弱った男の子ほど保護欲を刺激し、私を興奮させるものはないと思います。はい。by咲
咲視点です
え、シリアス書くんじゃないのかですか?
コメディは楽しい。いいですね? コメディは楽しいんです。
「お兄ちゃん、どうしちゃったのかな……」
家に帰り着いたらお兄ちゃんは一目散に自分の部屋に戻ってしまった。
あの時の、泣いているお兄ちゃんの顔は昔のお兄ちゃんみたいだった。
でも、なんでいきなり泣いてしまったんだろう。
「サトリ、入ってもいい?」
私とお母さんはお兄ちゃんの部屋の前にいる。
お母さんが呼びかけるが返事はない。
返事をされないなんて、前までなら普通だったけど、今は凄く辛い。
「入りましょう」
「で、でも、お兄ちゃんから返事がないよ」
「それでも、サトリをほっておけないでしょ」
お母さんの表情は真剣だった。
そうだ。昔は、泣いてるお兄ちゃんに声を掛けてあげられなかった。
でも、今は違う。泣いている時に声を掛けてもらえる心強さが私には分かる。
あの時、お兄ちゃんがしてくれたみたいに私が声を掛けてあげなくちゃ。
「入るわよ。サトリ」
まず、お母さんが先に入り、私は少し遅れて入る。
部屋に入ると毛布に包まっているお兄ちゃんが居た。
一瞬、アルマジロみたいなんて思ってしまった。
「サトリ、大丈夫……?」
お母さんが近づいて聞いた。
でも、返事はない。
「サトリ……?」
お母さんは返事のないお兄ちゃんの顔を覗き込んだ。
「か、顔が真っ赤じゃない!?」
「うえ、お兄ちゃん大丈夫なの!?」
私はすぐにお兄ちゃんの顔を覗き込んだ。
すると、お兄ちゃんの息は荒くして、顔は真っ赤になっていた。
あ、明らかに、どこからどう見ても具合の悪い状態だ。
お母さんがお兄ちゃんの額に手を当てた。
「熱っ! サトリ、熱があるわね。咲、すぐに体温計と冷凍庫に入ってる氷枕とタオルをいくつか持って来てちょうだい」
「え、あ、うん!」
お母さんはすぐに対処を始める。
すごい、仕事柄からなのか指示の出し方が的確で簡潔的だ。
私はすぐにお母さんの指示通りの物を持ってきた。
「__39度……。高熱じゃない……」
お母さんはアルマジロ状態でベットの上に座っているお兄ちゃんを寝かせて、押し入れから冬用の毛布を持って来てお兄ちゃんに掛けた。
お兄ちゃんの顔は『ポケー』っとしていて、何も考えてないんじゃないかなという表情をしていた。
「病院に連れて行った方がいいかしら、でも、サトリはベットから動かそうとすると抵抗するし」
お兄ちゃんはベットから離れようとはしてくれない。
いや、力がほとんど入ってないから力尽くで連れていこうと思えば出来るんだけど。
そうしようとすると「やめて……」ってか細い声で言うんだもん!
可愛……、可哀想すぎて無理やり連れだすなんてできないから!
「咲、取りあえず、今日はサトリの様子を見ましょう。明日になっても良くならないようなら無理やりにでも病院に行くわ」
「うん、わかった」
「風邪薬が切れかけてるから、すぐに買ってくるわ。サトリに何かあったらすぐに電話してちょうだい」
「分かった」
お母さんは車のカギを持って、すぐに行ってしまった。
とりあえず、お兄ちゃんのそばに居て、何かあったらすぐに電話する。
息苦しそうにしているお兄ちゃんを見ていると、本当に傍にいるだけでいいのかと思うけど。
お母さんがやる事をしてくれたし、このまま寝かせてあげてた方がいいんだよね。
「さき……」
「え、なにお兄ちゃん……」
お兄ちゃんは息苦しそうに吐息を立てている。
え、今の寝言……。
私、寝言でお兄ちゃんに呼ばれちゃった?
何それ、スーパー嬉しい。
いやっ、嬉しがっている時じゃないよ私!?
「お、お兄ちゃーん……」
少し小声で呼ぶが、返事はない。
完全に寝ている。
私は、もう少しだけ近くで顔を見ようと思いベットに近づいた。
「んっ……」
お兄ちゃんが寝返りをうって毛布から手がはみ出てしまう。
はみ出た手を毛布の中に戻そうと、お兄ちゃんの手を掴むと、そのままお兄ちゃんの手が閉じて握手をしている様な状態になってしまった。
「柔らかい……」
お兄ちゃんが私の手を揉み揉みしている。
……天使かよ。
てか、さっきから寝言が可愛すぎるんですけど。
これ狙ってるよね。
「ヒトデ……」
私の手はヒトデじゃないよお兄ちゃん。
くぅ、手が塞がってなかったらすぐにカメラ持ってくるのに……!
お兄ちゃんの顔はやっぱり赤いけど、手を握っていると心なしか少しだけ安心した顔をしてくれる。
「お母様……」
グハッ!? 私は心の中で吐血した。
お母様って、お母様って!
私の中の『父性』ならぬ、『母性』が爆発しそうだよ!
「離さないでください……」
お兄ちゃんが少しだけ悲しそうな顔をする。
「大丈夫。離さないよ」
私がそう返すとお兄ちゃんは安心した顔をしてくれる。
良かった。
私は息をついて安心する。
「__大好き、です」
お兄ちゃんが微笑みながら言った。
普段のお兄ちゃんからは絶対に聞くことのできない言葉だ。
それを聞いた瞬間、私の中で何かが切れた。
おもに鼻の辺りの何かが切れた。
「おにいひゃん。それははんそくだよ……」
そして、私の意識はそこで切れた。
次回は初のお母さん視点です。
決まった時間に投稿しようと思うのですが、皆さんの都合のいい時間などを教えていただけると嬉しいです。




