魔力操作をおぼえよう
ギルドマスターに仕事(俺の魔力授業)を任せてヒロナさんは受付業務に、レナさんは久々の冒険者生活らしいので先に手続きを済ませるため一緒に部屋を出て行った。
「よし少年、魔力の扱いについてだったな。とはいってもな、この世界で育ってきたものは自然と覚えていくものだからこれといった方法がねーんだよな。
魔力もレナちゃんという例外以外は異世界人だろうと宿している。」
頭をポリポリ掻きながら悩んでいる様子だった。
「まずは魔力を感じることから始めようか。荒療治だがまずは俺が全力でお前さんに火魔術をぶつける。
そして運良く生き残れば晴れて魔力を感じることが出きる、かもな。」
うんう…ん?生き残れば??
魔力に関することだからちゃんと聞いてたつもりだった。それなのに聞き間違いかな?
「……もう一度聞いてもいいですか?」
「俺が全力でお前さんに火魔術ぶつけるから頑張って生き残ってくれ!」
サムズアップのいい笑顔で今度は全力を付け加えて言ってきた。
「いやいやいやいや、死にますって!」
いや…もしかしたらThe近接っぽい筋骨隆々なニコラさんなら全力魔術でも生き残れるレベルなんだろうか?
「ハッハッハッ、すまんな少年、俺の最高の魔術はこんな態だがギルドでもトップクラスだぞ?」
ふんっ!とボディービルのように筋肉をみせつけてくる。
どさくさに紛れて人の心を読み取ることは忘れないようだ。
「ハッハッハッ!じゃないですよ!そんなものを今日来たばかりの魔力の1も2もわからなない人にぶつけないでくださいよ!ヒロナさんに言いつけますよ!」
なんだろう、この世界の人たちはとりあえずツッコミ待ちをするんだろうか?
だがヒロナさんに言い付ける、はニコラさんには効果的だった。
「おい少年。絶対にヒロナちゃんにはいうんじゃねーぞ!」
と、いつの間に移動したのか、扉から部屋の外を覗いて震えていた。
俺もため息をつきつつ
「はぁ…異世界にきたウキウキ感を返してほしいんですが…真面目にやってくれるなら言いつけたりはしませんよ。
このままでは口が滑ってしまうかもしれませんけどね。」
「わかったわかった、マジメにやるからここだけにしとけよ?
異世界人はどいつもこいつも冗談が通じねーんだな、ったくよ。」
両手を逆ハの字にしてやれやれと言っている。このおっさんいつもこんなことやってるのか。
やれやれはこっちの気持ちだ。
「さて、マジメにやるとして魔術を受けるのは間違っちゃいねーんだよな。
今までもほとんどのやつらがそれで魔力操作を覚えた。
俺の火魔術、というのはちょっとした冗談だが、回復魔術を受けてもらう。」
なるほど、たしかにそれも魔術を受ける、になるのか。
それなら最初からそう言ってほしかったが、そこで疑問が生じた。そう、俺は一度回復魔術が発動した。
そのことについて聞いてみた。
「回復魔術が発動した、だと?二回目発動しなかった?異世界での回復呪文を唱えたら?ふむ……。」
さっきのおちゃらけな雰囲気はどこへやら、本気で考えてくれているようだった。
「可能性として…だが、お前さんのスキルの影響が大きいかもな?
他言はしないから話すがお前さん、スキル獲得数が異常なんだろ?
魔力操作は覚えていなかったらしいが獲得しているスキルのどれかがサポートした、としか言いようがないな。」
なるほど、そういうことなら考えられるのは智恵の女神様の加護、だよな?
ただ二回目発動しなかったのはなんでだろう?
「そりゃ、魔力切れだろ?しかも魔力操作を覚えていない状態なら過剰供給状態で魔術が一回目に発動した可能性もある。よく無事だったな。」
すごく恐ろしいことを言われた。あれか好奇心は猫を殺す、というやつだな。
うん、知らない間は行動は慎重に。情報は大事だと実感させられる出来事だった。
「何にしても他人の魔力の魔術をうけてみようか。この世界の人間は生まれてから一度はすぐに回復魔術を受ける。
それがきっかけで魔力操作を覚えると言われてるからな。」
そういって別の部屋に案内してくれた。
「ヘーティ、入るぞー。いつもの異世界人だ、回復魔術の頼む。」
そしてそこにはいかにも魔術師です!と言わんばかりのローブと魔女帽子を被ったキレイな女性がいた。
そして耳が少し長くてとがっている…おぉ…あれか、エルフ!
エルフがいる世界!異世界きてよかったと感動に浸っていた。
「あらぁ?アタシ、何もきいてないんですけど?まさかギルマス、また仕事サボったのかしら?」
「え?いやー?あれぇ?報告してた様な、してなかったような?
細かいことは気にするな!連れてきたからあと頼むな!」
「ええ、わかったわ、ただこの件はきっちりヒロナちゃんに言っておくから覚悟することね!」
能天気に笑ってたニコラさんの笑顔が一瞬で消えていった。
「はいはい、邪魔だから仕事しない人は出て行ってね。」
そう言って固まったままのニコラさんは追い出された。
「さっき聞いてた通り、アタシは今日くるのは知らなかったの。
もっとも準備なんてないから普段から仕事サボるギルマスにはお灸をすえただけどね。
さて、坊や。まずは椅子に座って自己紹介からはじめましょうか。
アタシの名前はヘーティ・シリィーよ。そうね、最近知ったけど、あなたたちはハイエルフって種族を言うと喜んでくれんでしょう?」
「まさかのエルフじゃなくてハイエルフ!おお、本当にエルフなんですね!
あ、俺の名前は悠斗柳です!進化したハイエルフにこんな早く会えるとはおもってもいませんでした!」
俺は感動した目でヘーティさんをみていた.
「あらあら、そんなに喜んでくれるならエルフっていうのも悪くないわね。
でも、異世界人ってかわってるわ。そんなに喜ぶのは言葉でのコミュニケーションが人同士でしかとれないからなのかしら?」
「どうなんでしょうか?空想上の存在相手だから、というのが大きいからではないでしょうか?
でもそうだとするとエルフだと区別をしてることは失礼なことですよね、申し訳ありません。」
「あらら?別に気にすることはないわよ?人は人、エルフはエルフだもの。
アタシが言いたいのはコミュニケーション方法が人以外でもあるかないかの違いよ。
坊やもこの世界で多くのこと知っていく。そのうちの一つに人以外とも言葉の壁が存在しないということを知っておけばいいわ。」
「自己紹介も終わったことだし魔術をかけてあげるわ。あなたはそうね、不思議な力を感じ取る努力でもしてなさい。」
そんな適当な、と思ったが確立された方法がない以上仕方ないのか。
無意識に目を閉じてヘーティさんが魔術をかけてくれるのを待っていると頭付近に暖かい空気が流れてきた。
自分で使った時とは違う、これが魔術を使ってもらう感覚なのか、と思っていたら頭の中で声が響いた
【エクストラスキル:魔力操作を獲得しました】
っていうかこの声なんだよ!…システムメッセージ、的な感じでいいのかな?やっぱり不思議な世界だ。
そう俺は、ビックリするくっらいあっさりと魔力操作を獲得できたのだった。
ネタ尽きるまでは毎日12時更新週7話予定です。
(仕事の都合で翌日分書けなかった場合などは週末調整予定)
気軽に読める文字数はこのくらいでいいのかな、と悩みながら翌日分書いてますので目にとめてくれるだけでもうれしいです。