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精霊の試練

 

 俺はこの世界で何が起きているか、茉緒のこともあり聞きたかったがゆえに今いる周りのことを見る余裕がなかった。

 魔王の話題はシアにとっても父親が魔王となっている。

 見過ごせる内容ではなかったはずだ。


 俺は恐る恐るシアの方を見ると目が合った瞬間ニコっと笑われた。

 いや、その笑顔は大変可愛らしいのだけど気にしてないのかな?

 聞くと墓穴を掘りそうな気がするから今は止めておこう。


「それで他に聞きたいことはないのかの?」

「そういえばさっき試練がどうのって。」


「ふむ、そのことか。宗士から勇者の種子が芽吹くことについて何も聞いておらんのか?」

「それだったら確か、『力に溺れるのではなく、種子を宿したものは自らを知り、世界を知り、力を知り、過去を知り、それでも揺るがぬ意志こそが花開かせる栄養だ。』とか言っていた。」


「なんじゃ、聞いておるではないか。」

「え?」


「要するにそれじゃよ。勇者の種子を芽吹かせるためワシら精霊の試練を受けてもらっておるのじゃ。」

「どうしてなんですか?」


「お主、もしかして勇者になれば強くなるとでも思ってたか?」

「違うの、ですか?」


「当たり前じゃ。そんな簡単にパワーアップして干渉者に立ち向かえるなら全員勇者にしておるわい!

 勇者とは試練を終え、結果として干渉者と立ち向かうための存在じゃ。」

 当然のように怒られてしまった。


 茉緒を守る、それこそが宗士にとって揺るがぬ意志。

 その心の強さが宗士の強さなら本当に茉緒のためなんだな。

「宗士が干渉者と戦うではダメなのですか?」

「あやつは昔言われたことを律儀に守って勇者となったからな。

 そもそも干渉者がどこの誰かもわかっていなかったから自由にさせているのじゃ。


 時間を作る、という意味でもあやつが誕生した魔王を倒しているのは助かっておるのも事実。

 それに干渉者の存在を確認できたとはいえ、女神様に匹敵する相手に宗士一人で行かせて万一のことがあってもいかんのよ。」


 俺が生きれる時間があればよかった、ってことも本当なんだな。

「それでは精霊の試練とは一体?」

「ワシらの試練は言わば心の試練じゃ。」


「心?」

「この世界のスキル獲得の仕方は知っておろう?」


「自らの願望に沿う形、ですよね?」

「そうじゃ。心の底から願うことでより強いスキルの獲得やより強いスキルへと成長する。

 強すぎるが故に制限がついてしまうこともあるの。

 もちろん望まなくとも強いスキルを獲得する場合もあるがの。」



 シアの殺される前提の攻撃を奪うことだよね。

 あとは自分でもよくわかってないって言ってたし例外は千佳のことか。

「だから心を鍛えることを目的として、スキルの強さをあげるための試練が精霊の試練なんですね。」

「そう、あくまでワシらは芽吹くための手助けしておるに過ぎん。」


 それなら種子を持つ者じゃなくてもいい気がするが理由はあるのだろうか?

「どうして種子を持つものだけ、なのですか?」

「種子を獲得するものは限られる。

 女神様方も巻き込みたくないという思いもあるのじゃ。


 それに…、何人かは種子を宿す者もおったのじゃが、過去に来たお主を抜かせば宗士以外だれも試練に乗り越えられておらんのじゃ。」


 それほど厳しい試練なのかな。

「安心せい、とは言わんが少なくとも過去に来たお主は勇者になっておったんだ。つまりはお主は残り越えられるということじゃ。」


「あはは…、実感が湧かないんですけどね。」

「ただいっておくが、他の精霊達はワシほど甘くはないぞ?」


「うっ…。どう言った方々なんですか?」

「ふむ…、行ってからのお楽しみ、でもいいのじゃが知っておいて損もないだろう。

 まずは南にいるのが風精霊シルフ。

 人間嫌いを自称しているワシ以上に人間大好き精霊じゃ。」


「自称?」

「口ではいろいろ言っているが、自分の身を削って加護を与えることでエルフの里を守っているからの。」

 ツンデレっていうやつなのかな?

 まさか精霊界にもそんな性格の持ち主がいるとは思わなかったが。


「西にいるのが自由気ままな火精霊イフリート。

 ダンジョンですら人間を殺さないこと以外は派手なことを好き勝手にやっておるからの。


 北にいる水精霊ウンディーネのやつはとある出来事で人間不信に陥った。

 ダンジョンもあやつが魔力を満たしていないせいで何もない神殿と化してしまっておる。」

 一番手こずりそうなのが火精霊か。

 理由はわかっているが水精霊は行っても会ってはくれるのだろうか?

 こういうのは時間をかけるべき、なんだよな。


「どこから向かうかも決めねばなるまい。

 近い遠いで決めるなら北か南だろうがの。」

 プライ王国からみて東にあるここからいくには、北にいる水精霊か南にいる風精霊がいいようだ。

 火精霊にいくならプライ王国を経由することになる。

「精霊様が棲むと言われる火山帯は冒険になれた我々ですら手を焼きますからな。」

ウルドさんはもっと冒険になれてから行くべきだと教えてくれた。


「正直次行きたいところは決めているんです。

 例え遠くてもそこだけは行きたかった。」

「ほう?どこじゃ?」


「北の大地にある水精霊の神殿です。」

 俺の言葉に隣にいたシアがビクっとしたのはわかった。

「それはまた、理由はあるのかの?」


「俺はただこの子に本気で笑ってほしいだけですよ。」

 そう言ってシアの方を見る。隠す必要はない。


「黙っててごめん。実を言うと知っているんだ。」

「…皇国のこと?」

 すぐに何を言いたいのか理解できたようだ。


「うん。シアにとって難しい問題なのはわかってる。

 でもね、俺はシアに本気で笑っていてほしいんだ。」

「私ならユウト様の隣にいるだけで嬉しいの!」


「そう言ってくれるのは嬉しいよ。

 でもアイリスの能力を聞いた時、俯いてたよね。

 それがずっと気になってたんだ。」


「それは、たまたまなの…。」

「シア。」

 俺はまっすぐシアを見つめる。すごく泣きそうな顔をしているが、ここは目を逸らすわけにはいかない。


「なん、ですの?」

「今なお苦しんでるなら俺が支えになるから。

 もちろんここにいるみんなだってシアの仲間なんだ。」

「そうだよ!シアはユウの大事な友達だよ!」

「シアちゃん一人で背負う必要はないんですよ。」


「私は何があったか知らないから不用心に何か言えないけど、私だってミーシアの仲間なんだよ!」

「ふふふっ、ここはお姉さんに任せなさい。」

 みんなが同意してくれる。

「まだ話していなかったことがあるとは思わなかったわ。後で悠斗君を縛りあげて事情は聞くけど。」と千佳の恐ろしい言葉が聞こえたが気にしない。


「シアの苦しみを俺たちも一緒に解決したらダメかな?」

「…ユウト様、ありがとうなの。」

 泣きそうな顔を必死で堪えつつ、だけど少し控えめな笑顔でお礼を言われた。


「次の目的地は水精霊の神殿ってことで!」

「はいなのっ!」

 こうしてシアの心のしこりを取るため、次の目的地が決まった。

本来でしたら前日まででしたが本日でお盆休み毎日投稿を終了します。

月末までまた投稿が疎らになるかと思いますが、9月に入ったらまた更新頻度を上げていく予定です。

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