レナさんとユウちゃんとミーシアと
軽い自己紹介も終わったが気になるのは俺が物凄く警戒されていたことだ。
ユウちゃんが「お兄ちゃんは大丈夫だよ。」と言ってくれたおかげでなんとか目を合わせてくれたが、あのままでは何もできなかった。
ミーシアを襲ったっていうやつらは男、だったのだろう。
確かに表情が柔らかくなったミーシアは可愛い。
だからといって小さな女の子を襲う理由にはならない。
今はミーシアの傷が深くならないよう慎重に接しよう。
そんなミーシアは今はユウちゃんと一緒にレナさんの後ろで料理を作っているのを眺めている。
見た目的にはまさに親子と言った感じだ。
いろいろ聞きたそうにしているミーシアだが、レナさんが気を回して話している。
「お姉様はすごいの!」
「ね?言った通りでしょ?」
と姉妹さえ見る微笑ましい状況にほっこりしていた。
レナさんが料理を作り終わり一緒に食べることになったが、お祝いという形の今回にミーシアは大丈夫なのだろうか?
あまり深く気にし過ぎると余計に警戒されてしまいそうだし今は目の前の料理を楽しもう。
ただ楽しい食事中でも気になったことを後回しにしたくない空気読めない人が一人…。
「そういえばミーシアのスキルの効果でユウラシアちゃんに一つスキルが渡されたんだよね?何を渡されたの?」
その言葉を聞いた途端にスプーンの動きを止めて俯いてしまう。
本当に申し訳なくなるからもう少し空気よんで欲しいんだよね。
「千佳、こういう状況でそれを聞くか?」
「ちょっと気になっただけだから、ね。
ミーシアも空気読まずに聞いてごめんね。」
「ううん、いいの。確認してないから確証はないけどユウに渡ったのは斧聖術。
あの時ホウセンカが急に重くなったから間違いないの。
私が最初に奪った斧術スキルが成長したスキルなの…。」
どう声をかけたらいいのか迷ってしまう。
ずっと使い続けた思い出のスキルなのか。
それともミーシアが歪むことになった、始まりの恐怖の象徴なのか。
「そっか。変なこと聞いてごめんね。
もう一個空気読まずに聞くけど、それってユウラシアちゃんからまた簒奪できたりするの?」
「千佳っ!!」
これには俺も怒鳴ってしまった。
ユニークスキル<簒奪者>の発動条件は死に直結するような攻撃を受けること。
つまり今度は故意にユウちゃんがミーシアにそういった攻撃をしないといけないってことだ。
ミーシアに死の恐怖を思い出させるのは、と感情的になってしまった。
「ごめんって。でもこの子も…。」
少しだけユウちゃんの方みて口ごもってしまう。
何か思うことがあったから聞いたってことだろうか?
ただユウちゃんの前では言えないこと?
「ううん、いいの。でもごめんなさいなの。
同じ相手に2回以上使ったことないから使えるのかどうかもわからないの。」
「本当にごめんね。ミーシアがこれから冒険者続けるならって。」
「ううん、私はユウと一緒にいるの。
それにお姉様も一緒がいいの。」
ああ、なるほど。
千佳が言いたかったのはユウちゃんを連れ出すならミーシアも一緒についていく可能性があるってことか。
ミーシアのこの言葉で理解できた。
「お姉様は冒険者生活するからまちにいないよ?」
「え?そうなの?」
不安そうにレナさんを見る表情は離れ離れになるの寂しがる子供そのものだった。
「シアちゃん。私も悠斗さんや他の方たちと世界を見て回りたいのです。
だから街に残る、ということはないのです。ごめんなさい。」
「そっか。ううん、こっちこそごめんなさいなの。
一緒に居られると勝手に思っていただけなの…。」
ますます落ち込んでしまった。
ユウちゃんを誘ってしまったらミーシアはまた一人に?
ミーシアも誘うなら使い慣れた斧を使えるようにするのは理解できる。
だからと言ってもう一度、今度はできるかもわからない曖昧な可能性にかけて死の恐怖を味あわせる?
そんなことだけはさせたくない。
それならユウちゃんは誘わずミーシアと街に残ってもらうのか?
それはレナさんのワガママという名のお願いを反故にはしたくない。
何が最善なのか、分からなくなってしまった。
ただ言えるのは明日は負けられないということ。
「ユウちゃん、明日は負けないからね。」
急に俺がいきなり話題を変えてしまったから全員が俺を向いている。
「急にどうしたのよあんた。」
「俺にだっていろいろ考えた結果、明日のユウちゃんの試合勝つぞ!ってなったんだよ!」
「ボロボロになって負けそうだけどね。
今日だって七海さんがいなければどうなっていたことやら。
もう少し考えを持って行動しなさい!」
「本当に七海さんには看護されっぱなしで…。」
「また悠斗君の看護ができたから少し昔を思い出して嬉しかったわ。」
「そう言っていただけて何よりです。」
これからも七海さんに頼って行くのだろうな。
「ユウもお姉様前で負けられないよ!」
「私もユウを応援するの!」
「それじゃあたしはユウラシアちゃんに賭けるわ!」
「ふふっ、私もユウラシアちゃんかな。」
「私はお二人が無事であればそれで…。」
「俺だけの味方がいないよ!?」
みんなで笑いあって暗い空気になりかけてた食卓に、少し明るさが戻った。
やっぱりご飯は楽しく食べたいよね。
こうしてミーシア参加の楽しい食事をすることができ、ユウちゃんとの試合の日を迎えることになった。