地精霊ノームと
毎日投稿最終日を一日勘違いして書き上げる時間とっていませんでした。
申し訳ありません。明日中にどこかで投稿致します。
千佳から解放された俺は足へのダメージを七海さんに癒してもらっている。
「…お主もなかなか苦労しておるんだな。」
なぜか精霊さん(?)から憐れまれている。
「俺の苦労、わかりますかっ!?」
「へー、悠斗君、そんな風に思ってたんだ?」
「イ、イエ、ソノヨウナコトハ…。
ともてお優しい千佳さんと幼馴染で私は大変幸せ者だと思っております、です、はい。」
「ふーん…?」
「そ、それより早く行こうか。待たせるのも悪いしさ。」
「まぁ今日は許してあげるわ。」
「…はい、ありがとうございます…。」
ようやくお許しをもらえたことで千佳の威圧付きニコニコ笑顔の視線から解放されることになった。
俺たちは用意された円陣に集まり、そして光に包まれた瞬間、別の場所へと移動した。
「ようきたの。」
ファンタジー世界でよくみる精霊のお爺ちゃんそのもので、地精霊というだけあって黄土色の肌ですぐに土系統の精霊とわかる出で立ちだった。
「あなたが地精霊ノーム?」
「いかにも。ワシが六大精霊が一人、ノームじゃぞい。」
「ユウ、精霊初めてみた!すっごーい!」
「そうじゃろそうじゃろ。人前に出ることなど無かったからな。」
本当はもっと敬う存在なんだろうけど、もともとこの世界にいたユウちゃんですら孫とおじいちゃんという感じで話している。
「それで地精霊様、我々に先程の続きを教えていただきたい。
勇者と魔王の種子について伺いました。
そしてそこのユウト殿が勇者の種子を持っていることも。
どうして女神様は種子という存在を世界の根本として作ったのか。
我々の知らないところで何が起きているのですかな?」
収集がつかなくなる前に本題に入るよう促したのはウルドさんだった。
「ふむ、そうじゃの。まずは少年の質問から答えようかの。」
ルージュさんと約束以外で俺の聞きたいこと、それは、
「この世界で何が起きているか、です。」
「勇者の宿命と魔王の宿命。それを知ってしまったから気になるのは仕方ないか。
いいじゃろ。ワシが知っておる範囲で話そう。
昔はな、勇者にしても魔王にしても昔はある条件を満たせば誰にでもなることが出来る存在であり、種子という存在はなかったのじゃ。」
「どうして女神様は種子という存在をお創りになったのですかな?」
「ふむ、勘違いを訂正しておこう。
女神様が種子という概念をお創りになったのはあくまで勇者の方だけじゃ。
それも魔王の種子が生まれて、それが芽吹いた存在に対抗するためにな。」
「魔王の種子に女神様が関わっていない、と?」
「そうじゃ。魔王の種子という存在が知ることになったのは、ワシたちが始まりの魔王と呼んでいる300年前に生まれた魔王が原因じゃった。
正確にはもともと魔王ではあったのじゃが、そ奴が別の魔王を殺してしまった。
みなも知っての通り今の世では、魔王とは破壊の権化じゃ。
世界を滅ぼす忌み嫌われる者。
じゃがそれもある行動理念から破壊し尽くしているに過ぎない。」
「…それが蠱毒?」
「ああ、そうじゃ。自分の力をより強くすることだけを定められた魔王の宿命。
そしてそこでお主の質問の答えとなるのじゃが、この世界はある存在から干渉をうけている。
ノワール様の力で“現在”という世界を隔離することで耐えてはおるが、それが根っこの部分で間違いない。」
「なるほど、時魔術が使えないのもそれが原因なのね?」
千佳は何かを理解したのかそう呟いた。
「ふぉっふぉっふぉ、ようわかったの。
そう、この世界を隔離しているが故に多世界の中でここだけが唯一どの世界からも干渉できない擬似単一世界なのじゃ。」
頭の中がこんがらがりそうなので大事なことは聞こう。
「その干渉しているある存在とは一体?」
「それがわからんのじゃ。最初の干渉こそが300年前の蠱毒のための魔王とその種子の誕生。
そ奴は信じられないことにブラン様がお創りなった世界の根本に干渉して、今の魔王という存在に作り変えたのじゃ。」
「我々の知らないところでそのようなことが…。
勇者殿が魔王のみに固執するのも納得ですじゃ。」
「ああ、女神様とて手を拱いてたわけではない。
じゃが、この世界にいた者たちには酷な言い方やも知れぬが、正直なところ、少年が生きている時間さえ確保できればそれで良かったのだ。」
「どうして俺、なんですか?」
「お前さんはこの世界がどうして生まれたか、知っておろう?」
「俺が子供を助けてことでできた世界、ですよね?」
ユウちゃんやシアの視線を気にしながら俺は答える。
「そうじゃ。助けられた一人の女の子がお前のためだけに作った世界、それこそがこの世界だ。」
「やはりあの女の子が女神ブランってことなんですね。」
「…その辺の深い話はルージュ様はじめ、女神様方にお会いした時に聞くが良い。最初言った通り約束であろう?」
結局口ごもりながらそれ以上は教えてくれなかった。
「ただな、今まで何者かも分からなかった存在が、ある出来事によって歪みが生まれた。」
「何かあったんですか?」
「他人事のように話しおってからに。
お前さんがそこの嬢ちゃんに割って入ってことじゃよ。」
シアの方を向きながら答えてくれた。思い当たることといえば、
「あの<簒奪者>の件?」
「うむ。最初に言っておく。簒奪者は同じ相手には使えぬ。つまり…。」
「俺が割って入ってなければミーシアは死んでいた?」
「そうじゃ。」
その一言で落ち込むように俯いた女の子二人。
自分が死んでいたかもしれない恐怖、友達を殺していたかもしれない恐怖。
それを想像してしまったのかもしれない。
「お前さんも知っておろう。300年前の始まりの魔王を倒したのはがお前さんであることを。」
「宗士がそう言っていたのは聞いたけど本当にそうなんですか?」
「ああ、たしかにお前さんと千佳と七海さん、それに…
「私もいたんですね。」
ノームはレナさんの方を見ていたのでレナさんも自分が居た事がわかったみたいだ。
「そう、その4人はいたのじゃ。
だがなユウラシアとミーシアはおらんかった。」
「つまり過去に来た俺とは別の未来の可能性があるってこと?」
「ああ、あの出来事でようやく干渉者の存在をある程度感知できるようになった、と女神様がおっしゃっていた。
つまりは過去に来たお前さんは割ってはいらなかったのだろうな。
だから嬢ちゃんが生きれるよう干渉することにした。
もしもお前さんがこの世界を救うことを選択したときのためにな。」
「それがアイリスなの?」
「そうじゃよ。この世界にとって嬢ちゃんたち二人が生きていたことが何よりの希望となるじゃろ。」
「その干渉者、を倒すことができれば今の破壊者である魔王がなくなるのですかな?」
「ワシらはそう考えておる。じゃがそ奴の力は強大だ。
女神様の隔離ですら撃ち破ろうとしているのじゃからな。」
「…それはなかなか骨が折れそうですな。」
俺はこうしてこの世界にきてようやく世界で何が起きているか知ることができた。
俺のために作られた世界、それを俺が普通に生きられる時間がタイムリミット?
絶対にそんなことをさせたくない。
無知は罪、されど知っていて放置するのはそれ以上の罪。
俺は世界を救いたい。
まだ相手すらわからない状況で出来るかわからないけど、やらないよりずっとマシだ。
今は少しでも強くなりたい。