全力魔術
次のステップは共有スキルを使わずに俺自身の力だけで魔術を使う。
最初は上位スキルの魔術を使用した感覚を思い出しながら空撃ちしていた。
だがへーティさんは物足りないようでぶつぶつと独り言を言っている。
「上達が早いけどつまらないわね。せっかくのおもしろ素材、何かないかしら…」
そして魔力切れで倒れて渡されている最中にへーティさんは何か思いついたのか、笑顔になる。
危険感知は発動していない。
でも本能が逃げろと叫ぶ…無理なんだけど…。
「見てるだけでも楽しいんだけどつまらないの。
あなたの全力の威力はわかったからアタシが同威力程度の魔術を使うわ。
あなたはそれを同じ魔術を使って全力で相殺なさい。」
「相殺し切れなかったらどうなるんでしょうか?」
「ふふふ、そんなもの決まってるじゃない。あなた自身が魔術を体で受けるだけよ?」
…生きて帰れるだろうか。
そこからは地獄だった。
魔力切れマラソンの方がマシだと思えた。
まずへーティさんは同威力と言いながら明らかに俺より少し強い魔術を使っている。
俺が威力を少しでも落としたら大ダメージを喰らう事を意識させるためらしい。
全力でやっても少しずつダメージもらっているんですが…とは言えなかった。
「危なくなったら治癒魔術を使ってあげるわ。
あなたは全力で魔術を使うことだけに集中しなさい。
さっき空撃ちしてた時とやっていることは変わらないわよ?」
…治癒魔術ありきなやり方だった。
俺はもう必死に、全力で火魔術を使った。
へーティさんは11本の矢を使って攻撃してくる。
俺の全力は10本…。
今度はファイアーボールを11個作って俺へ攻撃してくる。
これもどうあがいても1個分相殺し切れない。
明らかに防げない威力を見極めているようだ。
たった1時間程度、空撃ち魔術マラソン見ていただけでそこまで見極められることに感嘆を抱きそうになったが、今はそれどころじゃない。
少しずつではあるが俺は魔術攻撃を受けいてる。
受けいはいるが思った以上のダメージはなかった。
相殺合戦始めてから最初の魔力切れがきた。
休憩中に魔力を渡されている間色々教えてくれた。
「あなたの力では防げないことは折り込み済みよ。
それに魔術攻撃を受けるというのも悪くないの。
少しずつだけど耐性も上げていかないといけないわ。
あのくらいの火力ならあなたも衝撃程度で済むんじゃないかしら?」
「思った以上にダメージがなかったのはそういうことだったんですね。」
「ちゃんと計算しているから安心なさい。
あなたが全力である限り、幾分のダメージは行くでしょうが耐性で抑えられているわ。」
なるほど、この人は俺で遊んでいるのかと思ったがいろいろ考えてくれているようだ。
「そうね、次は魔術戦闘における耐性の大事さを教えてあげるわ。」
耐性以上の攻撃が来るのかと思い俺はビクっと反応してしまった。
「…何を怖がっているのかわからないけどあなたに本気の魔術なんて当てないわよ。
むしろ逆よ。アタシは何もしないからあなたの全力をアタシに当てなさい。」
何もしないから全力で当てなさい?
何言っているだ、この人。
だがこんな機会そうそうあるはずもない。
俺に今までの苦労を晴らす機会を与えてくれるとは!
俺はいろいろな意味で心から感謝する。
そしてユウちゃんの分まで俺は全力全開で俺は火魔術を使うことを決意する。
「本当に全力でやっていいんですか?」
だが最終確認だ、そこはしっかりとしないと。
「ふふふ、心配してくれるのかしら?
優しいのね、でもあなたの全力なら大丈夫わよ。」
よし最終確認は取れた。
俺は少し離れて全力の火魔術を発動させる。
イメージは火の玉、相手はへーティさん。
だがそこで少し戸惑ってしまう。
行動こそアレな人だが美人さんなんだ。
そんな人が何もしていない状態なのに本気で攻撃するのは気が引ける。
だから俺は考え方を変えることにした。
この人は他の人に迷惑を撒き散らす人なんだ。
今後レナさんやユウちゃんに迷惑被ることもあるかもしれない。今は俺の敵!
そう思うと心が軽くなった。
すると火の玉も今まで以上に大きくなる。
イメージの力って恐ろしいな。
「ちょ、ちょっとあなた!今までの全力じゃなかったのね!?」
「後悔しても遅いですからね!
俺とユウちゃんと今後被害受けるかもしれないレナさんの仇ー!」
「え?ちょっとユウちゃん?レナさん?」
そして放り投げる。
「くらえーーー!」
どごーーーん
室内ということもあり凄まじい音が木霊する。
魔獣を倒した時は生命力も使い、共有スキルで火炎魔術を使っていた。
その時に比べたら威力も全然大したことないなかったが今できる俺の全てだった。
全力でやったのは今までへーティさんの力を見てきた。
避けることも相殺も可能だろう。
慌てさせただけで俺は気持ち的に勝った!
そう思っていた。
「ふふふ、今まで全力じゃなかったなんて、お姉さん、あなたを甘えさせてたようね?」
その言葉とともにへーティさんは何もせずに攻撃を受けた。
いや、俺にわからないだけで何かしたのかもしれない。
ただ言えることは、こちらを見ているとっても綺麗で美人さんが火の中にいて、今まで見たことない素敵な笑顔であるということくらいだ。
あ…ヤバイ…。
「ふふふ、授業を再開しましょうか!」
毎日12時30分投稿予定です。
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