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神ヶ埼天美の葛藤

 ファミリーレストラン。通称ファミレス。

 名前の通り、家族向けのレストランだ。


「店員さーん。注文良いですかー?」

「お前、ベル押せよ」

「えぇ、呼んだ方が早くないかい?」


 僕は今、凄くソワソワしている。

 ファミレス、聞いた事はあったけど来るのは初めてだ。

 美味しそうな匂いとたばこの匂いと独特な匂いが混ざっている。

 やっぱり夏休みだからか若い人の声が沢山聞こえる。


「あの子、可愛くない?」

「でも、女二人もつれてるよ。たらしなんじゃね?」


 たらし? 何それ。

 近くから聞こえてくる女性の声に僕は首を傾げた。


「サトリ。あんま気にすんな。確かにサトリはたらしかもしれないが悪意のないたらしだからな。たらされてる俺達の方が悪いんだ」

「健斗。何言ってるの?」

「健斗ちゃん。フォロー下手だね」


 そんな話をしていると店員さんが注文を取りに来た。

 僕と健斗は天美さんのおすすめを注文してもらう。

 そういえば、天美さんと休日に遊ぶのは初めてだ。

 天美さんって休日でも作った性格で過ごしてるんだなぁ。

 疲れないのかな。


「ドリンクバー取ってくるけど、何が飲みたい~?」

「どりんくばー?」

「サトリ。もしかしてドリンクバー、知らないのか?」


 え、その反応、知らない方がおかしいの。

 ダメだ。このままじゃ、僕が常識のないやつだと思われちゃう。

 ドリンクバーっていうくらいだから飲み物のバー。

 バーはカウンター的な意味だから……。

 そう言えば天美さん取ってくるって言ってたし、飲み物を自分で取りに行くシステムの事?

 なるほど、多分合ってる。


「し、知ってるよ」

「……そんならいいけど。俺はオレンジジュースで」

「あら可愛い。で、サトリ君は?」

「僕は、お茶」


 お茶ならあるはず。


「了解~。じゃ、取りに行ってくるよぉ」

「よろしくな」


 鼻歌を歌いながら天美さんが飲み物を取りに行く。

 天美さんが飲み物を取りに行ってる間に僕はトイレ行っておこう。


「健斗。僕、トイレ行ってくる」

「サトリってそこら辺きっぱり言うよな。恥じらいとかないのか?」

「恥じらい?」


 あ、確かに。健斗は女の子だし……。

 健斗、女の子なんだよな。

 それもかなり可愛い……合わない。

 今更だけど僕の中の健斗像と合わなすぎるよ。


「どうしたんだ? ぼけっと突っ立って」

「あ、うん。なんでもない。じゃあ……お手洗いに行ってくる」

「あ、少し言い方変えた」


 僕はトイレに向かう。

 トイレの場所は来た時に聞いたから分かってる。

 確か、ここを右に曲がればいいはず。

 うぅ、視線が痛い。やっぱり、盲目の人って珍しいのかな。

 僕は少し早歩きでトイレに入った。

 ここのトイレはいくつか個室があるみたいで僕は適当に手前の方に入った。



 用を足し終わってズボンを上げた時、僕のトイレの扉が開けられる。


「え」

「あ」


 鍵かけるの忘れてた。


「えー、あー……」


 あれ、この声。


「天美さん?」

「落ち着いてるね。サトリ君」


 入ってきたのは天美さんみたいだ。

 って、なんで男子トイレに天美さんが。


「な、なんで女子トイレにサトリ君がいるの?」

「……間違えたのは僕だった……」


 僕が道を間違えたのか。

 しまった。流石に恥ずかしすぎる。

 でも、入って来たのが天美さんで良かった。

 他の人ならこんなに冷静な振りできなかった。


「あぁ、間違えて入ったんだね。目が見えないんだし仕方ないよ」

「ごめん。今出る」


 僕はトイレの個室から出ようとする。

 しかし、僕が出ようとした瞬間。

 ガチャリとトイレの扉が開く音が聞こえる。


「マジー? マジヤバいねそれ」

「マジマジ。マジマジ」


 あぁ、これは出れない。


「ごめん天美さん。少し出れないかも」

「仕方ないねぇ~」


 仕方がないから僕は入ってきた人たちが個室に入るまで待つことにした。


 __5分後。


「いやー、マジヤバい」

「マジヤバいよねー」


 5分くらい経ったかな。

 なんで外の人たち個室に入らないで喋ってるの。

 今の体制少しだけ立ちにくいし、少しだけ位置を変え__。

 僕が動かした足に何かが当たる。

 多分、壁にかけてた杖だと思う。


「うおっ」

「うぶっ」


 僕はバランスを崩して倒れてしまい、顔に柔らかい何かに当たった。


「さ、ささささサトリ君……!?」


 顔に当たっている何かから、ドキドキという音が聞こえる。

 というか、これ動悸だよね。

 しかも凄く早く動いてる。

 もしかして、僕の顔に当たってるのって……胸?

 僕の顔から冷や汗が大量に出てくる。

 女子トイレに入って、女性の胸に顔を埋める。

 僕、完全に変態だ。


「これは仕事。これは仕事。これは仕事」


 天美さんが何かを呟いている。

 よっぽど怒ってるんだろう。


「あ、天美さん。ごめん」

「だ、だいじょーぶだよぉ。気にしなーい」


 天美さんの声が引きつってる。

 それに、いつもより喋り方がわざとらしい。

 やっぱり、怒ってるんだ。


「あ、そろそろ戻らないとヤバくない?」

「あー、それな」


 駄弁っていた二人がやっと出ていった。

 あと、少しだけ早く出てくれれば良かったのに。

 僕は「ごめん」と一言謝ってトイレを出た。

 席に戻ると健斗から心配されてしまった。

 天美さんは僕が席に戻ってから数分ほどして帰ってきた。

 あとで、しっかり謝っておこう。

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