ユウちゃんの過去
休憩を終えて、俺とユウちゃんは木刀を構えて向かい合う。もちろん斬りかかるのは俺からだ。
「はああ!」
気合いを打ち込んでみるが軽く去なされる。
「うんうん、さっきより動きよくなったよ。
スキルが発動しているのかな?」
そんなこと言われたが実感がない。
ただ休憩前のユウちゃんの動きを覚えているのか、打ち込みを続けるにつれ少しずつ違和感も出てくる。
攻撃の鋭さが増していく感覚。
ユウちゃんの動きを見ながら、動きを真似る。
スキル発動が憧れることなら、ユウちゃんは雲の上の存在、発動するには十分だと思う。
だけど中途半端に上達しているからこそわかる、追いつけないとさえ思えるユウちゃんの剣術。
手加減された動きですら攻撃が当たる気はしない。
それでも一矢報いるためにも、必死に打ち込みを続けること数十合、ユウちゃんは初めて俺の剣撃を受け止めた。
「おお、今のは良かったよ!
すっごい、こんなに早く上達するんだね!」
ユウちゃんを驚かせることに成功したようだ。
だが結局そこまでだった。
たった一撃受け止めさせただけで、あとは軽く去なされ続ける。
どんなに打ち込んでも去なされ、一撃受け止めさせることができたから次のステップとして隙が大きいと叩かれる。
最初は小さな隙すら叩かれたが、大きな隙のみに変えてもらった。
ユウちゃんに、俺の動きは隙そのものだと言われてショックをうけたからだ…。
そこから更に打ち込みを続ける。
だが少し経ったタイミングでユウちゃんが俺の持っていた木刀を弾き飛ばす。
「…お兄ちゃん、少し休憩しよう。」
「俺はまだ…!」
「動きが悪くなってるよ、だからちょっと休憩。」
「…わかった。」
追いつけないと思う心と、肉体的疲労から動きが悪くなっていたようだ。
休憩ついでに時間もお昼過ぎだからご飯となった。
レナさんがお弁当を作ってくれていたのでそれをいただくことにした。
もちろんユウちゃんの分もあるから渡すと泣いて喜ばれた。
壁にもたれかかるように隣同士に座る。
「レナお姉様のご飯!ユウはこれだけのために生きているんです!」
小さな女の子らしからぬ少ない生きる希望発言。
「ユウちゃんはどうして冒険者をやっていたの?」
ずっと抱いていた疑問だ。年齢でいうなら12歳。
この子がここまで強くなったのはどうしてなんだろうか?
ユウちゃんは美味しそうに食べてたのをとめ、お箸をおいて体育座りの格好で俯いた。
「ごめん、不躾な質問だったね、忘れて欲しい。」
そしたら顔を上げて横に振る
「ううん、いいよ。ユウはね、何も力のないどこにでもいる子供だったんだよ。」
そこから話してくれた内容は凄惨な内容だった。
5歳のときに住んでいた村が魔族に襲われたこと。
街から離れた辺境の土地ということもあり、助けが期待できなかった。
真っ先に殺されたのが村が雇った冒険者。
その事実から生きる希望が消え失せ、次々と殺されていく村の人々。
自分の力のなさ、周りにはまともに戦えもしないボロボロの武器。
こんな武器では戦えないと…生きたい願った結果ユニークスキル<反転者>の獲得。
そのおかげでなんとかボロボロの剣の性質を反転させて逃げ延びることはできたけど、村の人間は全滅。もちろん家族もだ。
最初は冒険者になることをギルドに止められたけど、ユニークスキルの力もあり試験をパスできた。
各地を転々とする日々。
それから冒険者生活をしながら自分の村を襲った魔族の情報を集めて回った。
そして一年前に見つけた村の人の、家族の仇。
その魔族を滅ぼした時に使ったのが極大の火炎魔術だそうだ。
村は焼き滅ぼされたからと、同じ苦しみを与えるため、敢えて凍らせる蒼炎は使わなかったそうだ。
凍らせたら溶かすだけで良かったけど、全力全開で燃やしちゃったから地形もだいぶ変わっちゃった…あはは、と笑っていない笑いを浮かべる。
仮定の話をしても仕方ないかもしれない。
だけどもしこの世界が作られなければ、この子はこの苦しみを味合うことはなかっただろう。
俺はどうすることもできない歯痒さを抱えながら、ユウちゃんの辛そうな顔をみるしかできなかった。
「ごめん…ユウちゃん…。」
「ううん、お兄ちゃんのせいじゃないよ。
ユウは話したかったから話したんだよ。
これはレナお姉様にも話したことなかったんだけどね、どうしてだろう?」
いつの間にかユウちゃんが寄りかかってきていた。
そしてどん底を生きて、仇敵を討って生きる希望もなかったところでレナさんの料理に出会う。
その時のことを話しているユウちゃんの笑顔は本当に嬉しそうだった。
1人の女の子が背負うにはあまりにも重い人生。
こうして笑っていられるのは奇跡だろう。
そして語ってくれたのは大会参加の理由。
俺が参加するってことはレナさんも観に来る、ということだ。
戦いを見せたところで何か変わるわけではないけど、可愛いと思われてるだけのユウちゃんは卒業したいらしい。
本当は料理を見てもらいたかったけどまだまだなんだよ、と頬を掻きながら苦笑いを浮かべている。
いいタイミングかなと思い、俺は前々から考えていたパーティーメンバーの誘いをユウちゃんに話してみる。
正直ユウちゃんにはもう冒険者生活させないほうがいいかもとは思った。
だけど小さな女の子だからこそ、これからの長い人生の中の選択肢の一つとして、ユウちゃん自身に選んでもらいたかった。
ズルイかもしれないがレナさんと一緒にいれるよっと甘言込みで。
ユウちゃんはすごく嬉しそうな顔をしてくれて一緒に来てくれるかなと思ったが、返事は大会終わったあとに、ということになった。
話がひと段落したところでふと思いつく。
俺は話に聞いてた魔族を一掃した火魔術はユウちゃんのことだったのかと。
そして俺は前回の戦いで、それを想像とはいえ真似ている。
たぶんその時から漠然と魔獣を倒せるだけの力を持つ火魔術を使う人ーーユウちゃんに憧れていたんだろう。
憶測でしかないがその結果、本人を前にして剣術の方にも影響された、のかな?
ユウちゃんに認めてもらいたかった。
そう思うと俄然とやる気が出てくる。
ユウちゃんにはご飯食べてて、と言い俺は立ち上がって素振りを始めるのだった。
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