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ひなげしの花咲く丘で  作者: yuuHi
第八部 ~永久の誓いは、ひなげしの花咲く丘で~
496/513

59






 珍しく晴れ間がのぞいた、穏やかな昼下がり。

 騎士館へ続く庭園の通路の片隅、通りすぎる人たちの視線を時折集めながら、大きな雪の玉を丸めている二人がいた。


「まだ小さいかな、コンスタン」

「それくらいでいいと思う」

「じゃあ、乗っけるよ」


 雪の玉を持ち上げようとするカミーユを、コンスタンが慌てて止める。


「ちょっと待って。こっちをもう少し大きくしてからにしよう。カミーユも手伝ってくれ」

「そっか、そうしよう」


 二人は胴体部分に雪を足してから、頭部を乗せ、さらに雪をかきわけて見つけた木の枝のうち、短いものを目と鼻、長いものを腕としてくっつける。

 近くを通った者は、完成した雪だるまに笑いをもらしていた。


 カミーユがつぶやく。


「この顔、へんじゃない?」

「どこが?」

「いや、なんか、目とか、鼻とか」


 顎に手をあて、コンスタンは雪だるまを見つめた。横一直線の目は、なんだかやる気がなさそうにも、眠たそうにも見える。


「たしかに……枝で顔を作ったのがいけなかったのだろうか」

「木の実とかどう?」

「どこにあるんだ?」

「雪の下、探してみようよ」


 かくして、二人はそばにあった樫の木の根元の雪を掘りはじめる。従騎士二人の行動は、やはり周囲の微笑を誘っていた。


 雪の下を探していると、コンスタンが不意につぶやく。


「そういえば、あのときの天使はどうなったのかな?」


 デュノア邸での出来事を思いだして、カミーユはどきりとした。


「真っ白な雪を見ていると、あの天使のことを思い出す。あのあと、大丈夫だっただろうか」


 そう言うコンスタンは、本気で心配する様子だ。

 新年祭の折、騎士館で養生していたアベルが窓から逃げ出そうとしたところを、コンスタンは目撃していた。そのアベルを、コンスタンは未だに天使だと勘違い――いや、思いこんでいるのだ。


「元気にやっていると思うよ」


 まるで知り合いのように――いや、実際に知っているのだが、普通に言うカミーユにコンスタンは不思議そうな顔をする。


「なんでそう思うんだ?」

「天使だから」


 答えながら、カミーユの脳裏に、なぜかリオネルの顔が思い浮かんだ。


「……天使なら、きっと神様が助けてくれるだろ」


 少し考えてから、コンスタンは納得した様子でうなずく。


「そうだな。また会えるかな」

「きっとね……あ、ドングリ見つけた」

「え! 本当?」


 ほら、とカミーユは手のひらにドングリを乗せてみせる。


「わっ、すごい。本当だ。あるもんだな」

「あと一個探さなくちゃ」

「もうひとつは、おれが探す」

「おれも探すよ」

「じゃあ、競争だ」


 子犬のように雪をかきわけはじめた二人のそばで、そのとき鈍い雪の音がした。

 振り返ったカミーユとコンスタンが目にしたのは、無残に倒され、潰された雪だるま。

 通路を歩いていたのはジェルヴェーズとその近衛兵らだった。


「じゃまだ、どけ」


 まだ残っていた目と鼻の残っていた雪だるまの顔を、ジェルヴェーズは踏み潰す。雪だるまの顔が、ぐしゃりとへこんで散らばった。

 恐怖よりも怒りのほうが先に立つ。

 なんとか感情を押さえるのに、カミーユは必死だった。


「なにを睨んでいる?」


 ジェルヴェーズは見るからに機嫌が悪い。


「この国の者なら、私に頭を下げろ!」


 怒鳴る声が庭園に響き、晴れた雪の庭園を散策していた貴族らが足を止めた。けれどだれもがジェルヴェーズの怒りを恐れて、こちらへ近づこうとはしない。


 カミーユはコンスタンと共にゆっくりと頭を下げた。煙突掃除夫に扮した姉に暴力を振るい、瀕死の状態にさせたこの男に頭を下げるのは、カミーユにとって言葉にならぬほど悔しいことだった。


「さっさと、下げろ!」


 ジェルヴェーズがカミーユの肩を蹴りつける。


「カミーユ!」


 雪のなかに転げたカミーユにコンスタンが駆け寄った。けれどカミーユはコンスタンを見返すことなく、ジェルヴェーズを睨み上げる。

 シャンティが振るわれた暴力を思えば、こんなものはなんでもない。思い返すほどにジェルヴェーズが憎かった。


 雪まみれのカミーユを見下ろして、ジェルヴェーズが薄く笑う。


「カミーユ・デュノアか、そうか、おまえはフィデールの生意気な従兄弟だったな」

「ここでフィデール様は関係ありません」

「ああ、そうだろうな。たかが伯爵家の分際で」


 そう言いながら、ジェルヴェーズは硬い長靴でカミーユの肩を再び蹴りつける。カミーユは後方へ倒れ込んだ。

 さらにカミーユに近づこうとするジェルヴェーズのまえに、コンスタンが慌てて飛び出す。


「待ってください!」


 コンスタンへ視線をやってジェルヴェーズは目を細めた。


「だれだ」

「ロルム公爵家の嫡男、コンスタンです」

「王弟派か」


 低くつぶやくと、ジェルヴェーズはコンスタンの胸倉を掴み上げた。


「従騎士か? 剣の腕を磨いて、現王家に刃向かう算段をしているのだろう。シャルムの裏切り者が」


 次の瞬間には、コンスタンはジェルヴェーズに拳で殴りつけられている。

 カミーユはジェルヴェーズに掴みかかった。


「やめてください! コンスタンがなにをしたっていうんですか!」

「なにをしたか、だと?」


 ジェルヴェーズがコンスタンを雪のうえに乱暴に放り投げると、今度はカミーユの胸倉を掴む。


「思い知らせてやる」


 カミーユは歯を食いしばった。

 これからどんな目に遭わされるかわからないというのに、妙に冷静な自分がいて、ふと思い至る。

 はじめて、姉と似ていると自覚した。

 大人しく従っていればいいのに、黙っていられない。いざというときに要領が悪いのはシャンティとまったく同じだ。


 痛みを覚悟したとき、声が上がった。


「お待ちください、殿下!」


 聞き覚えのある声。

 視線を向けた先にあったのは、正騎士隊隊長シュザンと副隊長のシメオンの姿だった。


 ジェルヴェーズのまえで膝を下り、冷たい雪にひざまずいたシュザンは、深々と頭を垂れた。その背後で、同じようにシメオンが頭を下げている。


「どうかこの者たちの無礼をお許しください」

「なぜおれが、おまえの言うことを聞かなければならない」

「この者たちはまだ子供です。それに、コンスタン・ロルム殿は私の従騎士でもあります」


 カミーユを捕らえたまま、ふんとジェルヴェーズは鼻で笑った。


「だから? おまえが代わりに殴られるとでも?」

「それで殿下がご納得されるのであれば」


 シメオンがはっとしてシュザンの背中を見やった瞬間には、ジェルヴェーズはカミーユの身体を解放し、ひざまずくシュザンの顔面を横から蹴りつけていた。

 痛みは相当のものだったはずだ。

 血が散り、顔を押さえてシュザンは雪に伏せる。が、ジェルヴェーズはそのシュザンの髪を掴み上げ、身体を引き起こさせると、さらに腹部へ蹴りを加えた。


「殿下! おやめ下さい、殿下ッ」


 止めに入ろうとするシメオンの声も聞かず、ジェルヴェーズは繰り返しシュザンを蹴りつける。


 抵抗しないシュザンの口元からは、顔面を殴られたときのものか、あるいは腹部を蹴られたせいか、血がしたたっている。


 我に返ったカミーユはジェルヴェーズにしがみついた。


「やめろ、シュザン様に手を出すな! おれを殺すなら殺せばいい! おれは、あんたにだけは絶対に屈しないからな!」

「離れろ、薄汚い下衆が! 王弟派に寝返った犬が!」


 シュザンへ向けていた怒りの矛先が再びカミーユへ向かう。しがみついていたカミーユは、引きはがされると同時に拳が振り上げられて、強い痛みを頬に感じる。

 気がついたときには血の味と共に雪のうえに伏していた。


 純白の雪のうえに、血が散る。

 惨憺たる現場に響いたのは、落ち着いた声音だった。


「殿下、どうなさいましたか」


 痛みで顔を上げられなかったが、カミーユにはすぐにわかった。

 伯父であるブレーズ公爵だ。


 気配が近づき、カミーユは助け起こされる。うっすらと目を開ければ、兄弟にしては母とはあまり似ていない顔立ちが、そこにあった。


 落ち着いた声音とは裏腹に、この人にしては珍しく苦い表情だ。


「大丈夫か、カミーユ」

「……は、い」


 甥の返事を確認すると、次いでブレーズ公爵はジェルヴェーズへ向けて声を発した。


「カミーユは、私の妹ベアトリスがようやく授かった息子。無礼を働いたならば、どうか私に免じてお許しください」

「…………」


 これまで嵐のごとく苛立っていたジェルヴェーズが、途端に感情を押し殺したのがわかった。


「……それに、殿下。正騎士隊の長であるシュザン殿を傷つけたとなれば、陛下のお怒りに触れることになります。どうか自制くださいませ」


 ジェルヴェーズは忌々しげに舌打ちをしてから、言い放つ。


「妹御は、しつけを間違えたのではないか」


 すると、コンスタンがすかさず言った。


「ブレーズ公爵様、貴方の甥であるカミーユは少しも悪くありません!」

「だまれ、小僧」


 ジェルヴェーズが長靴でコンスタンを蹴り倒せば、ブレーズ公爵が声を低める。


「殿下、この方はロルム公爵家のご嫡男殿。シャルムを支える七大公爵家のご嫡男様に怪我を負わせたとあっては、殿下といえども国中の批判を浴びることになりかねません」


 父王の片腕であるブレーズ公爵には、ジェルヴェーズも逆らえぬようで、不愉快げに踵を返し、近衛らを従えて立ち去っていく。

 その後ろ姿を見送ってから、ブレーズ公爵はカミーユへ視線を戻し、ハンカチでその口元をぬぐった。


「痛むか」


 カミーユは悔しかった。

 いつもだれかに助けられている。

 なにも答えられないでいると、ブレーズ侯爵がつぶやく。


「殿下にも困ったものだ。王弟派との対立に加え、エストラダの緊張もあって苛立っておられる」


 ブレーズ公爵は、続いてコンスタンにも声をかけてから、二人の怪我がさほどひどいものではないことを見てとると、配下の者に彼らの介抱を委ねて、今度はシュザンのもとへ行く。


 シメオンに手を借りながらも、シュザンは自力で立ち上がっていた。


「大丈夫ですか、シュザン殿」

「平気です。――すみません、ブレーズ公爵。おかげで助かりました」


 答えながら顔をしかめるシュザンは、長靴で蹴られた際に切れた頬から血が滴り、手では腹部を押さえている。手ひどくやられたことは、一見してわかる様子だった。


「……医務室へお連れします、隊長」


 気遣う様子でシメオンが言った。けれどすぐにシュザンは首を横に振る。


「いや、陛下とのお話がある。顔を洗って、このまま行こう」


 シュザンとシメオンは王の居住棟へ向かうところだったようだ。けれど。


「これは医者に診てもらったほうがいいでしょう」


 冷静に判断したのはブレーズ公爵だ。


「陛下には私から事情を説明しておきます。シメオン殿、隊長殿を騎士館の医務室へ」


 平然と振る舞ってはいても、苦痛の色を隠しきれぬシュザンに、カミーユとコンスタンは駆け寄った。


「ごめんなさい!」

「申し訳ありませんでした!」


 二人で同時に謝ると、壊れた雪だるまをちらと見やってシュザンが苦笑する。


「雪だるまは、目立たないところにもう一度作り直しなさい」


 そう言って、けだるそうに上げた手で、二人の頭をぽんぽんと続けて叩いた。シュザンの優しさに、カミーユは返す言葉もなかった。


 その後、当然のことながら二人はブレーズ公爵から注意を受けることとなり、さらにしばらくのち、シュザンは肋骨が折れており、しばらく安静にしなければならないと聞かされた。


 カミーユとコンスタンは、小さな小さな雪だるまを人気ひとけのない騎士館の裏に作り、ようやく探しあてたドングリを目として飾り、いつかシュザンが回復したらいっしょに見せること、そしてジェルヴェーズの横暴にけっして屈しないことを、誓いあった。






+++






「シュザンが怪我……」


 毎日何通も届く手紙のうちに、王都からの知らせが入っており、クレティアンは真っ先にそれを開いた。

 クレティアンのつぶやきを拾って、オリヴィエが顔を上げる。


 しばらく無言でクレティアンは手紙に目を通していたが、読み終えると、目をつむって眉間に指先を押しあてた。


「シュザン様がどうかなさいましたか」


 オリヴィエに問われて、クレティアンは短く答える。


「ジェルヴェーズ殿下に暴行を加えられ、怪我を負った」

「なんと……」

「シュザンは、コンスタン・ロルム殿と、カミーユ・デュノア殿を庇ったそうだ」

「お怪我の程度は」

「顔面と腹部の怪我としか記されていないが、しばらく安静が必要とある」


 この文面では、具体的な怪我の程度はわからない。


「心配がぬぐえない。こちらから王宮へ使者を向かわせ、直接様子を確認しよう」


 厳しい表情で、クレティアンは手紙をしまった。

 王宮へ向かわせる使者について二言三言打ち合わせてから、「では、そのように手配いたします」と、オリヴィエはいったん部屋を出る。それからさほど時間の経たぬうちに、クレティアンのもとへ戻ってきた。


「本日の午後にもダミアンが王都へ向かう手筈となりました。出立のまえに、公爵様のもとへご挨拶に参ります」

「ご苦労だった」


 クレティアンの労いに頭を下げて応じてから、オリヴィエは深刻な様子で口を開く。


「……コンスタン様とカミーユ様を庇ってということは、ジェルヴェーズ殿下にとってはシュザン様を痛めつける格好の機会だった……ということでしょうか」


 それもあるだろうと、クレティアンは答える。


「王弟派でありリオネルの叔父でありながら、陛下の寵を得ているシュザンのことを、日頃から目障りに思われていたはずだ。だが、それだけではない。殿下は日増しにご気性が荒くなっておられるように感じられる。感情の制御が効かぬように見えてならない」

「ますますリオネル様の御身が危険でございます」

「そう、リオネル……」


 クレティアンは考え込む面持ちになった。


 危険――はたしかに危険だが、今はベルリオーズ邸を出て行方知れずであるから、皮肉なことだが、ある意味では安全と言うべきかもしれない。

 けれど。


 王都からの知らせの他にも届いた、多量の手紙を見やって、クレティアンは溜息をついた。


 リオネル宛てに届く周辺諸侯から晩餐会や舞踏会、演奏会などありとあらゆる招待状。

 王となる権利を捨て、王宮を離れベルリオーズ家の者となった時点で、基本的にクレティアンは館から出ないことに決めていた。そのため、招待状はリオネル宛てに届くのだ。


 ――しかし、リオネルがフェリシエとの縁談を断ってからその数が格段に増えた。

 増えたのは、ほとんどは若い娘がいる諸侯からの招待状だ。王弟派のみならず国王派の諸侯までが送ってくるのだから、頭が痛い。


 王家の血を継ぐ、若きベルリオーズ家の嫡男。

 ……となれば、周囲が放っておくはずがなかった。


 リオネルは不在であるため、その招待状にいちいち断りを入れるのもクレティアンの仕事である。息子はわけあって不在のため……と何通したためたことか。


 リオネルがベルリオーズ邸を出てから、すでに一ヶ月以上。

 そろそろ周辺の諸侯らも、リオネルの長期にわたる不在についておかしいと思いはじめるころであるし、国王派諸侯からジェルヴェーズらの耳に入っては厄介である。


 彼らは、リオネルが不在の理由を必ずつきとめようとするだろう。

 愛する相手と駆け落ちしたなどと、万が一にでも知られれば、リオネルだけではなくアベルの身さえ危険だ。


 卑劣な手を使ってくる者たちだ。アベルを連れ去り、彼女を盾にしてリオネルを追い詰めることだって考えられる。

 いや、最終的に彼らが望むのはリオネルの死だ。

 二人がどのような目に遭わされるか、想像することさえ恐ろしい。


 手紙の束をひとまず脇に寄せ、クレティアンは机の引き出しから別の一通を取り出す。


「……それは、ジュストから届いたものですね」

「どうすべきか、ずっと考えてきた」


 ジュストからの報告が届いたのは三日ほど前のことだ。

 リオネルらの居場所はわからず、アベラール邸ではディルクが謹慎処分を受けているという。

 手掛かりが掴めるまでアベラール邸に留まると、ジュストの手紙にはあった。


「このままでは国王派の者たちが、リオネルの動向を探りはじめるだろう。それに、ディルク殿を謹慎させたままにしておくわけにはいかない」


 オリヴィエが気がかりげにクレティアンへ視線を向ける。


「いかがなさるおつもりで……」

「アベラール邸へ赴こうと思う」


 驚いた様子でオリヴィエが聞き返した。


「クレティアン様御自らでございますか?」

「ディルク殿に直接話を聞きたい。一度、心の整理をつけたいのだ」


 ややあってオリヴィエはうなずく。クレティアンの思いを察したようだった。


「出立はいつごろにいたしますか」

「明後日――いや、明日だ」

「明日……」


 つぶやいたものの、オリヴィエはすぐに頭を下げる。


「かしこまりました。準備をいたしましょう。お供の者はどの騎士に」

「あまり騒ぎを大きくしたくはない」


 クレティアンの言葉に、オリヴィエは苦い面持ちになる。


「まさか、公爵様――」

「供はそなたひとりで充分だ。騎士らには領内視察だと告げ、長居せずに戻る」

「危険です、公爵様。どうか騎士たちをお連れください」

「ならばそなた、連れ立つ騎士らにどう説明するのだ? アベラール邸に着いてみれば、滞在しているはずのリオネルの姿はなく、ディルク殿が謹慎処分を受けているのだ。事態の深刻さに気づかぬ者はいないだろう。だが、アベルが実はデュノア家の令嬢で、リオネルが彼女と駆け落ちしたなどと説明できるはずもない」

「しかし――」

「たとえ刺客や強盗に襲われたところで、私とそなたで百人ずつは倒せる。案じることはない」

「…………」


 オリヴィエは執事という役職ではあるものの、クレティアンのそばに仕える者として当然のことながら武術の心得がある。その腕は、ベルリオーズ家の有能な騎士らと匹敵するほど。


 クレティアンの決意が固いことを悟ると、オリヴィエは諦めた様子で一礼した。







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