彼女との出会い
しばらくチュートリアル的なモノなのです、すみません。
「あなたに逢える日を心から…本当に心からお待ち申し上げておりました。」
目に涙を浮かべ、近づいてくる少女。スノーホワイトとでも言うのだろう綺麗な白髪が印象的だ。
少女が目の前に立ち止まり言った言葉。
周りに人がいないしもちろん俺に対する言葉だってにはわかる。
でも初対面の相手に、しかも異世界転生して最初のコミュニケーションが告白?
いやいや、おかしい、異世界人限定での結婚詐欺か?
でも流石に初対面でもわかる、この涙は本当に泣いている。
異世界人用のサポートAIみたいなのが、最初の挨拶は泣きながら…ありえないか。
サポートというのは装備しないと意味がないぞ的な感じのものだろうし違うよね。
召喚ものなら助けてください、勇者様だろうけど俺は死んで此処にきたから彼女が召喚者のはずがない。
異世界にきていきなり泣いている女の子と出会うとは思わなかった。
「え、えっと…初めまして、だよね?あともし良ければ泣き止んでくれるとありがたいんだけど…」
すると少女は少し目線を外して指で涙を拭い
「申し訳ありません、私の名前は、リーファレナ=リスアミィと申します。
リーファでもレナでもお好きにお呼びください。
私は…私はずっと柳悠斗様をお待ちしておりました。」
また目に涙を浮かべ始めた。
名前を名乗っていないのに俺の名前を知っている、ということは本当に俺を待っていたんだろう。
彼女が落ち着くのを待って、
「とりあえずここはどこなのかな?あともし良ければこの世界のこととかいろいろ教えてほしい。」
「かしこまりました。まず世界地図でいいますとここはプライ王国サウスエリア、カナカナ地区となっております。
そしてこの建物は冥宮殿、悠斗様が出てこられた場所は異世界人転生召喚門、通称ゲートと呼ばれております。」
異世界人はここを通るってことなのか?
ということはずっと俺が来るのを待っていた?
まずはそれよりも…
「その、様付けはやめてほしいな。こう言われ慣れてなくて…その、俺もレナさん、と呼ばせてもらうから。」
彼女、レナさんも納得してくれたようで
「それでは悠斗さん、と呼ばせていただきますね。」
そう言って彼女は微笑んでくれた。
その笑顔が可愛いと綺麗を合わせた感じが印象的でドキッとしてしまった。
動揺を隠すように少し疑問に思った事を聞いてみる。
「“冥”宮殿、ということは女神と関係ある場所なのかな?」
「女神様のことはご存知だったのですね。もしかしてお会いになられた、とか?」
(やっぱり会ったことは言わない方がいいのかな?
でもこの世界でも会う方法はあると言っていたし俺は会って確かめないといけないことがある。)
「ここに来るときに冥界の女神ルージュ、様に会ってこっちの世界で私に会いに来いと言われてね。
だから“冥”宮殿なんてきいたから気になったんだよ。」
「こちらの世界から会える、というのは一種の伝承ではありますが女神様からは何も伺ってはいないのです、か?」
「あぁ、うん。大事なことははぐらかされた感じだったけど。」
「この世界の人たちからしましたら女神様に、ましてや始まりの女神様にお会いできること自体羨ましいです。
この“冥”宮殿もご想像どおり冥界の女神ルージュ様と繋がりがある場所とされております。
ただ過去誰もお会いした記録はありません。今まできた異世界人さん達も同様です。」
(まさかのスタート地点が当面の目標のゴール地点とは一種のヌルゲーか!)
そう思ったが誰も会ったことがない、というのはなかなか条件が厳しそうだ。
ただ会いに行くこと自体拒否されているわけではないし居場所が分かっているだけ良しとしよう。
それよりも知らない世界だといろいろ疑問が増えていくな。
「始まりの女神?もしかして智慧の女神様とか?」
冥界の女神ルージュさんと会えるという事は智慧の女神様とも会えるのだろう。
智慧の女神様の加護がどういったものかわからないが聞いておきたい。
「智慧の女神様のこともご存知だったのですね。それもルージュ様から?」
「そうだね、ただ話の流れから智慧の女神様の存在自体はわかったんだけどそれ以外は何も知らなくて。」
「そうでしたか。始まりの女神様というのは伝承にて世界の根本に関わったとされる3柱の方々です。
何もないところから“世界”をお作りになった智慧の女神ブラン様
魂から“生”のあるものをお作りになった冥界の女神ルージュ様
無数にあると言われる時の中で“現在”をお作りになった時の女神ノワール様
3柱を合わせまして始まりの女神、と言われております。」
世界を作った智慧の女神様、か。
子供を助けた事が原因だとルージュさんに聞いたしあの助けた子供が智慧の女神様だったてことかな?
いや、3柱の誰かだった、ということか?
ルージュさんに会ったときに聞くとしよう。
女神様の話も終わり一区切りしたところで彼女が少し上目遣いで
「あ、あの…!お弁当つくってきたのですが!食べていただけないでしょうか!?」
と、どこから取り出したのかお弁当を差し出してきた。アイテムポーチというものだろうか?改めて異世界に来たんだなと実感した。
たしかにずっと眠っていた感覚もあり、お腹が空いていることに気づく。
すごくありがたい、ありがたいのだがここで食べてもいいのだろうか?
こういった貴重そうな場所でお弁当を食べるのは憚れる。
「こういった場所で食べるのはちょっと落ち着かなくて、落ち着いて食べる場所がないかな?」
彼女はちょっと涙目になった。内心で必死に謝る俺。
「そう、ですよね…まずは落ち着いてですよね…。申し訳ありません、少し舞い上がっていました。
広場がここを出て目の前にあります。そこでしたら大丈夫でしょうか?」
「そうだね、そこだったら落ち着いて食べるとこもあるかな?」
「はい、大丈夫です。それではまず転生したことを国に報告へ行きましょう。
この世界で生活する異世界人はギルドへの登録が必須、ただあくまで身分証明発行となっております。
そのままギルドの一員として冒険者になる方もいらっしゃいますし、スキルを生かし特定の分野で活躍される方など様々です。」
スキルか。どんなスキルがあるんだろうか、俺はどう言ったスキルがあるのか。
異世界生活がスタートしたのかと興奮してきた。
智慧の女神様の加護とか言ってたし何かしらサポートしてくれてるんだろうけどここに来てから今までうんともすんとも言わない。
とりあえずレナさんにスキルについて聞いてみようかな