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勝負

 __ジリジリと鳴る目覚まし時計を止め、体を起こす。

 ベットに立て掛けてある杖を取り、一回の洗面台に向かう。

 階段を降りて洗面台の前まで来ると顔を洗い歯を磨く。


「あ、サトリおはよう」


 歯を磨いていると後ろから母に言われた。


「ぺっ、うん、おはよう」


 僕は口の中にあった歯磨き粉を吐き出し、母に返す。


「咲は今日日直で先に行ったわよ。お兄ちゃんと一緒に行きたかった〜って言ってたわ」

「そうなんだ」


 咲がそんなことを言ったとは信じられないが、もし本当のことだったとしたらなんて嬉しいことなんだろうか。


「朝ごはんの準備できてるけど、その、今日も一緒に食べてくれる?」

「……うん、食べる」


 僕は口に水を含み、口の中に残っていた歯磨き粉を全て吐き出す。

 口元を拭いて食事用の机まで向かう。


「今日は卵焼きと焼き鮭と味噌汁とご飯よ。昨日は洋食だったから今日は和食にしてみたわ」

「味噌汁……」


 卵焼きと焼き鮭はなんの問題もなく食べれるが味噌汁。

 いや、味噌汁に限らずスープ系は僕の天敵といっても過言ではない。


「やけど……」


 そう、やけどだ。

 僕がこの世で二番目に嫌いなものだ。


「あっ、大丈夫よ。ちゃんと冷ましてあるから。サトリは昔から熱いもの苦手だものね」

「……ありがとう」


 母がそんなこと知っていてくれたのは驚きだ。

 やっぱり、母はちゃんと僕のことを見ていてくれたんだな。


「ほら、口を開けて」

「ん?」

「食べさせてあげるから」


 なるほど。僕は母の方を向いて口を開ける。


「むぐむぐ……美味しい」

「ふふ、それは良かったわ」


 昨日と同じように口の中に食材が入れられ咀嚼する。

 朝食はどれも美味しかった。

 朝食を食べ終わると僕は二階に戻り制服に着替た。

 着替えを済ませ、学校に向かおうと家から出ようと玄関の扉を開けた。


「サトリ、行ってらっしゃい。気をつけてね」

「うん、行ってきます」


 そう言って僕は家から出る。

 二十分ほど歩き、学校に到着した。

 道中、なんだかやたら視線を感じたが盲目の人がそんなに珍しかったのかな?

 校舎の中に入り教室に向かっている途中、道中感じた視線の比ではないほどの視線を感じている。


「三河君……」

「でも、あれはデマって可能性も」

「うちの新聞部って嘘をつかないってのが売りみたいだからそれはないんじゃないかな」


 一体なんの話をしているんだろうか。

 僕は不思議に思いながらも気にしてない風に歩き、教室に向かった。

 二年五組の教室につき中に入る。


「三河君」

「?」


 教室に入ると幼い声が聞こえ、僕は声の聞こえた方に体を向ける。

 声からして恐らく女の子だと思うが僕に女の子の知り合いはいなかったはず。


「先に言っておくね。ごめん」

「? それってどういう」


 いきなり謝られてしまった。

 「先に」ということは僕はこれから何かされるのだろう。

 怒るつもりなどもないが気になるので僕は幼い声の人に聞いた。


「……えっと」


 幼い女の子の声の子が喋ろうとした瞬間、


「__三河サトリ先輩はいますか?」


 僕の後ろの教室の入り口から呼ばれる。

 この声、昨日聞いた声だ。


「あっ、ごめん。遅かったみたいね」


 幼い声の子がそう言って何処かに行ってしまう。


「ん、三河先輩」

「……どうも」


 僕は軽く会釈する。

 この声は昨日僕を男子演劇部の副部長さんだったはず。

 名前はわからないけど。


「そういえば昨日は名乗れませんでしたね。僕は天海あまみ悠斗ゆうとです」

「僕は三河サトリ」


 天海君か。

 もしかして昨日の勧誘の続きかな?

 また泣き出されたら嫌だなぁ。


「僕は三河先輩の一つ下の一年生です。気軽に悠斗と呼んでください」

「分かった。僕の事もサトリでいいよ」


 よかった。

 昨日の月丘先輩よりまともそうな人だ。


「さて、挨拶はここまでにして。僕が来たのは他でもありません」

「何?」

「昨日言った通り借りを返しに来たんですよ」


 そういえば昨日、そんなことを言われたような気がする。

 僕、何も貸したつもりはないんだけどなぁ。


「……まぁ、というのは冗談で、正直な話この騒動を早く収拾させたいだけなんですが」

「騒動?」


 そういえば教室に来る途中、新聞がどうたらって話が聞こえたけどもしかしてそれかな?


「サトリ先輩はわからないでしょうがうちの新聞部が昨日の事を記事にしましてね」


 悠斗君がそう言うと後ろの方から下手な口笛のような音が三つ聞こえてきた。


「その記事には僕とサトリ先輩が決闘するなんて事まで書いてありまして」

「決闘って……」


 なんで昨日の勧誘からそんな物騒な話になるんだろう。


「正直、これ以上話が大きくならないためにここに来た次第なんです」

「なるほど、でも収拾するってどうするの?」

「はい、それはですね。先輩行きますよ」


 行く? どこに?

 僕は悠斗君の言っていることの意味がわからず首を傾げた。


「__最初はグー、じゃんけんぽん」


 じゃんけん?

 ますます意味がわからないが僕はとりあえずチョキを出した。


「はい、僕の勝ちです」

「……負けた」


 見えないから負けた実感というのがあまり湧かない。

 それにしてもなんでいきなりじゃんけんなんてしたんだろうか。


「そこの新聞部のお三方」

「はい」

「はいっ!」

「は、ひゃい!!」


 悠斗君は僕の後ろの方に向かって呼びかけると三人の女の子が返事をした。

 返事をした三人の声の声のうちの一人が先ほど謝ってきた幼い声の子なのがわかった。


「今から大至急この事を記事にしてください。記事のタイトルは『勝負の結果、天海悠斗の勝ち』と書いてください。くれぐれも勝負の内容は載せないように」

「……わかった」


 幼い声の子が返事をする。


「サトリ先輩、ありがとうございました。これで僕たちにとって嫌な話の広がり方はしなくて済みます」

「どういたしまして?」


 正直、まだ何が何だか分かっていないがこれで彼がいいというならいいのだろう。


「あと、勝負に勝ったので僕の言うことを一つ先輩に聞いてもらいます」

「え?」

「詳しくは放課後に話すので、教室で待っていてください」

「え、え?」

「それでは」

「えぇ?」


 悠斗君は当然のようにそう言って教室を出て行ってしまった。

 あれかな? 男子演劇部はおかしい人が多いのかな。

 僕はそう思いながら自分の席に着いた。

どうも、お腹を壊しています作者です。

遅くなりましたが恋愛(現実世界)の日間ランキング9位に入りました。

これもみんな皆様のおかげです。


これからも頑張っていくのでご指摘・ご意見などありましたらどしどし言ってください。

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