酒場兼宿:月夜の灯火
だいぶ動けるようになり、俺たちは宿へ戻ることになった。
パトからの報酬もたっぷりもらったし、ギルドから危険魔獣分の手当ても貰ったからだいぶ余裕がでてきた。
おかげで異世界にきてお金に苦労せずに済みそうなのは何よりだ。
しばらくは宿代を気にせず泊まれるかな。
そんな感じで宿へ向かうことになった。
本来は二日目からお世話になる予定だった宿。
月夜の灯火という名前で、俗にいう酒場兼宿のお店だそうだ。
そうしてギルドから数分歩いたら到着する。
結構近かった。明日からのギルドに通う事を考えるとなかなかいい場所だ。
俺たちは建物内に入ると何人かが俺たちの方を向いた。
俺は酒も飲めないし、場違いもいいところだろう。
少し睨まれた気がしたが冒険者だろうか?
その仲間内で話して驚きの顔で俺の方を見る。
そして「イヤイヤ、それはねーって」
そんなことを言ってるような仕草をし笑っている。
聞こえて無くてもバカにしてることがわかるぞ!とは、はっきり言えない。
だって強面の冒険者を目の前にしてビビらないわけにも…とそこまで思い、強面の冒険者達の顔をよく見る。
良く顔を見るとそこまで怖くないな…。
基準があの凶悪な口を持った魔獣のせいでもあるんだが。
とりあえず絡まれることがないから受付にいく。
そこに立っていた膨よかな女性にレナさんが挨拶をする。
「ただいま戻りました、チェスカさん。」
「おや、リーファレナじゃない。おかえり。用事はおわったのかい?」
「はい、あとはいつも通り夕食を作りたいので厨房をお借りできれば、と。」
「今のところ客達も注文が疎らだし構わないよ。
旦那にも言っておいておくさ。」
「ありがとうございます。あ、それとお話ししていましたこちらの方が悠斗さんです。」
「ご紹介に上がりました、柳悠斗です。よろしくお願いします!」
「あんたがリーファレナの彼氏かね?」
値踏みするように見られている。
「あの、パーティーメンバーではありますが彼氏ではないのですが…?」
「違うのかい?この前ヒロナとリーファレナが来た時に、本当はリーファレナの彼氏も一緒に来る予定だったと聞いていたんがね?」
「まだまだお互いを知っていこうという状況でして…。」
「なんだいそれは?奥手な男はモテないぞ!ガツンといきな!」
なかなか豪快な女性なようだ。
というかこのままだと、ヒロナさん街中に広めるんじゃないかなと不安になってきた。
突っ込むのも面倒になってスルーしてたが明日はガツンと言わないと。
そして落ち着いたところで俺はチェスカさんから一通り宿の説明を受ける。
ただ宿と言っても出て行くまでは掃除は自分たちで、がルールらしい
その分割安だし人手が少ないから場所を提供しているだけみたいだ。
食事は酒場で提供できるが部屋の掃除を冒険者はやりたがらない。
格安個室宿でギルドにも近い物件なのに部屋が空いてるのはそれが理由だそうだ。
出て行く時まで掃除しなくてもいいらしいが、その分出て行く時に請求するから、特に男冒険者は別のところに泊まる。
「さて、説明は以上だけど本当に部屋はリーファレナと一緒でいいのかい?」
「…え?どういうことですか?」
「一緒の部屋で大丈夫だからって言ってたから、今日から2人部屋用意してたんだがね?」
………ん?
「……少々おまちを。」
そう言って俺はレナさんを連れて受付から離れる。
「どういうことかな…?」
「ええと、ヒロナさんにお任せしてたらサクサクと決まってしまいまして…、その、チェスカさんも2人部屋空いているから丁度良かったと仰り、断りにくくなりまして…。」
「なるほど、ヒロナさん、ね…。」
「2部屋取るよりも安くなりますので、私も今後の生活費のためによろしいかなっと…。
やっぱり相部屋はイヤでしたよね。今からでも私が…。」
「イヤとかじゃ無くて!レナさんは不安とかないの?男と一つ屋根の下どころか部屋も一緒だなんて。」
「私は悠斗さんなら大丈夫と、知っていますから。」
そう言われたら俺はもう何も言えなかった。
「わかった、レナさんがそれでいいなら俺は大丈夫だよ。」
会話も終わりチェスカさんのところに戻った俺たちは2人部屋で泊まること告げ鍵を受け取った。
荷物とかは収納できるから手ぶらだし、特に部屋に行く予定のなかったから、レナさんはそのまま夕食を準備してくるそうだ。
俺は酒場の空席を探し座ろうとしたら、さっき俺を笑っていた強面風の冒険者に手招きされる。
無視することも考えたが、最初が大事だからな。
ここは堂々と行こう。
そして近づいた途端、肩を組んで来た。
避けれもしたが、攻撃の意思もなさそうだったのでされるがままにしたら話しかけてきた。
「よう、新入り。おめぇ、武闘大会にでるんだってな?」
「そうですけど、あなたは?」
「ああん?俺を知らないのか?俺はな、ヒロナ親衛隊リーダー、ガッツという。」
………。
絡んではいけない人たちに絡まれたかもしれない。
「こ、これはご丁寧に。俺の名前はユウトです。
それではこれで…。」
そうそう立ち去ろうとしたが捕まったままで逃げられない。
「おいおい坊主、話はこれから、だろ?
なぁに、別に取って食おうって話じゃないさ。」
さて、どうしたものか。
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