突然の訪問
サトリくん初の三人称視点に挑戦
僕は、まず部屋のカーテンを閉めた。
ないとは思うけど、外をたまたま通りかかった知り合いが僕の女の子姿を見ないとは限らない。
不幸中の幸いと言うべきだろう。
お母さんは残業で夜遅くになるみたいだし、咲も調整とかで遅くまで帰らないみたいだ。
自慢じゃないが、風邪の時以外に友人が家に来たことはない。
つまり、僕の家に友人が来ることはほとんどない。
__あ、泣きそう。
※ ※ 三人称視点 ※ ※
サトリの家の前、ボーイッシュな格好をした少女が葛藤していた。
彼女の内心は、『不安3割』『興奮5割』『ドキドキ2割』だ。
夏の暑い日差しに肌を攻撃され、汗を垂らす。
「逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ」
某有名SFアニメの主人公のようにセリフを連呼する少女。
「まずはチャイムを鳴らすんだ佐藤健斗。さぁ、指を前に出すぞ。321で行くぞ! 3……2……1……」
押さない。
佐藤健斗はかれこれ10分ほど、この行動を繰り返していた。
(お、思えば俺、サトリに行くって連絡してねぇ。サトリにも用事があるだろうし、いきなり行くのは失礼。よし、明日出直そう!)
健斗は回れ右して家に帰ろうと一歩踏み出す。
すると、健斗頭の中に二つの対立する感情が出てくる。
『健斗、本当にそれでいいのか?』
「あ、悪魔の俺!」
一つの感情は黒いコウモリのような羽を生やした小さい健斗だった。
それは、健斗の妄想力が産み出した幻覚。
悪魔型の健斗は練習をサボりたいとかサトリを襲っちまいたいと思った時に出てくる悪い感情だ。
『いえ、それでいいのです』
「て、天使の俺!」
悪魔の健斗とは対照的に白い羽に白い肌をした小さい健斗の姿をした感情も現れる。
これも、健斗の妄想力が産み出した幻覚。
天使型の健斗は健斗の事を常に肯定する良い感情だ。
『健斗、お前昨日も、一昨日も、その前も同じ事をしたじゃねぇか。焦った過ぎるだろ』
そう、健斗は今日と同じ事を昨日も一昨日もその前もしていた。
サトリの家の前には夏休みに入ってからほぼ毎日来てたが、チャイムを押す勇気がなかった。
『いえ、健斗は正しいわ。準備をロクにしてない戦は負けるのです。今日は帰って作戦会議をしましょう』
『だーかーら! 昨日も一昨日も作戦会議とか言って無駄な時間を過ごしただろ! そろそろ、ズバッと行こうぜ!』
『黙りなさい悪魔、そして滅されなさい』
『天使のくせに口悪すぎるだろお前』
周りから見たら健斗は道の真ん中で突っ立てる状態だが、健斗の頭の中では悪魔と天使の大戦が始まりそうだ。
『健斗、お前はどうしたいんだよ。サトリに会いたいんだろ?』
『健斗、私はあなたの行動を肯定します。行きたくないなら素直にそういえばいいのですよ』
「……俺は」
健斗はチャイムの前まで戻る。
そして、手を震わせながらチャイムを押した。
「サトリに、会いたい……!」
『はぁ、やっとだぜ』
『健斗、ファイトですよ』
悪魔と天使の健斗が消える。
勢いでチャイムを押してしまった健斗の心拍数は徐々に上がっていく。
朝に食べたスクランブルエッグがお口から出てしまいそうだ。
一秒一秒が長く、頭の中では色々な思いが交錯する。
※ ※ ※ ※
サトリはドアの前で頭を抱えていた。
郵便かと思いドアの前まで来てみると、郵便ではなく健斗が来ていた。
なぜ、よりにもよって今日なんだ。
普段なら飛んで喜ぶところなのだが、今は飛んで逃げたい気持ちだ。
「……サトリ、いないのかな」
それは健斗の消え入りそうな声だった。
(健斗が来てくれたのに……居留守なんてできない)
サトリはドアを開けた。
健斗はその瞬間、パァーっと笑顔になる。
投稿遅れてすみません!
リアルが忙しくてパソコンにも触れませんでした。




