ことり君の一日
さとり君回です
__前略。天国のお父さん、お母さん。
僕は今、かなりピンチです。
怪しい女に、怪しい能力を使われて、気が付いたら体が縮んでしまいました。
しかも、縮んだ姿を咲に見られました。
「は、なんで、こいつ小さくなってる訳? 意味わかんないんだけど」『か、かわいいぃ……!』
「いや、色々あってね。小さくなってしまったんだよ」『いやぁ、流石のボクも驚き』
アミ、なんでそんな他人事みたいに話すんだよ。
一大事だろうが。
僕は部屋に置いてる鏡を見る。
見た目からして、多分小学校に行く前だな。
「あんた、超能力者で両親亡くしてるってだけで濃いのに、これ以上キャラ設定盛ると嫌われるよ?」『わ、私は絶対に嫌いにならないけど』
温泉旅行の日。
玲という中二チート女によって、温泉旅行に来ている知り合い全員に僕の能力がバレてしまった。
あの女、絶対に許さない。
「ま、私は元からあんたの事嫌いだけど」『違う。何言ってるの私!? 大好きに決まってるでしょ!』
「相変わらず、咲ちゃんはさとり君の事嫌いだね」『多分、嘘なんだろうけど』
「疫病神が好きな人間がいると思ってるの?」『ばかっ、こんなこと言ったらお兄ちゃんに嫌われちゃう!』
いや、もう気にしてないよ。
最初の事は多少傷ついたが、本心から言ってないのは分かってるし、昔のように泣くことはない。
そもそも、昔泣いたのだってあれだからな。
お父さんお母さんが死んで、悲しくて泣いてただけで罵倒されて泣いてた訳じゃないからな!
ほ、本当だからな!
「__さとりが困ってると聞いて!」
「うわっ!? ……な、変態男女」
僕の部屋の扉が勢いよく開かれ、扉の近くにいた咲は驚き、腰を抜かして尻もちをついた。
部屋に入って来たのは健斗。
僕は認めていないけど、自称僕の親友だ。
「な……」
健斗と目が合う。
あ、嫌な予感がする。
「何だこの生き物!? て、天使だな。俺には分かるぞ! 天使目天使科天使属天使種の天使だろ! 持って帰っていいか!? いいだろ!?」
「あはは~、健斗ちゃん。その子は『動物界脊椎動物門哺乳綱霊長目真猿亜目狭鼻下目ヒト上科ヒト科 ヒト属ヒト種』のさとり君だよ」『相変わらず、いい感じに狂ってるなぁ』
なんだこいつ、なんでそんな無駄な知識もってんだよ。
てか長いよ。
見ろ。咲が『え、何それ……呪文?』って思ってるぞ。
「つ、つまり、さとりは天使だったのか!? 持って帰っていいか!? いいだろ!?」
「あはは~、ダメだよ~。それにそのさとり君。いや、今はことり君かな?」
さとりが小さくなったからことりってか。
誰が上手い事を言えと。
「ことり君は一時間、あと三十分くらいで元の姿に戻るからね。というか、そんな事したら絶対に嫌われるよ」『まぁ、ライバルが減ってくれるからそれはそれでいいんだけど』
「き、嫌われるのは嫌だ……」『さとりに嫌われたら死ぬしかないよ』
お、重い。
まぁ、僕は健斗の事を嫌いにならないから問題は無いだろうがな。
だって、別に好きじゃないし。
「それにしてもさとり、随分小さくなったな」『にししっ、可愛い』
「多分、幼稚園生くらいになってると思うよ」
「こんな小さいこいつを見るのは私も初めてよ。小さい頃からイラつく顔してるわね」『カメラ持ってこないと』
咲、絶対に撮らせないからな。
確かに、小さい頃の僕はお母さんの愛らしさを受け継いで、可愛いが。
『ナニ』に使われるか分かったもんじゃないからな。
「ショタさとり……ゴクリ」『小さいさとり。今とは違うあどけなさがあるなぁ。出来れば、私の部屋に閉じ込めて裸にして、つむじからつま先まで全部、全部全部見たいけど……。我慢しなきゃ……今は、にしし』
「健斗ちゃん~。何思ってるのか分からないけど、笑顔が気持ち悪いよ~」
「気持ち悪くなんかないぜ!」
いや、健斗。今のは気持ち悪かったよ。
笑い方というか、考えてる事が怖いんだよ。
「さとり君、そう言えば服も縮んでる……。というか、別物だね」
「ん、そう言えば、さとりの持ってる服じゃないな」『タンスの中にこんなタイプの服はないし』
なんで健斗が僕のタンスの中を知ってるのかは、後でじっくり聞くとして。
そう言えば、この服……、見たことはある気がするけど僕の持ってるタイプの服じゃないな。
「もしかして、体だけじゃなくて服も昔の物になってるのかな?」
あ、そうだ。
この服……。
お母さんが買ってくれて、お気に入りだった服だ。
引っ越す時に無くしちゃった服……。
「表情を見るに、その通りなんだね」
「さとり、昔は結構派手なの着てたんだな。今が地味すぎるだけな気もするが」『今度、こういう服プレゼントしようかな』
懐かしいな。
この小さくなる能力に少しだけ感謝だ。
「ま、まぁ、あれじゃない。その服はそれなりに似合ってると思うわよ」『い、言えた―! 頑張った私!』
「そうだねぇ。さとり君、普段は適当に服を着ているだろう?」
「確かに、さとりの可愛さを最大限引き出してるな」
な、別に服を気にしてない訳じゃなくて、盲目なのに凄いオシャレだと不自然だろ。
本気出したら、僕だってオシャレなんだぞ!
※ ※ ※ ※
結局、あの後も散々愛でられて、三十分が経った。
「__お、そろそろだね」
アミが僕の背中を軽く叩いて報告してくる。
「あ、もう戻るのか……少し惜しいな」
「私はどうでもいい」『写真、撮れなかった……』
「3…2…1……」
視界が歪み、目を閉じる。
そして、視界の歪みが収まり、目を開けると視線が元に戻っていた。
つまり、元の体に戻ったという事だ。
「おぉ、結構地味に戻るんだな」『一瞬で元に戻った……』
「まぁ、超能力なんてこんなもんだよ」
「私は、リビングに戻るわ」『やっぱり、大きいお兄ちゃんも最高です』
僕はやっと終わったと立ち上がる。
全く、本当にこんな能力は二度とごめんだ。
小さくなるとか、僕に何のメリットも……。
『少し疲れたけど、懐かしくて楽しかった……』
鏡に映る僕の顔が少しずつ赤くなる。
あぁ、あれだ。
確かに、少し、ほんの少しだけだけど、楽しかったよ。
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失礼いたしました。熱盛と出てしまいました。




