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密室 ※健斗視点

サトリ君の人気投票、結果発表!!

一位『佐藤健斗』18票

二位『三河咲』9票

三位『三河サトリ』7票

 佐藤家の女は、生まれた時から男の口調を強制される。

 一人称は俺か僕。

 姉に自分を拙者とか言うのがいるが父曰くセーフらしい。

 この変なルールは江戸時代末期、まだ男の方が強く権力を持っている時代に出来た物だ。

 まぁ、そんなへんてこルールのせいで俺は小学生の頃まで自分の事を男だと思ってた。


 そんな育ち方をした俺は恋心というものに疎いらしい。

 正直、自分ではそんな事思っていない。

 だが、家族全員に言われたら嫌でも自分が疎いのだと気づく。

 てか、なんで同じ環境で育ってる姉や妹は疎くないんだよ。


 まぁ、そんな俺も最近やっと恋心というものに気づいてきた。

 『サトリ』が俺に気づかせてくれた。

 恋心とは人を変えるもので、最近まで気にしてもいなかった事すら気になってくる。


 そんな訳で俺は今、口調を女らしくしようと練習をしている。

 え、ルールはどうしたんだって?

 そんなもん、今まで守ってただけでも十分だろ。

 おふくろに相談したら「好きにすればいいんじゃね? 海斗も宗谷もいるしな。あ、父さんにはバレないようにな」と言われた。

 それから、家では一人称は私にしている。


「健斗。おはよう」

「おう、サトリおはよう」


 俺が目を覚ますと目の前にサトリがいた。

 寝起きからサトリが見れるなんてラッキ……って!?


「なんでサトリが俺の隣にいんだよ!?」


 俺は勢いよく起き上がり、サトリの方を驚いた顔で見る。

 サトリも少しビクッと体を震わした。


「居ちゃダメだった……?」

「い、いや、そういうわけじゃないけどよ。ビックリすんだろ……」

「ごめん」


 落ち込んだ顔をするサトリ。

 うっ、そんな顔しないでくれよ。

 罪悪感で潰れそうだぜ。


「いや、別に怒ったりはしてないぜ。むしろ、寝起きでサトリの顔が見れてラッキーって思ってるくらいだしな!」


 って、何口走ってんだ俺!?


「ホント?」

「あ、あぁ。本当だぜ」

「良かった」


 普段はほとんど無表情なサトリがニコッと微笑む。

 なんだこいつ、天使なのか?

 いや、そうじゃねぇ。


「で、なんでサトリが俺の部屋に……」


 俺はあることに気づく。

 ここ、俺の部屋じゃねぇ。


「僕たち、閉じ込められたみたい」


 サトリが少し落ち込んだ声で言った。

 マジかよ。




 俺とサトリは本当に閉じ込められたらしい。

 閉じ込められたのは正方形の部屋で壁は全面真っ白で扉すらない。

 俺が目の見えないサトリの代わりに部屋を散策すると一枚の鉄でできたプレートみたいなものを見つける。


「なんだこれ」

「何か見つけたの?」

「あぁ、鉄板みたいなのを見つけた」

「鉄板ってお好み焼きとかのやつ?」

「いや、それよりは薄いし軽いな」


 俺はサトリに鉄板を渡した。

 鉄板を渡すとサトリは鉄板の表面を手のひらで撫で始める。


「この鉄板。点字が書かれてる」

「点字って、盲目者用の文字の事だよな。そう言えばやけにブツブツしてたような……」

「うん。ちょっと読むね」


 サトリは指で鉄板の表面をなぞる。

 なぞっていくと共にサトリの顔が赤くなっていく。

 これは、嫌な予感がするぞ。


「な、なんて書いてるんだ?」

「……佐藤健斗と三河サトリは、キスをしないとこの部屋から出る事ができない」

「は……?」

「佐藤健斗と三河サトリは、キスをしないとこの部屋から出る事ができないって書いてる」


 聞き間違いじゃなかったのか。

 キスって、俺達を閉じ込めた奴は何考えてんだよ。


「健斗……」

「な、なんだサトリ。そんな近づいて」


 サトリが俺の方に近づいてくる。

 俺とサトリの距離はニ十センチくらいだ。


「健斗。キスしよ」

「ファッ!!?」


 サトリの提案に驚きすぎて、おかしな声を出してしまった。

 サトリが天然で俺以上に恋愛感情に疎いのも知ってるが、大切な唇をこんな簡単に差し出してくるなんて。

 これ、このままいけばサトリとキスできる!?


「さ、サトリ……」

「な、何?」


 俺はサトリの肩が震えている事に気づいた。


「落ち着け、キスするのは最終手段だ」

「う、うん」


 サトリも冷静を保ってられないんだろう。

 それなら俺はサトリを落ち着かせて、安心させないといけない。


「取りあえず、助けが来るのを待ってようぜ」

「分かった」


 俺とサトリはここで助けが来るのを待つことにした。




 十数時間後。

 何時間待ったか分からない。

 少なくとも十時間は超えただろう。

 最初はサトリと他愛もない話をしていたが、話すこともなくなりサトリは寝てしまった。

 サトリの寝顔、可愛い。

 普段から目を閉じてるけど、寝てる時は何というかあどけなさが上がっている気がする。


「すー、すー」

「俺……。私、サトリから女として見られてないのかな」


 普通、女の前でこんな無防備になれるもんなのか?

 襲われるとか考えないのか?


「俺、胸もないわけじゃないし。日焼け跡とかも女らしいって言われるし。口調は確かにあれだけど……」

「すー、すー」


 まぁ、いいか。

 おかげでサトリの寝顔も見れるわけだしな。

 俺はサトリの髪をそっと撫でた。

 これくらいは、いいよな。




 数十時間後。

 もう、一日は過ぎただろう。

 腹の空き具合も限界に近い。

 だが、一向に助けが来る気配がない。


「健斗。もう駄目」

「さ、サトリ?」

「このままじゃ、死んじゃう」


 死ぬって、大袈裟じゃないか。

 まだ、我慢できる範囲ではある。


「死ぬって……」

「僕たち、ここに来てもう二日以上経ってる」

「え、そんなに経ってたか」


 サトリの体内時計が正確なのを知っている。

 そのサトリが二日以上経ったというなら、当たっているのだろう。


「人間は四日から五日何も飲まず食わずだと死ぬ」

「そ、そうなのか? でも、それならまだ時間は」

「脱水で気絶したら、そのまま死んじゃう。意識があるうちにキスしないと」

「……」


 サトリは冷静に状況を判断して提案したんだ。

 サトリも最初とは違い怯えている様子はない。

 言っている事は正しいし、これはサトリとキスをする時が来てしまった。


「健斗……僕なんかと、ごめんね」

「え」

「僕なんかとキスしたくないよね」


 な、何言ってるんだよサトリ。

 どんだけ、自分の評価低いんだよ。

 俺からしたらサトリとキスを出来るなんて幸せ以外の何物でもないのに。


「なぁ、サトリ」

「何?」


 俺はサトリの額にキスをした。

 なんというか、今のサトリと本当にキスをするのは違う気がした。

 サトリはキョトンとしている。

 

「次は本当に口にするからな!」

「……健斗」


 サトリが頬を赤くして、照れている。

 可愛いななんて思っていると、俺は意識が遠のいていき、倒れてしまう。

 そして、目を覚ますと部屋のベットの上にいた。

 日付を見たら誘拐された日の次の日の朝だった。

 夢、だったのか?

 あぁ、まぁ、いい夢だった。




【おまけ】

挿絵(By みてみん)

健斗おめでとう!!

しかし、主人公より人気があるとは……。


人気投票に投票してくださった皆様、ありがとうございました。

また、機会があったらしようと思います。

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