第2ラウンド
「さて、第2ラウンドと行こう。」
気合いを入れるため呟いてみたものの実際のところ分が悪い。
先程とは逆で今度は分体を気にしながら本体を叩かないといけない。
武器を構えて出方を伺っていると、レナさんが歩けるようになったのか近づいてきた。
「ご迷惑をおかけしました。私が分体を引き受けます。数を減らすまで悠斗さん、本体をお願いします。」
「レナさん!よかった。ありがとう、できるだけ本体を抑えておくから分体をお願い。」
そう言って俺は本体の魔獣を見つめる。
怒り狂ったのが幸か不幸か、相手は闇魔術を解除してくれるようでその姿をさらけ出していた。
人型の虫…ミミズか?人型とはいえ顔の大半は凶悪な歯と大きな口が特徴だ。
あれを見ると体当たりの時に噛まれなくて良かったと思う。
分体の虫そのものとは違う外見で、体も虫らしさはあまりなく魔人に近いのかな?
柔らかかった分体と違い土魔術で岩を鎧にしている。
俺が観察していると敵は奇声を上げて突進してくる。
ただその突進もほぼ一直線で俺は突進を避ける。
3回目の突進のタイミングで槌を大きく振りかぶり敵を叩く。
(うん、槌ならなんとかダメージが与えれそうだ。)
ダメージを与えられたことに少し安堵しつつ、本体の動きを警戒していると今度は石の礫を飛ばしてきた。
出来る限り急所は守るように槌ではじき返したが、魔術に対しての防御は少し甘くなってしまったため、頬や足に擦り傷を負う。
やっぱり擦り傷でも痛い。だがまだ動ける。
俺は牽制の意味も込めて火魔術を使い、火を弓の矢のように変える。
呪文で言うなら“ファイヤーアロー”とでもいうのだろうか?
ただ何も言わずとも思い通りにできるから、矢の形になったことに違和感を感じる。
違和感があったからか、言わなくてもいい呪文を呟く。
「行け!ファイヤーアロー!」
火の矢が敵めがけ飛んで行った。
牽制のつもりだったが、思った以上に敵は慌てているようだ。
現状、闇魔術に回復魔術と思った以上に魔力を消費している。
へーティさんとの試し打ちのおかげで、全力分がどれくらいかはわかるが、残量からしても全力の火魔術をうつには正直心許ない。
そのせいもあって今のところ、迂闊に魔術を撃つことができないのが現状だ。
魔術はあまり使えない。
とはいえレナさんへの注意を逸らすためちょこちょこと光魔術を使っている。
俺は武器を構えて本体の動きを止めることに集中する。
その間にレナさんが分体を減らしてくれる。
火魔術の牽制が効いたのか、バカみたいに飛び込んでくることはなくなった。
ただその分、敵も土魔術の石の礫の割合が増え、俺の傷も増えていく。
俺は敵を警戒しつつも、レナさんの方に視線をやる。
相変わらずレナさんの動きは目を奪われそうになるほどカッコ良かった。
それに比べて今日初めて冒険をした俺。
相手は格上もいいとこ。
正直ここまで泥臭く粘っているのを褒めて欲しい気分だが、レナさんもレナさんにできることをやって頑張っている。
限界も近かったが俺だけ弱音を吐くわけにもいかない。
距離を取っていると魔術が飛んでくる。
俺は持っている槌を強く握り攻勢に出ることにした。
「はぁぁぁぁ!」
相手の動きに合わせて槌を叩きつけていく。
ほとんど避けられているが構わず攻撃を続ける。
どんどん息が上がり、攻撃のスピードもだいぶ落ちてきた。
敵の反撃も受けきれなくなって、極力使わないようにしてた魔術で対応するも、最初にやられた大きな石の礫が再度、逃げ道を塞ぐように小さな石礫と一緒に飛んできた。
(……これは、避けれない…)
死も覚悟したが、目の前まで迫ってきた石が真っ二つに切れた。
「お待たせしました。分体はある程度片付けることができました。」
分体の処理を終えたレナさんが目の前に立っていた。
「レナさん!本当に助かった!」
「遅くなりました。あとはまた分体が増える前に本体を倒すだけですが…。」
レナさんも気づいているようだった。
現状、全力の火魔術を撃つには魔力が足りない。
今の魔力だけで、俺の中途半端な火魔術スキルを使っても正直倒しきれるかわからない。
「レナさんの想像通りだよ、魔力が足りない。
もともと魔術も使える、程度だった。倒しきれるかわからない。」
レナさんも表示が険しい。
ただ万策尽きたとは思わない。
考えをやめた時点で敗北だ。
…何か、何かないだろうか。
俺は異世界にきた二日間、昨日今日の出来事を思い出す。
へーティさんの時にほぼ全力火魔術は使ったがそれではダメだ。
熟練度も低い。おそらく魔力が全力分あっても倒しきれていなかったと思う。
へーティさんを真似ただけで、火魔術のレベルは似ても似つかない。
紛いなりにも俺が立っていられるのは、レナさんの存在と事前情報のおかげだ。
それじゃなんでパトは俺たちに依頼した?
この敵と対峙してたからわかる。
冒険者を始めたばかりの俺が相手にするような敵じゃない。
本来ならもっと上位の冒険者が処理すべき敵。
だがパトは、俺たちなら倒せるとまで言った。
倒せるという言葉を思い出し、少し冷静になれた。
ここにくる前のパトが話した言葉を思い出す。
レナさんの力を活かすも殺すも俺次第、か。
そして俺はこの二日間で経験したことから一つの答えに思い至る。
ただ一度経験したからわかるが、発動させるには少し時間がいる、何よりレナさんの力がいる。
それでもようやく勝利への道筋が見えた。
「レナさん!一つだけ試したいことがある!
そのためにもあいつを足止めしないといけない!
力を貸して欲しい!」
「もちろんです、悠斗さん。私はあなたに全てをたくします!」
「ありがとう…決着を付けよう!」
まずは二人であいつを足止めできるくらいにダメージを与える。
それが出来なければ敗北必須だろう。
俺たちは気持ちを引き締めなおして武器を構える。
毎日12時30分投稿予定です。
ストックは作らず行き当たりバッタリの作品ではありますが、しばらくは毎日投稿(週7話)は基本的に守れるようにしていますので、気軽に読んでもらえたら嬉しいです。
仕事の都合により投稿できなかった場合、週末2話等調整致します。




