冒険者登録
「さて、アタシは十分楽しめ…いえ、やることやったから仕事に戻るけどあなたはどうするの?」
…あ、はい。楽しんでもらえて何よりです。
「冒険者登録にきたんですけど、魔力を扱う方法がわからずヘーティさんにご助力をいただいていまして…はい。」
「あー、あー!そういうことなのね。それじゃ登録しちゃいましょうか。せっかくここにいるんですもの。」
ヘーティさんにとってはここにいるのはあくまで魔術被害を防ぐだけで登録できるのはついで、なのだろう。
「勝手に登録しても大丈夫なのですか?」
「うーん…それもそうね~、仕事戻るついでにギルマス呼んでくるからちょっと待ってなさいな。」
そう言ってヘーティさんは部屋を出て行った。
それから5分もしないうちになぜか走ってきたニコラさん。
目の前で立ち止まって肩で息をしている…本当になにがあったのだろうか。
いや見境がなくなったヘーティさんの件もある、知らない方がいい気がする。
「あの、大丈夫ですか?」
「はぁ、はぁ、す、すまねぇ…ちょっと落ち着くまでまってくれ…」
すーはーと深呼吸して落ち着いたのかあらためて話しかけてきた。
「すまんかったな、少年。それでヘーティから報告受けたが、無事魔力操作を獲得できたようだな。
それよりもあいつが妙に笑顔だったが、なにかあったのか?」
「……あはは…、きっと新しい玩具を見つけてたのしんでたんだとおもいますよ。」
俺は遠い目をして答えていた。
「…そうか少年、何があったかは聞かんが災難だったな。よくわかったか?ここの女は怖かろう?」
俺たちは無意識に握手を交わしていた。
「さて少年、冒険者登録するんだが、本当にいいのか?冒険とは常に危険が伴う仕事だ。
原因は調査中だがここ最近新人、中級関係なく冒険者の死者が出ている状況だ。
あくまでバカどもの無茶が原因だろうとは思うのだがおかげでこっちも忙しい。
お前に死なれちゃこっちも仕事が増えるしレナちゃんがこわ…、ゴホン。
それでも冒険者になりたいのか?」
少し冗談交じりだけど顔はマジメだ。これがギルドマスターとしての顔だろう。
「安全なところで、安全になったときに冒険者をやって、その間に多くの人に亡くなったとききっと後悔する。
それならたとえ死ぬことになったとしても、人を救えることをしたい…今度こそ!」
そうできることなら今度こそ、きっちり助けたい。
「今度こそ、か。お前さんもしかして異世界で…。いや、聞くまい。ただお前さんの気持ちは分かった。
プライ王国ギルドマスター、ニコラ=レン=レッティーが少年、ユウト=ヤナギの冒険者登録を認めよう。歓迎するぜ、少年。」
ニカっっと笑って手を出してきた。さっきの無意識に同じ立場で分かり合った時とは違う。
相手はギルドマスター。一冒険者となる俺もきっちり礼節を弁えつつ握り返した。
「至らない部分もあるけどよろしくお願いします!」
「おう、簡単に死ぬんじゃねーぞ?」
「よし、じゃー登録をすっぞ!まずはそこにある水晶に窪みがあるのはわかるか?
そこに身分証をはめ込むんだ」
そして俺は水晶に近づき、言われた通りの窪みを見つけてそこに身分証をはめ込んだ。
「あとは全力で魔力を水晶にあてる。そうして身分証と魔力を同期させてこの世界に登録させる。」
魔力を全力に…大丈夫だろうか、魔力が残っているか不安だった。
さっきヘーティさんとの試し打ちで一度は魔力切れに陥ったわけだし。
そうは思ったが無事登録できた。終わったタイミングでヘーティさんが魔力を渡してくれていたのだろう。
これが長年いきてきたハイエルフ、さらっとそんなことをしてくれてる、気の回るいいお姉さん、ということか。あの笑顔さえなければ。
「少年、登録も終えたしクエストうけるんだろう?だがまずは簡単なものからするんだぞ?
いきなり魔獣退治なんてものはいかん。採取クエストなどしつつ最小限の魔獣退治から慣れていくんだ。」
「はい、わかりました!ありがとうございます」
そうして俺は無事登録を終え、レナさんとヒロナさんがいる受付へと戻った。
「あら~彼氏さん~?おつかれさま~。ちゃんと登録できたみたいだね~。おつかれみたいだけど~なにかあったのかな~?」
「え?いや、あはは…そんなことないですよ?」
レナさんも少し心配そうにしてる。ただ何も言ってこないので問題ないと判断しているのかな?
ヒロナさんは喋り方はすごく鈍感そうだけど、冒険者のことよくみているんだなっと思っていたら
「あらら~?彼氏さん、と~っても失礼なこと考えてないかな~?」
「え?いや、あはは…そんなことないですよ?」
咄嗟にさっきと同じこと言ってしまった。ただ問題ないと判断したようで
「ふふふ~私に隠し事はいけない子だな~?ま~レナちゃんもそこまで心配してないようだし私も気にしないでおくよ~。」
そうして落ち着いたところでヒロナさんに冒険者として必要なことを教えてくれた。
ランクによって受注できないクエストもあること。
クエスト失敗を行うと違約金、もしくはランク降格もありうること。
クエストの一定期間成功のない場合も降格すること。
ケガによる受注不可の場合は申請することで降格するには猶予が与えられる。
その他もろもろ、覚えなくてもいいけど頭の片隅には入れておいてね、だそうだ。
「さてさて~一通り説明したけど~、お二人はお仲間さんはどうするのかな~?
採取クエストなら二人でも大丈夫だろうけど~、パーティー組まないといずれはきつくなると思うよ~?」
「仲間か~。といってもニコラさんに言われた通り最初の方は採取クエストだし大丈夫かな?んーレナさんどうしようか?」
「もちろん二人で、です!」
即答だった。とりあえず採取クエストの間に考えよう。危険が迫ってからでは遅いからね。
「それじゃヒロナさん、手ごろな採取クエストを教えてもらっていいかな?」
「ん~大丈夫だけど今日からクエストいくのかしら~?」
「え?その予定でしたけど…?」
生活基盤の確保は急務だ。でもヒロナさんは
「そっか~でも~今日クエストはいくこと許可できないかな~?
今日初めてきた世界で戸惑うこともあるでしょ~?本当は疲れてるのを隠したのも減点だね~。
今日はゆっくり休んで~、そしてバッチリの状態で明日また来てくれたら許可するよ~?」
ここの人たちは本当に気遣ってくれてるんだなっと少しうれしくなった。
ただ今日休むことができない以上ゆっくり休むこともできない。そう言うと
「ギルドの部屋に一応休むとこもあるけど~今日はレナちゃんの家に泊まること決定してるよ~?」
え?初耳ですけど?
そうして俺は、会った初日にレナさんのお世話になるのは気が引けたが有無を言わさず決定していた。
泊まることを了承したことで笑顔のレナさん。すっごい可愛いですその笑顔、本当にありがとうございます。
そんなかわいい子と一つ屋根の下、いろいろ緊張したがすごくおいしかった、とだけ言っておこう。
もちろん夕食だけどね。いきなり仲を深めるなんて高等テクニック、持ち合わせてるわけがない。
こうして俺は異世界生活初日を無事に終えることができた。
ようやく次回から冒険者生活スタート!
まさか小説投稿後、毎日更新でほぼ2週間、異世界生活初日をやるとは思いませんでした。
これからは戦闘シーンも増えていくと思いますので、そういったシーンも楽しんでもらえる作品にしていけたらなと思います。…最初は書いてた通り採取クエストですが…。
そんな感じでこれからも皆様の毎日に1話お届けする予定ですので気軽に読んで頂けると嬉しいです。




