悩み
部屋の扉のノック音が聞こえる。
「はーい、どうぞー。」
「失礼します、悠斗さん。お食事をお持ちしました。」
食事を病院ベットのと同じようなテーブルの上に置いてくれた。
「ありがとう、すごく美味しそうだね。」
「なるべく栄養が付き、食べやすいものを作りました。」
こういったベットのテーブルの上での食事は久々な気がする。
この世界に来る前までは毎日だったんだけどな。
食事の方を見ると七草がゆみたいだ。
ポーション用素材のアレス草とか使っているんだろう。
食事を眺めているとへーティさんの診断が終わったようだ。
「さて、診断が終わったから詳細を話してもいいかしら?」
「すみません、診断してもらっていたんでしたね。
レナさんも一緒にどうかな?」
するとレナさんは首を横に振って
「いいえ、話しにくいこともあるかと思いますので、私は失礼しますね。」
そう言って一礼し部屋を出て行った。
ゆっくり休んで欲しいとは言ったけど、遠慮しているのかな?
少し顔色も悪いし休んでもらった後にきちんと話ししないとな。
レナさんとの会話が一区切りしたところで、へーティさんが俺の身体の状況を教えてくれた。
「まずは魔力についてね。一回空っぽにしてしまったから回復機能が若干狂ってしまっているわ。
おかげでこの5日間寝たままだったのにほとんど魔力回復がしてないと思う。」
なるほど。俺は無意識に人差し指突き立てて魔術を発動させようとした。
そしてグラっと目の前が揺れた。
「あなたはバカなの!?
魔力がないってことは危険な状態なのよ!
術が発動しない、だけでは済まないの!」
もの凄い勢いで怒られた…。
そういえば昔、…昨日?いや5日寝てたから1週間前かな。異世界初日に魔力の使い方わからないまま回復魔術使って、よく無事だったなとか言われたばかりだった。
5日も寝てて寝ぼけてたんだ、仕方ない仕方ない…。
「いいかしら?魔力が空っぽの時はちょっとずつ共有スキルで魔力を渡していくのよ!
さっき言った通り安静にしていれば治療可能よ。
それに付随して空っぽにしたおかげで、おそらくは反動で魔力量が若干増えているわね。
その辺は回復したあとじっくりと…グフフ。」
あ…。ヤバイ。目がお逝きになっております。
回復したら逃げる算段を決めないと…。
「ゴホン、魔力については以上ね。
問題なのが生命力なのよね…。」
そこで少し躊躇って話しを続ける
「生命力まで空っぽにした人間なんて過去例外なく死んでいるわ。
魔力と同じとは限らない。回復魔術で様子見ね。」
回復するまで何日かかるのだろうか、と思っているとノックの音が聞こえた。
「失礼しますね。ユウトさん、へーティ。」
そこに入ってきたのはパトだった。
「パトリックさん!?」
「久しぶりだね、へーティ。元気にしてましたか?」
「それはもちろんです。」
すごい、あのへーティさんがぺこぺこしている。
同じハイエルフでも上下関係があるのかな?
「話していた内容は概ね理解しています。
ユウトさん、今回に関しては僕に責任があります。
生命力に関しては僕に任せていただけないでしょうか?」
俺はへーティさんを見ると、うんうんと凄い勢いで頷いている。任せていいんだろう。
ただ俺はルージュさんとの会話を思い出す。
そういえばパトにも思惑があったらしい。
「ありがたい申し出だよ。だがその前に聞かせて欲しい。なぜ俺に討伐を任せたんだ?」
「それについては、あの魔獣インビジブル・ワームイーターの特性、狙った獲物は逃がさない“執着心”にあります。
獲物を狩り終わるまで次の獲物を狙わない。
だけど獲物が確実に狩れる好機がないまま、時が過ぎると空腹の魔獣は暴走したまま街に入り、誰彼かまわず襲い掛かります。
もっとも今までそこまでの状況になる前に、獲物にされたものはほとんど食べられたのですが…。
そしてあなたの周りの魔力の流れから、あなたが“執着”されいるのがわかりました。
僕はそう言った危険な魔獣は、一人を犠牲にしてでも討伐すべきだと思っています。」
「俺を犠牲にしてでも倒さなければならなかったと?」
「そう、ですね。執着があるとはいえ、ユウラシアさんなどと一緒にいられると移動されますからね。
あくまで魔獣を街で暴れさせるわけにはいきません。
僕にはあの魔獣を見逃すわけには行かなかった。
何を犠牲にしてでも…。」
パトが身体を震わせている。やっぱりあの魔獣には何かあるのだろうか?
「なんでそこまで拘るんだ?」
「聞いたと思いますが、以前同じ魔獣を討伐したことがあります。
僕が倒した魔獣の分体の生き残りが、今回討伐してもらった魔獣なのです。
僕の確認不足のミスが今回の犠牲を生んだ。
生き残っていると気づいてからは、僕だって以前と同じ方法で探し回った。
だが奴は僕を特に警戒してか、一向に僕の前では姿を現さなかった。
ずっと探し回っても他のところで新人は犠牲になっていく。
そんな時に標的にされながら、偶然にも喰われる前に帰ってきた人がいた。
僕は最後のチャンスだと思った。
あなたを最後の犠牲にすることで終わりにする算段を立てた。
討伐できるとは正直思っていなかった。
ユウトさんには本当にご迷惑をおかけしました。」
そう言ってパトは思いっきり頭を下げている。
見た目が子供だから虐めてるように見えなくもない。
「パト、俺は正直気にしてないんだよな。
魔獣は倒して俺は生きている。それが何よりの全てなんだ。
それに俺は自分一人を犠牲にしてでも倒すつもりだった。
パトの気持ちは理解できる。ただ問題がないわけじゃないけど…。」
「問題、ですか?
「俺が死んでてたら言い値の報酬はどうしてたんだ?ねぇ、パトリック君?」
それはもう天使か!というほど素晴らしい微笑みでパトに問いかけた。
「そ、それは…あはは…レナさんだけに…。」
「報酬はガッツリもらうからな!」
「それはもちろんです、英雄様!」
「だからそれはやめろー!」
俺たちは笑って暗い雰囲気を吹き飛ばした。
毎日12時30分投稿予定です。
ストックは作らず行き当たりバッタリの作品ではありますが、しばらくは毎日投稿(週7話)は基本的に守れるようにしていますので、気軽に読んでもらえたら嬉しいです。
仕事の都合により投稿できなかった場合、週末2話等調整致します。




