魔獣の情報
「依頼を受けて頂き、ありがとうございます。」
「まだ終わったわけじゃないからお礼は後にしてほしいな。」
「それもそうですね。それではまずはクエストの内容です。
討伐依頼:インビジブル・ワームイーター
報酬は要相談ですが、ある程度のものは準備できますので依頼達成後、必要経費として請求していただいて構いません。言い値というものです。
ギルドに正式な依頼として出しておきますのでそこは安心してください。
そしてワームイーターについての情報です。
あの魔獣は土魔術と闇魔術を使います。
土魔術は土中に潜ったり礫を飛ばしたりと攻撃防御両方に使っています。
闇魔術で闇に溶け込み自分の存在を隠しています。
要するにあなたたちが襲われなかったのは、夜襲型の魔獣だからです。
ちなみにですが、あなたたちがもう少し帰ってくるのが遅ければ襲われていたでしょう。
標的にされている、とはそういうことです。」
知らなかった、では済まされない世界…。
「…知らずに戦っていたらどうなっていた?」
そう質問したらパトが何気なく答えてくれる。
「レナさん一人逃げる程度ならあなたも活躍できたかもしれませんね。
もっともレナさんを見捨ててあなたが逃げていれば、あなたは助かったでしょうが。」
「俺はレナさん一人を残すなんて!」
想像するだけで怒りにも似た感情がでてきた。
「落ち着いてください。もしもの話ですよ。
ただその場合ワームイーターにも逃げられていたでしょう。
あなたがレナさんを逃した場合でも、ワームイーターの目撃情報から討伐部隊を編成してからでは遅かった。
だからあなた方が早めに帰ってきてくれて助かりました。」
標的にされた不幸のなか、明るい内に帰ってきたのは最高の結果に繋がったのかな?
「これからワームイーター討伐にあたって、注意してもらいたいことがあります。
一つは先程言った通り、本体の姿が見えにくいということです。
情報を知らずに光魔術を使うとワームイーターは激昂します。
夜襲型が光を嫌うのはあくまで夜間に活動しているからであって苦手というわけではありません。
嫌うものを押し付けられれば人も激昂します。
ましてや本能で生きている魔獣などは顕著に現れます。
戦いの中で大事なものは相手が苦手としている戦い方ができるかどうかです。」
苦手≠嫌いか。相手の苦手としている戦い方をするには情報を正確に知る必要がある。
情報が大事だというパトらしい考え方なのかもね。
「そしてもう一つが、ワームイーターの分体が襲いかかってくる、ということです。
見えにくい本体をあえて感知させることで前を警戒させ、分体が足元から襲う。
一匹一匹は大したことありませんが、虫の繁殖はなかなか早いです。
最近の冒険者という餌を食している以上、結構な分体が育っていると推察できます。」
さすがは危険度Bランクのモンスター、というわけか。
「そして戦い方ですが、見えない本体は同じ闇魔術にて対抗してください。
闇魔術を相手にぶつけることである程度は認識阻害を邪魔することが可能でしょう。
そしたら本体を警戒しつつ分体を確実に処理していってください。
分体の数が減ってきたら本体が闇魔術を解くと思われます。
そのタイミングでユウトさん、あなたの全力の火魔術で本体分体諸共焼き払ってください。」
それを聞いてレナさんが質問をした。
「森で全力の火魔術を使ったら火が燃え移る可能性があります。
他に対策などはないのでしょうか?」
なるほど、ただ魔術を使うにしても周りを気にしないといけないのか。
「対策はしてあります、ただそれをあてにして欲しくはないし、森を気にしてワームイーターを逃すことは出来るだけ避けたい。
最悪の場合だけど、森が一つ消えてもそれでワームイーターを討伐できれば救われる人の命が多いのも事実なんですよ。極端な話ですが。
だから気にせずにやってください。」
ニコっとわらって俺の方を向くパト。
パトの判断でそこまでやっていいものか疑問に思ったが、数百年生きてるんだ。
何か伝手があるんだろう、と納得する。
ただ…
「流石に全力をもってしても森一つ消すなんて無理だよ」
俺は苦笑いを浮かべる他なかった。
「さてアドバイスは以上となります。
出来ればすぐにでも向かって欲しいのですが少々お待ちください。」
そういってパトは一つの大きな箱――パトが小さい
から大きく見えるだけだが――を取り出して蓋をあける。
その中には薄い緑の液体が入った小瓶がびっしりと入っていた。
「前金みたいなものですが、これが僕特製のポーション。
効き目は保証します。これを持って行ってください。」
「ありがとう、大事に使わせてもらうよ。」
俺たちはポーションをそれぞれ受け取って森に向かおうとしたがパトに呼び止められる。
「あの、ユウトさん。少しお話が…。」
何故か気まずそうにしているパト。
二人で話しておきたいことなんだろうか?
「ごめんレナさん、ちょっと外でまっててもらえるかな?」
レナさんが外に出たのを見計らって話しかけてきた。
「ありがとうございます。緊急依頼を頼んでいる状況ですので、要件だけまず伝えさせてください。
レナさんの件です。彼女はこの世界では異質です。
本来は魔術にしても武術にしても、少しずつ経験を積み重ねて成長する。
しかし魔力もなく、使うことすらできない魔術の熟練度を、魔術メインで戦う僕達ハイエルフと同じ域に達している。
だから僕は思うんだ。彼女はおそらく生れながらに経験を補って余りあるほど知識がある。
彼女の戦闘スタイルに言ってもそうだ。
あれは魔力を使わない戦いの動きではない。
魔力がないのに魔力を使ったレベルの動きができる。
彼女のことを疑え、というわけじゃないからそこは安心して欲しい。
ユウトさん、あなたなら彼女の力を活かすも殺すもできる、そう思っただけです。
あくまで“情報”として知っておいてください。」
パトがあえて“情報”ということはそれを活かして戦え、と言っているんだろう。
だけど、あえてレナさんのを外してまで言うことだろうか?
たしかに異質だ、と面と向かっては言いにくいだろう。
だがパトなら言葉を取捨選択して能力を活かせ、と言えるはずだ。
まぁその理由は後で聞けばいいか。
「ありがとう、出来る限りのことはやってみるよ。
だから帰ってきたらいろいろ聞かせて欲しい。
もちろんレナさんも一緒にね。」
「え?あっ…はい、帰ってきた時には必ず。
呼び止めてすみません。よろしくお願いします。」
「行ってくる!」
そう言って俺は店を出る。
「お待たせ、レナさん。」
「もう、よろしいのですか?」
「うん、大丈夫だよ。」
…………レナさんは疑問に思わないのだろうか?
「何も聞かないの?」
「私にとって必要なことでしたら、きっと話してくれると思いますから。
私はユウトさんもパトリックさんも信じています。」
こういう時の彼女はいつも微笑んでくれる。それだけですごく安心する。
「ありがとう、それじゃ急いで向かおうか。」
「はい、お供いたします。」
そう言って俺たちは急いで森へ向かったのであった。
毎日12時30分投稿予定です。
文字数は前後しますが現状話が進まないため2500字程度を予定しております。
ストックがあるわけではなく毎日書いているので、いずれは1話ごとの文字数を多少は減らすかもしれません。
そんな感じで毎日投稿は基本的に守れるようにしていますので、気軽に読んでもらえたら嬉しいです。
誤字報告を本日より受け付けるに致しました。
感想いただき本当にありがとうございます。
凄くビックリしましたし、本日分を楽しみながら書くことができました。
非常に単純だなぁって自分で思います(笑)
ネタバレにもなるのでお礼だけですみません。
これからも楽しめる作品にできたらなっと思いますのでお付き合いいただければ幸いです。




