誤魔化し
スランプ脱却!(多分)
このまま行くと最終話までの話数がとてつもないことになってしまう。(このままだと約200話)
玲さんに攫われたというか、勧誘された日。
僕は玲さんに『目を開けて生活しないか』という提案を受けた。
しかし、この目は僕のトラウマそのものだ。
目を開けての生活したいとは思うけど、目を開けて生活するのは嫌なんだ。
「もちろん君が自分の目に恐怖心を持っていることは知っているよ」
「え……」
「だから、まずはその恐怖心を取り払うことが先だ」
玲さんが立ち上がり僕の前まで来る。
そして、僕は気がつく。
先ほどまで玲さんの能力で閉じれなかった目が閉じれるようになっている。
「『命令だ。__君は恐怖心を感じてはいけない』」
「命令……」
僕の中に今まであった『何か』が消える。
不思議と時間が早くなっている気がする。
そして、気がつくと十数分が経過していた。
不思議な感覚だ。
目を開けることに対しての恐怖心がなくなっている。
例えるなら、小さいころ嫌いだった食べ物が今食べてみると美味しいみたいな。
……僕、例え下手だな。
「荒療治だけど、どうだい。目を開けることへの抵抗はあるかい?」
僕は玲さんの目をじっと見つめる。
普段なら怖くてできない。
でも、恐怖心のない今ならできる。
「ないです」
「うん、良かった」
確かに今なら、目を開けていられる。
でも、今まで隠してきたのにいきなり目を開けてたらおかしいんじゃ。
「それと、サトリ君には『認識阻害』」をかけさせてもらうよ」
「認識阻害?__」
※ ※ ※ ※
玲さん曰く、「基本、超能力者は超能力者であることを隠さなくちゃいけない。人体実験や兵器として利用されないようにね」だそうだ。
そして、今の僕の状況は、
「本当だ。サトリさんの目、開いてる?」
「二人とも気づいてなかったの?」
目を開けているのがバレました。
だ、大丈夫、まだ能力はばれてない筈だし、なんとか誤魔化さなきゃ。
それに、不幸中の幸いか、猫子ちゃん以外には元々目が見えるのはバレてたし。
「私、てっきり家では目を開けてるのが普通なんだと思ってた」
というか、犬子ちゃんは気づいていたの。
そういえば、ちょくちょく犬子ちゃんと目が合ってた気がする。
認識阻害も絶対じゃないんだ。
「そ、そんなんだよ。僕、家では目を開けてるの」
「な、そうだったのか」
とりあえず、犬子ちゃんの解釈に乗っておこう。
「というか、サトリさんって目見えるんですか!?」
「うん、見えるよ。見ないだけ」
本当のことを話しつつ隠したいところは隠そう。
これが嘘をつくコツ……ってラジオで言ってた。
「それに、お姉ちゃん達の反応! 知ってたの!?」
「結構前に、正確に言うと文化祭の日に」
「え、それってサトリさんがお母さんに拉致された日?」
あ、拉致されそうになったことは聞いてたんだ。
「まぁ、詳しいことは聞かないって前にも言ったし、今回も聞かないでやるぜ」
「ありがとう」
よ、良かった。
健斗達を騙してるみたいで少し悪い気はするけど、バレなくて良かった。
「んー、私は色々聞きたいんですが……まぁ、詳しいことは後でお姉ちゃんに聞きます」
「猫子は空気が読めるね」
「私、コミュ障だけど空気は読めるよ」『ネットで身につけたし』
犬子ちゃんは立ち上がり、持ってきたバッグの中を漁り始める。
「それと、今日来た理由、思い出した」
「あ、そういえば遊びに夢中になって忘れてたね」
犬子ちゃんがバックの中から箱の入った袋を取り出す。
「お母さんから『この前はごめんね。まさか君があの佐鳥くんだとは思って無かったからさ。これはお詫びだから美味しく頂いてくれ』って渡されたの」
「名前も間違えてるし、あの人……本当に謝る気あるのかな?」
「お母さん適当だから、後で殴っておくよ」『十発くらい』
い、犬子ちゃん怖い。
無表情で怖いこと言われるのは本当に怖い。
「俺の分もやっててくれると嬉しいぜ」
「分かった」『十一発に変更』
それにしても、拉致のお詫びに菓子折りとは。
お菓子は好きだからいいんだけど。犬子ちゃんのお母さんは本当にフリーダムだなぁ。
この作品は『琴浦さん』という作品にインスパイアされて書き始めたものです。
周りに、琴浦さんを知っている人が少なすぎる。
それと、心の声描写は必要な時以外は入れません。




