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ミーシア=リンスレット

 

「ユウト様、急いで準備してきたので服とか髪は乱れてないの?」

 俺の目の前でクルっと一回転してそう問いかけてきた、どこかのお嬢様のような格好をしたミーシア。



 どうしてこうなった?


「あ、あぁ…、よく似合ってるよ。」

 そう俺が答えると、

「久しぶりに着たから良かったの。」

 そう答えながら満開の笑顔を見せてくれた。

 目を合わせてくれなかった昨日までとは大違いで戸惑いばかり増えていく。


 俺の目の前にいるのは本当にミーシアなのだろうか?



 少し整理しよう。

 俺はミーシアとユウちゃんの間に割って入った。

 もしかしたらアサギリさんに誓った言葉が俺を動かしたのかもしれない。

 だけど状況的にミーシアの決意を踏み躙る行為であることは間違いない。


 しかもタイミング悪く犠牲者で防御全振りしてた俺の硬さでパキーン、とミーシアのホウセンカにトドメを刺してしまった。


 このまま嫌われても仕方ない、そう思っていたが

「本当に私のこと守ってくれるの?」

「え?」


「本当に私のこと守ってくれるの…?」

 今度は不安そうに聞いてきた。

「これでも俺、ユウちゃんより強いんだよ?

 ミーシアのことだって守ってみせるよ。」


 冗談混じりだったので隣でユウちゃんが、

「むぅー、次は勝つもん!」

 と言ってるが気にせずミーシアの目を見て守ることはきちんと伝える。


「…やっと見つけたの。」

 そう言った瞬間ポロポロと涙を流し始めた。

「え?ちょ、ミーシア…?」


「だい、じょうぶ、なの…。」

「え、でも…。」


「違う、の…嬉しくて…やっと、見つけたの…ユウト様!」

 ミーシア泣きながら俺に抱きついてきた。


「ミーシア!?」

「ずっと、ずっと夢みてたの…私の王子様っ!」


「王子さま!?」

 突然のことで動揺すると俺とぽかーんとしている周りで嬉しそうに泣いているミーシア。


 とりあえず落ち着くのを待つがどうも様子がおかしい。

 俺のことをユウト様や王子様と呼んでくる。

 まさか誰かの魂が転生したとか?


「ミーシア、だよね?」

「シアと呼んでほしいの、ユウト様。」

「ええっと、シア?」

「はい、なんですの?」


「何か変わったところとかある?」

「ユウト様への愛だけですの。」


 ……別人じゃないだろうか?

 俺は困った様子でまわりを見ると一番最初に動いたのはユウちゃんだった。

「シア、ちょっとどうしたの?」

「あっ、ユウ。言っておくことがあるの。」


「うん?なに?」

「ユウト様はユウにも渡さないから!」

 今度は俺がぽかーんとして周りが騒ぎ始めた。


 そんな状況も気にせずにミーシア…シアは、

「ユウト様!これからデートしましょ!」

「理由を聞いてもいいかな…?」

 グイグイ来るようになって俺の戸惑いばかりが増えていく。


「ホウセンカを元に戻したいの!」

 こう言われたらトドメを刺した俺が断るわけにはいかないよね。



 というわけで最初の状況だ。

 うん、俺にも状況がわからん。


「なぁ、シア?」

「なんですの?」


「本当に昨日までのシアと一緒、なんだよな?」

「昨日までユウト様を信じていなかった私とは別人と思っても不思議ではないの。」

 距離感があったのは仕方ないがここまで懐かれるのも

 不思議な感覚だな。


 とりあえず、

「その様付けはやめない?」

 やっぱり様付けされるとむず痒い。

 それにレナさんも「私の時は…。」と少し呟いていたから少しこのままだと気まずい。


「…ユウトさん?」

「うーん…、今まで通りでいいから好きに呼んでいいよ。」

「それじゃあユウト様なの!」

「ええと、シア…?」

「好きに呼んでいいって言ったの。

 だったら私は私を守ってくれる王子様はそう呼びたいの!」

 自分の言葉を曲げない信念を持つようにそう呼ぶよう宣言する。


「わかった。好きに呼んでいいって言ったのは俺だからこれ以上は言わない。」

「ありがとうなの、ユウト様。」

 説得することは叶わなかったがおいおいしていけばいい。

 慣れるに先か説得が先になるかはわからないが…。



 デートすることになってシアはご機嫌だった。

 ただ周りがあまり見えていないのかちょくちょく人にぶつかりそうになっては俺が手を引いてぶつからないようにしている。

 その度に嬉しそうに笑っているがわざとやっているんじゃないだろうか?

 いや、きっとそれはない、うん。


 ただ何度も繰り返せば例え当たっていなくても文句をつけてくる輩はいるもので、

「おいおい嬢ちゃん、あぶねーじゃねーか?ああん?

 持ってるものが落ちてしまったんだがどうしようかね?」

 と威圧してくる二人組の片割れ。


 子供相手になんて大人気ない、そう思い俺が間に入ろうとしたらもう片割れが、

「お、おい!?バカっ!お前は誰に言ってるだ!

『狂乱の皇女』に逆らうと奪われたスキルで殺されるぞ!」

「コイツがそれなのか…?」

「あ、あぁ…背格好といい間違いない、殺される前にずらかるぞ!」

「す、すまね嬢ちゃん。ちょっとした冗談なんだ。」

 逃げるように人混みに消えていった。


 狂乱の皇女…?

 シアには悪いが狂乱の、は一回戦観ているから分からなくもない。

 だが皇女?たしかに姫様っぽい格好はしている。


 久々に着たってこと関係あるんだろうか?

 さすがに本人には聞けないよな…。

 だってさっきまで楽しそうにしてたのに今にも泣きそうな顔している。


「…シア、危ないから手を離したらダメだぞ?

 さ、ホウセンカを直しに行こう。直るといいね!」

 強引に話題を変えたのはシアもわかるだろう。

 だがそれでも手を握ったことで少しは落ち着いたようで「はいなの!」っと、少しだけ笑って武器工房へと俺たちは向かっていった。

思った以上に長くなってしまったので分割します。


次回土曜日17:30投稿、武闘大会編ラストの予定です。

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