二学期(後編)
詳しく聞くと「ち、ちげぇよ! す、好きな人とかいねぇから!」と力いっぱい否定された。
そこまで否定されると、逆に怪しいけど。
「__席についてねー」
しばらく健斗達と喋っているとチャイムが鳴った。
って、今の声……。
「皆さん初めまして、前任の先生が急病で入院する事になったので代わりにしばらく担任をさせてもらう玲です。よろしく!」
う、嘘……。
なんで玲さんが担任の先生になるの……。
あ、『今日からよろしくね!』ってそういう事か。
「はぁはぁ! おはよう、ございます……ぅ!」
クラスの入り口から天美さんの声が聞こえる。
息を切らしてるみたいだけど、何かあったのかな?
「こらこら、新学期早々遅刻とは……」
「くっ、誰のせいだと……。いやぁ、すみませんねぇ~。ちょっと、おばさんの手伝いをしてたらぁ~、遅れちゃってぇ~」
「なっ、おば……」
不穏な雰囲気……。
新学期早々、喧嘩はやめて欲しい。
「そ、それなら仕方ないですね。でも、次からは内申点を下げさせてもらうよ」
「はぁい」
天美さんは席に座り、玲さんは出席をとりはじめる。
僕は一応、クラスの全員の声を覚えている。
夏休みが開けると、雰囲気が変わる人とかいるから楽しい。
夏休みデビューって言うんだっけ、見た目も変わってるんだと思うんだけど、それに合わせて声も変わっている。
この前まで、声がこもるような出し方をしてた人がハキハキと喋るようになっていたり、口調が変わっていたり、癖が変わっていたり。
あ、もしかして、建斗の喋り方も夏休みデビューって奴だったのかな?
「神ヶ埼」
「はぁい」
それにしても、本当になんで玲さんが担任になってるんだろう。
教員免許持ってるのかな?
流石に超能力を使って侵入なんてしないだろうし。
あとで聞いておこう。
「この後は、体育館に行って始業式なんだけど、その前に転校生を紹介しておくね。入ってきて」
転校生? 夏休み終わりだし、普通なら珍しいくないだろうけど、このクラスは特進クラス。
編入試験は普通の入試よりも難しいと言われているし……。
実際、このクラスに転校生なんて初めてだ。
「それじゃあ、挨拶をしてね」
「__初めまして、際見多空です」
……。聞き覚えのある声。
僕は、一度聞いた声はほとんど忘れない。
手が震えるのを必死に抑え込もうとする。
怖いという感情が零れそうなほどに湧き出てくる。
「宜しくお願いします」
笑みを含んでいったのであろう言葉。
その言葉が、あの墓参りの日を思い出させる。
「……。あ、あなたは! あの時、お墓参りに来ていた方ですよね!」
声がこちらを向く。
相手もこちらを覚えていたみたいだ。
頭痛がする。くらくらして、顔を上げることも出来ない。
あれ……。
「お、おいサトリ!?」
もしかして僕、倒れてる?
「え、ちょっ、どうしたんだい!?」
玲さんも驚いてしまっている。
「先生、とりあえず保健室に!」
あぁ、天美さん。口調作るの忘れてるよ。
みんなに迷惑をかけちゃう。早く、起き上がらなきゃ__。
僕の意識はそこで落ちた。
これで、二章は終わりです。
二章は、主人公の弱さとSF的な世界観を伝えるためのものです。
次の章では《獣山家》と《サトリ君の能力》。そして《際見多空》の謎を解明していきます。
二章は謎を散りばめる章で、三章はそれを土台に物語が展開します。
そして、健斗が可愛い章です。
二章が終わって、何かご意見などあればネタバレになり過ぎない程度に答えさせていただきます。
皆様の感想、大変励みになっていますので、これからも宜しくお願い致します。
それでは、また三章で会いましょう。




