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異世界誕生のきっかけは子供を助けたことでした  作者: ひれい
初めての冒険
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調合屋と情報と緊急依頼と

 

 ユウちゃんがオススメの調合屋を教えてくれることになった。

 真ん中にユウちゃん、左右に俺とレナさんが一列になって歩いている姿はまさしく親子みたいだった。


 ちょっと恥ずかしいが、レナさんとユウちゃんの機嫌も良さそうなので、俺は少しの恥ずかしさは我慢することにした。

 入り組んだ場所を数回曲がって、看板すらないただそこにあるだけの扉の前に案内された。


 道はきっとレナさんが覚えてくれてるはずだ…うん、ちゃんと戻れるといいな。

 要するに知らない人は絶対に知らないであろうお店。


「到着です!ここがユウのオススメ、調合屋“エターナル”です。」



 ユウちゃんが手を離して扉に手を掛け中に入る。

 しかし受付にいたのは小さな男の子。

「パトー?お客さんつれてきたよー。」

 パトさんが店主なのかな?と思っていると受付にいた少年がペタペタと歩いてきた。


「あれ?ユウラシアさんじゃないですか?

 冒険者稼業は休業するわ!って宣言しにきてませんでしたか?」


「だからーお客さんだっていってるでしょー?

 と言うか、ここにくるのわかってたよね?」

「そうですね、ちょっとした冗談です。そして後ろの二人がお客さんですよね。

 一人は料理人レナさんと、もう一人は昨日きた異世界人さんですか。」


 レナさんのことだけではなく昨日現れた俺のことまでしっているのか。

「初めまして、柳悠斗と言います。ユウちゃんに案内されてきました。

 昨日きた俺の事まで知っているとは驚きました。」


「僕の名前はパトリック=カンラン。気軽にパトって呼んでくださいね。

 そうですね、情報は何事においても大事です。

 それはもちろん商人に限ったことではないです。

 生死を左右する情報も多数存在します。

 冒険者を目指すのでしたら心の中に留めておいてください。」


 なるほど、情報か。情報収集がどの世界を生きていく上でも重要なのは確かだろう。

 しかし小さな子供なのにしっかりしてるなと感心していると


「ユウトさん。僕はへーティと同じハイエルフです。その意味がわかりますか?」

 …この世界の人たちは当たり前のように心と読めるのかな?


「……見た目と年齢が同じとは限らない、ですか?」

「正解です。僕はこの見た目でも数百年生きていますよ。

 あと、僕が読んでるのは表情であって心じゃないです。」


 表情だけで心を読んだと思われてることまで見通されてるほうが驚きだけど…。


「そんなに読みやすい表情してましたか?」

「ええ、もう無警戒で 、と言いたいところですが、少しスキルには邪魔されてしまいました。

 邪魔されるとは思ってなかったので少し驚きました。

 それにそのスキルのことは結局分からずじまいなので二度驚きです。

 レナさんは相変わらずステキな笑顔で逆に読めないですね。」

「ふふふ、ありがとうございます。」


 レナさんは笑顔で答えている

 ただ俺は喜べる事実はない。動揺も重なりつい口にしてしまう。

「…邪魔?」

「おや、あなたの意思ではないと?なるほど、しかしそう言った“情報”は相手に漏らしてはダメですよ?」

「…忠告、感謝します。」


 しかし無警戒なのは間違いなかった。

 スキルの邪魔も自分の意思ではない。おそらく女神様の加護の効果。


 ただあまりに経験不足で加護としての効果を活かしきれていないのだろう。

 経験に応じてサポートしてくれる加護。

 出来ることは多いのだろう。だが俺には経験がない。

 経験がないと言うのは突き詰めれば情報を持っていないということ。


 知らないとな、自分自身のことを。スキルのことを。

 それが少年、いや長年生きてきたパトの“情報”という言葉の重み。


「もう、パトは長生きしてるのにいろいろ考えすぎなんだよ。」

「僕もユウラシアさんのように自由気ままに生きてみたいですね。」


「ふふん、ユウにそんな皮肉は通じないよ?冒険者稼業を休業して今のユウは料理人見習いだもん。」

「やはりあなたは苦手です。それでそも料理人見習いさんはお時間大丈夫なのですか?

 僕の知り得た“情報”ではそろそろお仕事ではないのですか?」


 あたふたの慌て始めるユウちゃん、そして時計を見るや否や

「ちょっとちょっと、その情報は共有してこそでしょー!!」

 その言葉と共に外に出ていった。

 完全にユウちゃんの負けだな。これが年の差か。


「ではあらためて、僕の名前はパトリック。

 この調合屋“エターナル”の店主です。

 いらっしゃいませ、待っていましたよ。」


「待っていた?」

「ええ、最近増えている問題をご存知ですか?」

「問題…?」


 俺は疑問に思っているとレナさんは何か思い至ったようで

「ここ最近増えている、ということは冒険者が亡くなっていることでしょうか?」

 なるほど、しかし何故俺たちなのだろうか?


「今日あなたたちが行ったハナヅキ森。そしてそこにいる魔獣を狩っていただきたい。」


 俺はその言葉を聞いた途端、怒りにも似た感情が湧き上がる。

「どうしてそれをもっと早く!…早くギルドに報告しなかったのですか!?それにどうして俺たちに!?」


「魔獣の名前インビジブル・ワームイーター。臆病者の魔獣ですが危険度Bランク相当です。

 そして君が抱いている疑問に一つ一つこたえていきます。


 まずはあなたが憤りを感じてる疑問。

 なぜそれを早くギルドに言わなかったか、ですが

 あの魔獣はところどころ住処を変えます。


 行き先に法則性がなく今はハナヅキ森にいることだけがわかっている。

 次に何故あなたたちに依頼するか、ですがあなたたちを次の標的にしているからです。」


 俺たちが標的にされている根拠がわからない。

 いくら情報を集めていても、行き先がわからない魔獣の標的まで調べることなんて不可能なんじゃ…。

 そんな疑問にも口に出す前に答えてくれる。


「今日あなたが納品したアレス草、あれのおかげでやっと尻尾を掴めたのですよ。

 魔力を帯びているアレス草から魔獣の痕跡がわかり、そしてそれはあなたにも痕跡が残されている。

 その痕跡こそあなたが次の標的だという証拠なのです。」


 それならもっと実力のある魔獣退治専門の人もいるはず、と思ったがそうもいかない魔獣らしい。


「あの魔獣は臆病者で不可視の魔獣です。

 魔力が高いものが近づくとすぐに逃げてしまう。

 おかげで近年、まだ魔力が少ない新人冒険者、

 不可視であるため近接系中級冒険者パーティーが犠牲になっています。

 あなたたちは魔力が少ない、でもきっと倒しえるだけの実力があると信じています。」


「もしかしてユウちゃんに仕事に行かせたのもそのせいでしょうか?」

 今度はレナさんが質問したが、さっきの流れとユウちゃんはどう結びつくのだろうか?


「さすがレナさんですね。もしあの子がこの件を知ったら直ぐにでも出かけてたでしょう。

 だが彼女の実力からするとまず出会う前に逃げられてしまう。

 そうなってからでは遅いのです。

 だから彼女にこの件を聞かれるわけにはいきませんでした。」


 パトはそのまま話を続ける

「緊急依頼としてあなたたちに指名依頼を出します。

 どうか新人冒険者たちのため、魔獣インビジブル・ワームイーターの討伐をお願いしたい。」

「一つ聞きたいんだけど、危険度Bランクの魔獣。

 そして俺たちは今日冒険を始めたGランク。

 正直勝てるとは思えない。」


「たしかに危険度Bだけど実力的にはそこまで危険度は高くないのです。

 あくまで隠密性と新人潰しの異名から要警戒ランクまで引き上げられているだけなのです。

 それにあの魔獣は極端に火の魔術によわい。

 君たち二人でなら倒せると信じているからこその依頼だ。引き受けてくれないだろうか?」


 そんなもの答えは決まっている。レナさんの方を見ると微笑んで頷いてくれる。

「もちろん、引き受けるよ。だからもっと正確な情報が欲しい。」

 そして俺たちは夜の森に戻ることになった。

毎日12時30分投稿予定です。


文字数は前後しますが現状話が進まないため2500字程度を予定しております。

ストックがあるわけではなく毎日書いているので、いずれは1話ごとの文字数を多少は減らすかもしれません。

そんな感じで毎日投稿は基本的に守れるようにしていますので、気軽に読んでもらえたら嬉しいです。

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