2回戦第2試合
5/5まで一日1話予定です。
予定とは違ったけどそれでもレナさんが連れ出して欲しいって言わなければ、俺はユウちゃんに料理を勧めるために街に残るよう促してたしな。
なかなかユウちゃんが離れてくれなくて困っているがそれ以上に審判の人も困っている。
「あっ、ユウの負けでいいよ!」
陽気な感じで審判に申告してユウちゃんの戦意喪失により俺が決勝に上がることになった。
ただそんなことよりも思った以上に喜ばれたのは良かった。
試合も終わり俺たちはレナさん達がいる観客席に行くことにした。
その間もユウちゃんが手を繋いでブンブンと振って楽しそうにしているのを微笑ましく眺めていた。
そしてレナさん達のところに着くや否や千佳が、
「ロリコン。」
「ちっがーう!」
「あんたが否定したところで周りからみたらそれが現実なのよ。」
「…うっ。レナさん…。」
この状況になるきっかけを作ったレナさんに救いを求めようとしたが、
「ユウちゃんの味の方が好きだったなんて知りませんでした…。」
落ち込んでいらっしゃいます。
「そ、それは言葉の綾といいしますか…。」
「えへへーユウの方がお姉様よりいいんだよね!」
いつも助けられてたユウちゃんは火に油を注ぐ。
七海さんはというと、
「いろいろな女の子に手を出した報いだよー。」
と、助けてくれることはなさそうだ。
そしてもう一人、昨日までいなかった女の子はというと、
「ユウも、冒険に行っちゃうの?」
「うん!お兄ちゃん達についていくよ!」
元気そうなユウちゃんとは対照的に落ち込んでいくミーシア。
「ミーシア、ごめんね。でもそのこと踏まえて話ができないかな?」
「私も冒険に連れて行くってことなの?」
不安そうなミーシア。
斧聖術がないから今までとは別の戦い方になるだろうしすぐに答えを出せる内容じゃないのはわかっている。
「それも選択肢の一つだけど、ミーシアが一番やりたいことを選んで欲しい。
料理が作りたいっていうなら一度、レナさん達が修行してた場所にも送り届けるよ。」
「私からもお師匠様にお願いしておきますよ。」
「ユウからも!」
二人が賛同してくれたのは良かった。
「うん、わかったの。」
「あまり時間がなくてごめんけど、それでもゆっくり考えて欲しい。」
結局ミーシアの件は本人に任せることにした。
そしてそんな話も終わり、次の試合の準備も整ったようだ。
ステージの上に立つのは、勇者ヤスイ・シュージと相手を棄権に追い込むアサギリさん。
一体どんな試合になるのやら。
「ようやくぬしと話ができるできんす。」
「僕にようがあったということかい?」
「ええ、わっちの願いを聞いておくんなんし。
この世界に迷い込んだ子供達の幸せでありんす。
子供たちにはいろいろな世界を見せてあげたい。
だけどこの世界も言葉だけでは生きにくい。」
「たしかにこの世界は魔物がいる。
力がないものは簡単に死んでいくだろう。
だけど街にいるだけではダメなのかい?」
「言ったでありんしょう?世界を見せてあげたい。
そしてわっちは子供たちと一緒に世界で一番美しい言葉“ありがとう”で世界を満たしたい。」
子供たちがあのとき店主に「ありがとう」を言ったのはアサギリさんの教育の賜物だったのかな?
しかし他人を操れるような人が「ありがとう」で世界を満たしたいって考えているのは驚いたな。
その力にも限界があるってことだろうか?
「どうしてそれが僕と関係あるのかい?」
「世界の人々から愛されるぬしと一緒に広めればきっと世界に広まる。
わっちの目的も達成できるでありんす。」
「くだらない。」
理想論なのはたしかだけど一蹴するとは思わなかった。
自分を駒みたいに扱われるのを嫌ったのだろうか?
そう思ったのが、
「君の考えは理解できる。
だけど僕が協力したところで根付くことはない。
それは一時的な流行り廃りとしてすぐになくなる。」
勇者は違う考えで否定したようだ。
「そんなこと言いなんすな!
“ありがとう”で世界が満たされたらきっとぬしも戦わずに済むでありんす。」
「それは人を襲う言葉すら理解できない魔物相手に通用すると思うのかい?」
「それでも魔王相手なら、きっと言葉が通じるはずでありんす!」
「魔王は破壊を齎すもの。通じたところでそれは変わらないよ。」
「だからわっちがいる!わっちの言葉を届ければ魔王もわっちに付くでありんす!」
「前の戦いで君が見せた力のことかい?
あれは僕には通じない。魔王にもね。
やってみるといい。君は自分の力を過信しすぎている。」
勇者は何をしたのか理解してたのか。
さすがというべきか…。
「わっちは前の世界では無力でありんした。
わっちがどんなに言葉を尽くしても、相手に伝わっていなければ心の琴線に触れることなんてできんせん。
でありんすからわっちは願ったぇ。言葉にこそ力を、と。
あの子達を守れるのはなにも武器を手に取ることだけじゃありんせん !
“ぬしにはわっちの夢のために一緒に来てくんなんし!”」
「……言った通りだよ。僕には通じない。」
「どう、して…効かないの?」
驚いているアサギリさんからわかるが何かをしたのだろう。
言葉にこそ力、といっていたから会話の流れ的に勇者を仲間にしようとしたがそれが失敗したってことか。
ただ1回戦のように勇者が冷静な状態のままでも使ったということは発動条件は難しくないが、効かない人もいるということ?
「僕には僕の強い意思がある。
それを崩さない限り、僕は君に従うことはないよ。」
「それなら防げないようにしてもう一回言うでありんす!」
そこでようやく審判が開始の合図をする。
ずっと待っていたのだろう。
「わっちの力は何も従わせるだけではありんせん!」
そう言って手のひらを勇者に突きつけて火炎魔術?を発動させる。
「“炎天”」
そう呟いて瞬間、手のひら大だった炎が膨れ上がり勇者に向かって放った。
「タイプ:ナナ。」
勇者はプロテアの武器を剣へと変化させて簡単に炎を斬ってしまう。
ユウちゃんといい炎を斬るってどう言うことしたらできるだろうか?
「くっ…これなら!“時雨”」
今度は水冷魔術?を発動させ、呟いた途端に針のように変化し勇者を襲う。
「タイプ:アイビー」
本当に便利な武器で今度は一瞬で弓へと変化させ、一本一本の水針を撃ち落としていく。
「どうして!どうしてきかないの!?」
「下位魔術にユニークスキルを込めたところで僕には通じない。たしかに君の言葉に力は強い。
だけど君自身が戦うことに向いていない。」
魔術に対して違和感はやっぱり火炎魔術や水冷魔術ではなく火魔術や水魔術だったのか。
それに戦い慣れていないのも予想通りだったようだ。
「子供たちがいきていくためにもわっちにはぬしの力が必要でありんす…。」
すがりつくように勇者を見つめるアサギリさん。
「僕は君についてくことはできない。
僕には僕の使命がある。だけど君の理想は応援するよ。
少しずつ種を蒔いていけばいずれ根付き世界に広がる。
“勇者”に頼らない方が君の理想とする世界になるだろう。
世界を旅するにしても安全な道はあるし優秀な冒険者たちもいる。
君もこの世界を知るべきだよ。」
「わっちは間違っていない?」
「あぁ、君の理想とする世界を僕も見てみたいよ。」
最後は諭すようにアサギリさんに話しかけている。
1回戦のウルドさんの時もそうだったが相手へのフォローもしているんだよな。
ああいうところが人々から慕われる理由なのだろうか?
派手さはなかった試合だが当人たち、特にアサギリさんの方は納得したように負けを認めた。
その結果、決勝の組み合わせは俺と勇者になってしまったが正直勝てる算段が思いつかない。
明日は休みになっているしみんなの意見を考えを聞きながらゆっくり過ごそう。




