決着
「レナさん、共有スキルの準備できた。決着をつけよう。」
生命力を代用する、なんて言われても冷静でいれたのは、隣で手を握ってくれてるレナさんのおかげだろう。せめて彼女だけでも助ける。
そんな覚悟を悟ったのかレナさんが慌てる。
「悠斗さん、あなたは何を…?いえ、それよりも!一緒に帰ると…私は、言いましたよね?」
ここで不安にさせてはいけない。
「大丈夫だよ、レナさん。一緒に帰ろう、約束だ。」
俺はレナさんに向けて微笑んで言った。
「わかり、ました…。私も信じている、と貴方に言いました。最後までお付き合いします。」
少しだけ泣いているような気がした。
そして俺たちは敵を見つめる。
視線の先にいた敵はあろう事か分体を食べていた。
嫌な予感しかしない。俺は出来るだけ素早く火魔術を発動させる。
発動させた火魔術は、発動スピードは念じれば出てくるくらい早く、今までの比ではないほど熱量を持っているのがわかる。
「くらえ!」
俺は手を突き出して火を敵へと向ける。
しかし敵へ届く直前に、敵の前に分体の壁が出来上がって塞がれた。
「ちっ…!まだ分体がいたのか!」
俺は連続で火魔術を発動させ追撃する。
だが倒せたのは分体の壁のみだった。
分体の壁を倒せた頃には、分体を食べたことにより立てるくらいには回復したようだ。
そして俺たちを見るや否や、今まで発していた奇声というよりは、完全に怒声と言っていいほどの叫び声をあげながら襲いかかってきた。
俺たちは火魔術で応戦する。
しかし相手は苦手のはずの火魔術を避けながら構わず突っ込んでくる。
(頼む!火が残るよう調整してくれ!)
【了解しました。】
俺たちも火柱をあえて残しながら、敵の逃げ道を少しずつ塞いで行く。
そして数回の魔術発動が終わったところで、逃げ道を塞いだ火の檻が出来上がった。
だがこれ以上長引かせるのはまずい。
火柱の制御は任せっきりとはいえ、元は俺の体。
頭の血管が浮かび上がっているのがわかる。
捕らえはしたが敵も甘くはない。
魔術は発動できるようで石礫が飛んでくる。
俺たちの前まで迫ったが、レナさんは俺と手を繋いでいない左手の剣で石礫を斬り落とす。
ここで全力の魔術を使わないともう倒しきれない。
「レナさん、長くは保たない!全力でやる。
集中するからフォローお願い!」
そう叫んだ俺が思い浮かべるは極大の火の玉。
ジューザさんが話してた魔物の群を一掃した火炎術師の火魔術。
見たことはないが想像はできる。
そして俺は右手を翳して火魔術を発動させる、全力全開だ。
少しずつ火が大きくなるのがわかる。
(限界も近い、これくらいで大丈夫か?)
その問いに直ぐに答えをくれた。
【個体名:インビジブル・ワームイーター、及びその分体の殲滅には、火力不足と推察します。】
その言葉もあり俺は魔力、いや生命力か?を込め続けた。
しかしある程度大きくなったところでそれがきた。
「…ブハッ…。」
俺は耐えきれずに吐血していた。
「…悠斗さん!?」
「だい…じょう、ぶ…それより敵を…!」
なんとか火魔術の維持は保てたがそろそろヤバイ。
力を込め続けて意識も飛びそうなところまできてようやく
【殲滅できうる火力に到達しました。】
(良かった、間に合った…。あとはこれを敵に投げて終わり、か。)
そこで新たな問題に直面する。
こんな巨大な火の玉をそこまで距離のない敵に投げたら俺たちだって生きていられるかどうか、だ。
分体の処理まで含め、あたり一体を焼き払うため巨大にしないといけなかった。
しかしこのままではレナさんも巻き込んでしまう。
そんな問題も計算済みだったようだ。
【残りの生命力を用い、水魔術を発動させます。それにより個体名:リーファレナ=リスアミィは助かります。ただしその場合ーー】
(ああ、俺は…死ぬのか。ははは、元々俺の命は計算に入れてなかった。一手足りなかった…。)
一緒に帰ると約束したけど破ってしまいそうだ。
謝ったら…許してくれるだろうか…。
いろいろな思いを胸にたった2日間の異世界生活を思い出す。
そして俺は決意する。こんな危険な魔獣を俺一人の命で倒せるならそれでもいい!
知らない間に握った手を強く握りしめいた。
「レナさん、ごめん…約束、守れないかも…。」
俺はそう呟いて心で叫ぶ。
(頼む!水魔術の制御はうまくできる自信がない。後のことは頼んだ!)
【了解しました。】
その言葉を聞き俺は火の玉を放り投げる。
「これで終わりだーーーー!」
投げ終わると同時に俺とレナさんの周りに水が覆う。
(よかった、ちゃんと発動してくれた…。)
敵の断末魔にも近い声が聞こえてきた。
そしてその声もすぐに聞こえなくなる。
敵が倒れ込んだ…なんとか倒せたようだ。
俺はそれを確認して膝から倒れ込んだ。
完全に倒れる前にレナさんが支えてくれた。
もう意識を保っているのも限界だった
わかるのはあたり一面が火の海。
あんな巨大な火の玉を投げたんだ、仕方ない。
パトが言った通り森一つ消してしまいそうだ。
意識を失いかけた時にレナさんは泣いていた。
それに何かを言っているようだった。
「…あなたはまた私を………
その言葉の最後を聞く前に俺は意識を失った。
ぼーっとしてたら遅くなりました!申し訳ありません!
毎日12時30分投稿予定です。
ストックは作らず行き当たりバッタリの作品ではありますが、しばらくは毎日投稿(週7話)は基本的に守れるようにしていますので、気軽に読んでもらえたら嬉しいです。
仕事の都合により投稿できなかった場合、週末2話等調整致します。




