりガッツが泣き出した。


 酔っ払いというのはあんな感じなのか?

 酒はほどほどに、が教訓となる出来事だった。


 レナさんの料理を待っていると、さっきの仲間だった人たちが話しかけてきた。

「坊主、すまんかったな。普段はあんなんじゃないだが今日は特別だでな。許してやってくれ。」


「正直なんの被害もないから大丈夫ですよ。」

「懐がでけぇやつだな。ありがとよ。

 俺はアーファってんだ。そしてこいつがベルタ。会えて嬉しいぜ、英雄様」


 俺はビクっと反応してしまう。

「……英雄とは、誰のことでしょうか?」


「誰のことって、おめーのことだろ?受付嬢が言ってたぜ?」

「……あの人かぁ…。あんまり広まって欲しくないんですけどね…。」


「ほう?英雄と呼ばれるのは嫌か?」

「俺はやりたいことやっただけです。

 英雄になりたくてやったわけじゃない。

 救える人を救いたいだけだ。」


「そうか。おめーは天狗になるタイプではなさそうだな。気に入ったぜ。だから言わせてもらうが…

 英雄と呼びたい奴には英雄と呼ばせておけ。


 英雄と呼びたい奴らは、心のどこかで英雄と呼ぶことで安心して過ごしたいだけだ。

 英雄がいるから大丈夫だ、俺たちが守ってくれるってな。

 英雄がいるってんだけで人々は不安が紛れんだよ。」


「そんな虚像の英雄になんの意味が…。」


「倒せる人間がいるってんだけで生活がかわるのさ。

 もしお前の存在が知れ渡っていない状態だと、いつ攻めてくるかもわからん魔獣に怯える。


 その状態で魔獣が攻めてくるとしよう。

 人々はパニックに陥る。誰が倒せるかも分からん。

 このままでは自分たちは殺されるかもしれん。

 そんな状態で我先にと逃げ惑い混乱を生む。


 だが例えばお前という存在がいることが知れ渡っていれば、あいつがいるから大丈夫だ。

 人ってのはそう思うんだ。それが余計な混乱を生まず、避難の効率が上がるんだよ。


 別におめー1人で全て倒せって言ってるわけじゃねぇよ。

 虚像だろうと英雄はいるんだ。」



「どうして俺なんですか?」

「初めて倒した敵が危険Bランク。

 いきなりそんな高ランクの魔獣を倒した新人なんかいねーんだよ。


 しかも今回の敵は討伐隊を組織しても倒せたか分からんような敵だ。

 虚像だろうと英雄にはそのくらいの英雄譚があるに越したことはない。」


「そしてその虚像の英雄の化けの皮を武闘大会で剥がしたい、と?」

「あんまり先走って勘繰るのは良くねーよって言ってもさっきのアレでは仕方ねーか。

 一つだけ訂正しておくが俺たちは別に受付嬢の親衛隊ってわけじゃねーからな?」


 さっきのこともあり少し敵対心を持っていたが、この人は難癖つけにきたわけではないようだ。


「どう言うことですか?」

「あー、リーダーがその、受付嬢のとある噂をきいて男ができたと思っているところだ。」


「ヒロナさんに男?」

「なんでも受付嬢を新人冒険者のやろーが食べるとか食べないとか…そんな会話を他の冒険者が話しててな。」


 あー…なんか心当たりがありすぎてこんなおおごとになるとは…。

 俺はその件について、食べるのはレナさんの料理だと

 きちんと説明しておく。


「なるほどな。事情はわかった。

 リーダーには伝えておこう。それで少しは厄介ごともなくなるだろう。」


「ありがとうございます。それとご迷惑をおかけしました。」

「なーに、迷惑かけたのはこっちだ。気にするな。ただな…。」


 まだなにかあるんだろうか?

 疑問に思っているとアーファさんが言葉を続けた。


「なんでもその受付嬢は、武闘大会にでる英雄になった新人冒険者に惚れているらしいって噂があってな。」


「ふふふ、そんな噂があるんですね。

 私にも詳しく聞かせていただけないでしょうか?」

 俺は後ろから声が聞こえたから振り向くと、そこには料理を運んできたレナさんが笑顔で立っていた。



毎日12時30分投稿予定です。


しばらくは毎日投稿(週7話)。

気軽に読んで頂けると嬉しいです

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