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弓の師匠と精霊と

17日まで1日1話予定です。

 

 コンコン、と部屋をノックする音が聞こえた。

「はーい。」と返事をして扉を開けるレナさん。

 そしてそこにいたのは見知った老獪のお爺さんだった。

「呼ばれて来たがここで合っておるかの?」


 その人とは弓の第一人者で大会にも出てたウルドさんだ。

 って弓聖さん本人が来ちゃったよ!?


 いやいや、こういうのってもっとこう引退した人とか、元から人に教える仕事をやってますってような人がくるもんじゃないの!?

 まさか最前線にいるような人が来るとは正直思ってもいなかった。

 そんな人が来るくらい弓人口が少ないのか、と疑ってしまう。


「ウルドさん、お呼び立てして申し訳ありません。」

「気にすることはありませんぞ。パトリック殿の依頼ですし、なにより若い弓師の育成とあらば、儂も心踊るというものですじゃ。」


「そう言っていただけ何よりです。」

 とりあえず紹介からなのですが…。」

 パトから俺たちの紹介をしてもらうことにした。


 ただ大会に出ていたからか俺やユウちゃん、シアのことを名前だけは知っていたのでスムーズな紹介となった。


「それで今回、弓を教えていただきたい方は…。」

 パトが紹介に入ろうとしたら千佳が前に出て、

「弓のご教授、よろしくお願い致します。」

 俺が見たことないような礼儀正しい姿でお辞儀をする千佳。


「ほっほっほ。若いお嬢さんの方じゃったか。これはこれは、楽しみじゃの。それでは善は急げじゃ。早速行くかの。」

「……行くってどちらへ?」

 千佳が一気に不安そうな顔になった。


「もちろんダンジョンじゃよ。」

 そう言って「はっはっは。」と嬉しそうに笑いながら千佳を引きずり外へ出て行った。

「いーやぁぁぁぁー、たーすーけーてぇぇ…。」

 泣きそうな声がどんどん遠ざかっていく。

 あー、これは間違いなくへーティさんタイプ。

 千佳、自分で決めたことなんだ。

 俺は心の中で千佳の幸運を祈ることしかできなかった。


 数日は修行でいくことはできないかと思っていたけど修行場所がダンジョンならちょうどよかった。

 それにユウちゃんやシアだけじゃなくて、ウルドさんみたいな高ランク冒険者がいるなら初めてのダンジョンでも危険性がだいぶ低くなる。



「ユウトさん。」

 みんなが部屋を出た後、俺も後を追おうとしたらパトに引き止められた。

「一緒に行きたくなったか?」


「そうですね、それはいつか機会があれば。」

 軽く受け流されて、真面目な顔のまま、

「いまはそれより例のペチュニアの件です。」

 その言葉を聞き今度は俺も真面目な表情になる。


「精霊の件、か?」

「察しがよくて助かります。まずは当人を探すことから始めないといけません。」


 そうだよな。なんとかしたいとは思っても剣単体ではどうしようもないな。

 ただ情報収集が得意なパトなだけあって、

 ボクの心当たりがあるとすれば北の大地、リンスレット皇国の更に北の果てにある氷塔です。」


「氷塔?」

「ええ、溶けることのない氷漬けの塔。

 リンスレット皇国が存在していたころから誰も近づくことさえできない、極寒の地。」


「近くことができないって例えば水冷耐性があっても、か?」

「ええ、彼女の力で凍っているのではないか、と思います。

 危険性で言えば影響を受ける遠い場所ですらユウラシアさんの蒼炎以上の力。

 さらに塔に近づけば近くほどそれ以上の力を体感できる、といえばユウトさんなら理解できるのではありませんか?

 。」


「ははは…、確かにそれはどうしようもないな。」

 “蒼氷炎天”としてユウちゃんには及ばないものの蒼炎は扱える。

 だからこそそれ以上の危険と言われたらその危険性は十分理解できる。


「何か方法はないのか?」

「彼女以上の精霊、例えば大精霊に加護により冷気を防いでもらうほかないでしょうね。」


「大精霊っていうと地精霊ノーム、みたいな?」

「はい、炎精霊イフリートに冷気自体を防いでもらうのがいいでしょう。」

「水精霊のウンディーネに耐性を上げてもらうのはダメなのか?」


「耐性を上げてもダメージを決して0にできるわけではありません。

 1割のダメージに軽減できたとしても10回同じダメージを受ければ元も子もありませんからね。

 相殺による無効化でないとみなさんのなかで水冷耐性が低い方から危険になっていくと思いますよ。」


 なるほど、そういうところも気をつけておかないといけないのか。

 だれか犠牲になってからでは遅いし今こうして知ることができて良かった。


「ありがとう、パト。」

「いえいえ、それではボクはそろそろプライ王国に戻りますね。」


「結局一緒に来ないのか?」

「これでもボクを頼ってくれる方もいらっしゃいますからね。

 世界の危機はユウトさんがきっとなんとかしてくれると信じてます。


 だからボクはボクにできることをするんです。

 出来ること、出来ないこと。

 ボクにとって一緒に冒険は出来ないことなんですよ。」


 今まで断ってきたのは何か理由が合ったのかな?

 とりあえずこれ以上誘うのはやめておこう。


「それでも一緒に冒険しないかって誘われたのは嬉しかったですよ。

 ユウトさんや皆さんに負担をかけてしまいますが、どうかこの世界をよろしくお願いします。」

 頭をさげるパト。


 俺の「任せておけ!」という言葉を聞き安堵したように頭あげ、

「ある程度ポーションはお渡ししましたが、王国にくる際は補充に立ち寄ってくださいね。」

 そう言って部屋を後にするパト。


 俺はパトを見送ったあと急いでみんなの後を追いかけた。


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