第4試合・その2
GW1日1話投稿予定です。
アサギリさんとは違う、今度は本当にどこから攻撃したかさえ見えなかった一撃。
一番戸惑っているのはウルドさんだろう。
「いやはや、50年程弓を扱い続けてきたが今の一発は見えなかったですぞ。」
すぐさま躱せるであろう位置まで下がって弓を構え直す。
「何もすべて叩き落とすだけしていたわけではないよ。」
「ふむ…、どこかに隠しておったのかの?」
「ネタバラシはしない。今度はこっちから行くよ。
まず君は左足を下げる。」
何の話かと思ったら慌てた様子でウルドさんが左足を引いた。
その瞬間ウルドさんの左足があった場所に矢が突き刺さり、地面を穿っていた。
「どこから…、いや角度的には上からかの。」
上を見上げるがそれらしきものはなにもない。
それに攻撃を仕掛けたはずの勇者は追い込まれたように見えた位置から微動だにしていない。
そして始まったのは攻撃を必死に避けるウルドさんと、何もしていないように見える勇者の一方的な試合となった。
少しずつ掠っていき、焦りを覚えはじめる。
矢を撃とうと構えるがそれを封じるように矢が飛んでくる。
だがその見えない攻撃もウルドさんは耐えきった。
「今回は弾切れか。まさかここまで避けられるとは思わなかったよ。」
「ははは、何をおっしゃいますか。
貴公の矢は魔術であろう?
矢が切れたわけではあるまい?」
「あぁそうだね。さっきの攻撃は事前に準備していただけさ。
その準備していたものが無くなったに過ぎないよ。」
「なるほどの。要するに儂の攻撃を撃ち落としている間に儂の行動を先読みして攻撃を仕込んでおったのか。」
「正解だよ。もっとも君に避けられて無駄に終わってしまったけどね。」
「何をおっしゃいますか、あと数発でも仕込んでいれば終わっておっただろうに。」
ギリギリで避け続けていたがそれでも傷は少なくない。
満身創痍とまでは行かずとも力の差をかんじるには十分だった。
だが追い詰められたウルドさんはうれしそうに笑っている。
「やはり貴公は大したお方だ。
弓の不遇さのためにこの大会に出場したが、その無限の可能性に皆も気づくであろう。
この戦いで弓を使っていただき感謝する。
儂の目的は果たされたが勝負の結果は別。
そして聞きたいのじゃが貴公は50年という歳月で衰えるどころかさらに腕を上げておる。
なぜそこまで高みへといけるんじゃ?」
「君が見たと言う僕はいつの僕かはわからないが、少なくとも弱くなることはあり得ないよ。
僕は強くあり続けると決めたのだから。」
「勇者殿を支えるだけの何かがある、と。
覚悟していたつもりだったがまだ足りぬか。
仕方あるまい。勇者殿よ、我が弓人生の極地、ご覧ください!」
ウルドさんの猛攻が始まった。
矢を数発放ち勇者の行動を制限したのち、再度矢を空に向かって放つ。
その矢はある程度の高さになった途端、軌道を変え分裂するように何本の矢になり勇者に向かっていった。
矢の雨が勇者を襲う。
さすがに全部は撃ち落とせないのか自分に当たりそうなところだけ防いでる。
そして地面に着弾と同時にステージは崩壊。
砂埃で勇者がいた位置は何も見えないが、ウルドさんは追撃するように接近する。
弓で接近してなにをするつもりかと思った瞬間、キーンという金属同士がぶつかり合った音がし、衝撃の強さを物語るかのように衝撃波で砂埃が吹き飛ぶ。
金属音の正体は弓同士のぶつかり合いだったようだ。
互いの弓の一部は接近戦ができるようになっていて、ウルドさんは踊るように弓で攻撃していく。
勇者もそれに対応するかのように弓で攻撃している。
プロテアなら他の武器に変えることもできるだろうが律儀に弓で戦うあたりは勇者のプライドか。
ウルドさんも戦い慣れているのか勇者の弓による攻撃を距離をとって交わしたと思ったら矢を放ち中距離でたたかっている。
弓師が剣で接近戦をするのとはまた違う、弓は遠距離で戦うものという常識を本当の意味で壊してくれる。
だがそんな猛攻も勇者の1射で決着がつくことになる。
ウルドさんが距離を取った瞬間、勇者が素早く矢を放つ。
かわし切れなかっと思ったのか弓の接近戦で戦っていた部分で弾き返そうとしたが、勇者の一撃の勢いを殺せずそのまま場外まで飛ばされてしまった。
こうしてせまい闘技場での弓による戦いは勇者に勝利によって決着することになった。
接近戦で戦っていた弓の部分の名称は姫反というそうです。
内容として書こうと思いましたが、悠斗くん知らないだろうし敢えて書きませんでした。
あと話を進めたい、ということもあり戦闘シーンはかなり手を抜くかもしれません。
目標1戦1話以内です。
最終話迎えられたら加筆という形でいずれ調整するかもです。
といっても最終話までのシナリオは出来上がっている以上、当分先なのが確定していて、そのころからまた読み返す方がいらっしゃるかは不明ではありますが…。