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本戦2回戦

5/5まで一日1話予定です。

 

 ユウちゃんとの試合当日。

 俺たちは普段通り朝食を食べている。

 いや、若干違うところがあるとすればミーシアがいることだろう。


 だがそれ以外は本当にいつも通り。

 ユウちゃんのおかげもギスギスした空気はなく、俺も変に気負わなくて良かった。


 それでも試合開始となれば嫌でも向き合うことになる。

 だから今は「普通」の時間を満喫していた。



 そんな朝も終わり会場へと移動した俺たちはようやくその時がやってきた。

 ステージの上で向かい合う二人。


「お兄ちゃん、今日は負けないからね!」

「俺だって負けられないんだよ?」

 正直なところ実力差は明白。

 俺の命を気にしなかったら開幕に全力蒼炎であっさり負ける。


 死なせないというルールもあるしそれをしない確証があるからこそ、唯一勝てる可能性があるとすればユウちゃんの手の内を知っている、ということだろう。


 それは相手にも言えることだが、今は本気の剣聖術を警戒すべきだ。

 そもそもあの剣、儀礼剣シオンで戦ったことがない。

 脆いはずのその剣は性質の反転により今や斧すら真っ二つにする凶悪な剣となっている。


 審判の開始合図とともに俺は斬りかかる。

 対策が通じなければ俺の負け。

 だから初手から手札を切る。


 剣同士がぶつかり合う瞬間、俺は剣を覆うように水冷魔術とユニークスキル<反転者>を発動させる。

 ついでにユニークスキル<犠牲者>の発動。

 そして剣がぶつかり合い、儀礼剣シオンを弾き返すことに成功した。


「かったーい!なにそれ!すっごい硬いよ!」

「対ユウちゃん用の奥の手だよ。」

「むぅー!」

 ユウちゃんはむくれているような顔をしたがすぐに笑顔になった。


 俺は対策が通じて少しだけホッとしている。

 というのもこの対策を考えてくれたのはへーティさんだ。


 水冷魔術とユニークスキル<反転者>の組み合わせはクセが強すぎる。

 液体としての性質を反転させることでさっきのように液体がその場に固定されるか、霧散するかになってしまう。


 魔力の込めかたの違いで発動結果が変わってしまうので使い勝手が悪いのが現実。

 まぁその辺りはおそらく智慧の女神の加護さんがある程度制御してくれているんだろうけど。


 ユウちゃんもまさか儀礼剣シオンで斬れないとは思っていなかったのか少し距離をとり、例の秘密兵器蒼炎の地雷を出している。


「これならどうだー!」

「それも、対策済みだよ!」

 今度は水冷魔術で水を霧散させる。

 前は俺も蒼炎で無理矢理防いでいたが内容を知っているからこその低燃費での対応策。

 魔力感知で反応するその地雷は霧散させた水冷魔術に反応して次々と氷柱のように発動していく。


 霧散させること自体はユニークスキルを使わずともできる。

 ユニークスキル込みで使う場合はさっきのように流れるという性質の液体をその場に固定させる、に反転させることの方が使い道の方が主流になるだろう。

 無駄に魔力を使って霧散させても使い道があるかどうかわからないしね。


「むぅー!!」

 今度は本当にむくれているようだ。

 しかしその子供っぽいとこも可愛らし…って今は戦いに集中だ。


「仕方ない、次はこっちから行くよ!」

 ユウちゃんの剣撃は修行の時感じたそれとはまるで違う重さがあった。

 暴風魔術で応戦しようにも一度見せているからかユウちゃんもしっかり対応策を考えてきたようだ。


 まともに戦えるのはユウちゃんの動きを知ってなお、先読みで対応できているからこそ。

 このままではジリ貧でいつか決定打をくらいかねない。


 何か手はないかと思った時に思い出したのはニコラさんの鎚聖術。

 持ち手のところで相手の持ち手のところに当てるその斬りかかる前に防ぐ変則的なガードはユウちゃん相手にはまだ試したことない。


 俺は動きを見ながら最善のタイミングで飛びつきそして斬りかかる前の攻撃を防ぎ、そしてユウちゃんをはじきかえす。


 バランスを崩したユウちゃんに向かって最速の攻撃をする。

(…これで決まるっ!)

 そう思った瞬間、

「出てきて」

 ユウちゃんの口からそう聞こえた。


 そして目の前に出てくるのはもう一本の、剣?

 見た目はボロボロで使い物にもならないような…いや、ユニークスキルの影響で使えるようになるのか。


 だが今は俺も戸惑ってはいられない。

 そのままその剣ごと弾き飛ば…せなかった。

 甲高い音ともに俺の一撃は防がれてしまった。


 1回戦のように犠牲者を最大限に使っていれば勝てる可能性はあったかもしれないが、今は目の前状況を整理しよう。


「双剣使いなんてきいてないよユウちゃん。」

 内心焦りつつも平静を装いユウちゃんに聞いてみる。


「ちっちっちー。秘密兵器というのは秘密にしてるからこそなんだよ。

 まさかお兄ちゃん相手に使うことになるとは思わなかったけどね。」


「光栄だよ。でもそれがユウちゃんの負けない自信になっていると言っていいのかな?」

「そうだよ、ユウにとっての始まりの剣。

 シオンと違って名もなければ誰が作ったのかもわからないそんな剣だけど、それでもこれを見るたび、これがあるからこそユウはあの時の光景を忘れずに強くいられるよ。」


 ユニークスキルを獲得するに至った剣、か。

 思い出のこもった武器。

 あの剣の見た目通りに簡単に折れるほどヤワじゃないのは確かだけど、どうしたものか…。


一戦1話の予定でしたがユウちゃんの双剣はずっっと書きたかったので…。

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