2回戦その2
5/5まで一日1話予定です。
まさか双剣になるとは完全に想定外だ。
今までだって一本の剣で修行をつけてもらっていたからこそ、経験則でなんとか戦える状況だった。
その結果が単純に言えば剣が二本になっただけでは済まされない猛攻が続くことになる。
一撃一撃は片手で持つから軽くなったが、その分手数が倍以上に増え防戦を余儀なくされる。
「ほらほらーお兄ちゃん、動き鈍くなってるよ!」
「いやいや、ユウちゃんの動きが良くなりすぎてるんだって。」
双剣になったことで今まで見たことない姿を見れて少し嬉しい反面、ただただ状況は悪化するだけ。
そもそも剣聖術もユウちゃんから教えてもらったから相手に手札を公開しているようなもの。
やっぱり秘密兵器は秘密にしているからこそ、だよね。
だから俺も覚悟を決めて戦おう。
まだまだレナさんのようには戦えないけど、それでもいろいろな武器を使ってそれを取り入れていけば戦えるはず。
もともとは可能性を広げるために、とレナさんが教えてくれた。
レナさんもユウちゃんと戦うことを想定していたのだろうか?
俺は距離を置いて武器をしまう。
「あれ?諦めちゃったの?」
不思議そうに聞いてくる。
「ふぅー、ユウちゃん、奥の手を用意してるのはユウちゃんだけじゃないよ?」
「どーゆーこと?」
俺は少しだけは刃こぼれした刃先1mはある短剣を2本取り出す。
これを用意してくれたパトが言うには希少武器になれなかったレリック品らしい。
短剣について心当たりがないか聞きに行ったら何故かこれが既に準備されてあり、パトの情報収集能力に畏怖を覚えたのは言うまでもないよね。
「何その剣?」
「対ユウちゃん用の秘密兵器ってところかな?」
そう言って俺はそれを逆手にもってどういう使い道かわかるように示した。
「その構えはお姉様の…!」
驚いているからすぐにわかったようだ。
構えだけが一緒だからすぐに気づいたのだろう。
双短剣術。
俺自身はレナさんが扱う武器だから、と遠慮していたところもあった。
だけどどうしても、と剣術と魔術の修行終わり後に今度はレナさんと修行して短剣の使い方を覚えていた。
レナさんの動きを真似するというよりかは、主に剣術の動きを取り入れることで扱えるようになり、実際は完全にレナさんとは別物の動きとなっている。
「ちっちっちーちょっと違うんだよなー。」
俺もさっきの意趣返しのように訂正しようとしたら、
「それもそうだよね、お姉様みたいにやってもお兄ちゃんじゃ全然綺麗だとは思わなそう。」
「ちょっと酷くない!?」
「ははは、本当のことだから仕方ないよ。
でも…、そんな付け焼刃で勝てるほどユウは甘くないよ?」
「わかってるよ。想定していたのは剣聖術だし双剣相手に戦うのは予定外だった。
でも俺は負けられないんだよ。」
そう勝つ必要はない。
レナさんのお願いのためにも負けさえしなければいい。
だから俺も今できる手札をきる。
まずは水冷魔術で剣を水で覆い、剣を含めユニークスキル<反転者>で性質を反転させる。
刃こぼれした脆い双短剣と水冷魔術で相当な硬さになっている。
そこに1回戦とは違うユニークスキル<犠牲者>の使い方、攻撃力を最大限に防御力に変換する。
これで硬さだけなら相当なものになることはわかっている。
万が一強い敵がいた場合、レナさんや千佳、七海さんを逃がせる時間を作るために硬さ重視で用意した策。
あとはこの硬さだけを活かしてユウちゃのあの武器を…。
「お兄ちゃん、準備は終わった??」
「俺の準備を待っていたの?」
「待たない方が良さそうだったけど、お兄ちゃんならいいかなって。」
「どんな手を使っても勝てる自信があるからってこと?」
「そうじゃないよ。んとね、お兄ちゃんならユウの事受け止めてくれるってそう思っただけだよ。」
誤解しそうな言い方をしてくるが、おそらく最高の斬れ味を持つあの二つの剣を使う機会があまりなかったんだろう。
「もちろん、ユウちゃんのことならなんでも受け止めるよ。」
俺は少しだけ笑って答える。
「ほんとに?」
少しだけ照れて聞き直してくる。
「当たり前だよ。何を今更いってるの?」
「えへへ、今更かー。よーし、ユウは負けられないから全開だよー!」
準備が終わった途端斬りかかってくる。
って今まで全開じゃなかったのか!?
ただこっちも手数が倍になったお陰でなんとか凌げるようになった。
とは言っても攻撃力を犠牲にした硬いだけだからユウちゃんに勝てることはなくなったんだけどね
。
それでも負けないために俺は隙を作るために短剣を振るう。
そして訪れたシオンを弾き片手に持つ名も無き剣しかない好機。
俺は残りの魔力を使い速さ重視の双短剣の攻撃を名も無き剣に当てる。
ユウちゃんも剣を両手に持ち直し、応戦する。
「いっけーーーー!」
俺の硬さだけの一撃は、ユウちゃんの名も無き剣を折るには十分だった。
状況を理解するまでに間があったユウちゃんだったが、
「ユウの剣が…、折れ、ちゃった…。」
膝をガクッと落として剣を見つめている。
完全に戦意が喪失してる感じだ。
ユウちゃんがあの剣をだしてからこれを目的に戦ったが、果たしてこれが正解だったかわからない。
でも、
「ごめん、ユウちゃん。でも思ったんだ。
俺は過去に囚われたまま生きて欲しくないんだ。」
「ユウはそんなことない!もうあの時の魔物たちはユウがちゃんと!」
「うん、でもきっとその剣を見るたびに思い出すとおもう。」
「それはみんなを忘れないために…。」
「わかってるよ。でもユウちゃんにはこれからをたくさん見てほしいんだ。」
「これから?」
「覚えているかな?一緒に冒険しないかって誘ったの。」
「もちろん覚えているよ。
だってユウは今日お兄ちゃんに勝って、お兄ちゃんはユウが守ってあげるからついて行くって言おうとしたけど…、負け、ちゃった…。」
「……うん?」
…………あれ?
レナさんの予想では街に残る方向だからとお願いされたが、もしかしてついてきてくれる予定だったのかな?
「弱いユウはお兄ちゃんには必要、ないよね…。
料理ではお姉様に勝てないし、お兄ちゃんに勝てないならユウは…。」
完全に思った方向と違うし、一緒に行く気があったのなら話が早い。
「俺ね、男なんだ。」
「知ってるよ?」
キョトンとするユウちゃんに話を続ける。
「レナさんの料理は本当に美味しいと思う。」
「それも知ってるよ?」
「でもね、個人的にはユウちゃんの濃い味付けも好きなんだよ。
そりゃ女性陣は遠慮がちになるかもだけど俺は男で気にしないしユウちゃんの作ってくれた料理を食べたいんだ。
だからさ、一緒に冒険して修行の時みたいにまたお弁当作ってくれたりしてくれないかな?」
一瞬何を言っているのかわからなかったのか目をパチパチさせていたが、
「一緒に冒険していいってこと?」
「もちろんだよ。」
「お姉様とお兄ちゃんの近くにいていいってこと?」
「もちろんだよ。」
「これからもいっぱいいっぱいお兄ちゃんにご飯作っていいってこと?」
「むしろ俺からお願いしたいくらいだよ!」
「本当にホント!?」
「ああ、もちろんだよ!」
そう言った途端にばさっと抱きついてきて、
「ユウ一緒にいく!絶対絶対一緒に行くから!」
こうして想定していた状況とは違ったがレナさんのお願いであるユウちゃんを連れ出すことができた。




