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アイリス

申し訳ありません、新しい武器の名前をユーカリからアイリスへと変更いたしました。

 

「おう、無事持てたようで何よりだ。不便はないか?」

 涙を拭いて落ち着いたのを見計らってか、ジャイロさんがアイリスについていろいろ確認していく。


「うん、大丈夫なの。」

 そう言って器用に鎌を回し始めた。

 鎌を回すだけでどうしてこう、厨二病心を刺激するのだろうか。

 おかげで少し見惚れてしまった。


 いろいろ回したり持ち上げたりして動きを止めるとすぐに、

「ホウセンカのときより扱いやすいの!」

 とシアが嬉しそうに驚いている。

 小さな体で斧を扱ってたからそれに比べたら幾分鎌の方が動かしやすい、のかな?


「そうかそうか、それは良かった。

 ホウセンカと違って鎌になってしまったから戸惑いもあるかと思ってたが、さすがは高ランク冒険者、しっかり対応できておるな。」


 しかしプロテアに時の女神の加護、ね…。

 ウルドさんとの試合で勇者が相手の矢を弾きながら仕込んでいた攻撃は、加護による遅延ないし停止させていたのかな。


 存在するのに使えない時魔術を使ってるのと同じ攻撃ができる、ある意味チートレベルの武器だったんだなと少しだけ苦笑いを浮かべてしまう。

 それなのに俺相手にはその能力を使ってない辺り実力差を余計に感じる。


「ユウト様、どうしたの?」

 そんな苦笑いを感じとったのかシアが俺の顔見ながら不安そうな顔している。


「ごめん、なんでもないよ。ただルー…冥界の女神様の加護がどんなのかちょっと気になってね。」

 誤魔化すように俺は別の話題を選択した。


 俺の時と同じ効果なら身代わりとルージュさんのところに意識だけ転送、だったはずだが今回は武器自体に付いている。

 同じなはず、ないよな。


「あー、それなら鎮魂だ。」

 答えてくれたのはジャイロさんだった。

「魂から生を作り出した女神様らしい加護なんですね。」


 ただどういう意図でルージュさんがそんな能力を付加させたのか、シアの表情が全てを物語っていた。

 武器を見つめながら今にも泣き出しそうな顔をしている。

 リンスレット皇国には誰か、あるいは全員の魂が取り残されているのだろう。

 それをなんとかさせるための手助け、それがアイリス。


 一度は加護をもらった俺が言うのなんだが、ルージュさんが一個人であるシアに肩入れする理由はあるのかな?

 何にしてもこの話題は今は避けないとせっかく笑顔が増えてきたのに悲しい顔をさせるのは耐え難い。


「加護はともかくシオンのような魔術補助として使える、みたいなのがアイリスにもあるんですか?」

「おいおい、加護はともかくってそれが一番大事な事なんだがな。

 まぁいい、そうだな、ホウセンカとは全く別物になったとは言ったが、アイリスはなホウセンカの能力を引き継いでいる。」


「ホウセンカの能力?」

「前に話したと思うがホウセンカは破壊斧と呼ばれるほど魔力を込めた分だけ一撃が重くなる武器だった。

 それがアイリスの能力にもなっている。

 もっともホウセンカに比べるとちとばかりクセが強くなったがな。」


「クセ、ですか?」

「先端に近ければ近いほどその威力は増していくの。」

 俺の質問は持ち主であるシアが答えてくれた。

 なるほど、鎌は刃全体を使う武器だから先端の一点集中は確かにクセが強いと言わざるをえない。


「ほう、さすがは固有武器の所有者なだけはある。

 すぐに武器の性能を理解できたのか。」

「ホウセンカ…、ううん、アイリスが教えてくれたの。」

 シアは何か話でもしているようにまたアイリスを見つめている。


「はっはっは、武器の声まで聞こえたか!

 それなら俺から言うことはもうねーな。

 大事にしてやんな。」


「ホントに本当にありがとなの!」

 シアは目一杯頭を下げてお礼を言っている。


「俺はホウセンカが望んだ姿の手助けをしたに過ぎん。

 それに声が聞こえなければまだ着手すらしておらんかった。

 嬢ちゃんと一緒に旅をしたかったんだろうな。

 礼ならホウセンカ、いやアイリスに言ってやんな。」


 そういうなり部屋を出て行こうとしていた。

 これが職人なんだなと感動していたが大事なことを忘れているよね。

 このまま有耶無耶にしてトンズラするのも気が引けるし大事なことを言わなければならない。


「あ、あの…。」

「ん?なんだ?」

 機嫌が良さそうな表情だからこれならまけてくれるかな、と本題を口にする。


「お金の件ですが、一か月かかると思っててまだ準備が…。」

 そう言った途端にシアが俺の方を向いて、

「ユウト様!これは私の武器だから私が払うの!」


 と、ジャイロさんの前に出たが当の本人は、

「バカやろう!女神様の加護がついた武器に値段なんて付けられるわけねーだろうが!」

 シアのことは御構い無しに俺のことだけを怒鳴りつけた。


「えっ、あっ、はい、すみません?」

 あまりの迫力だったから勢いで謝ってしまう。


「金はいらん。こっちもいい仕事ができた。

 まさかこんな経験ができるとは思わなんだ。

 だから礼はこっちから言わせてくれ。

 ありがとうな、嬢ちゃん。

 ホウセンカを俺のとこに持ってきてくれてよ。」

「ううん、こっちこそありがとうなの!」


 二人はお互いに礼を言い合っている。

 なんかすごい理不尽な気がするがお金の心配がなくなったのは良かった。


「あっ、だが表で武器を選んでる嬢ちゃん達の料金はしっかりいただくからな。」

「で、ですよねー…。」

それはそれ、これはこれと言わんばかりにまける気は一切なさそうな顔をしている。

 うん、予算内で足りることを祈ろう。

 シアは武器を仕舞い、俺たちは表へと戻った。

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