佐藤健斗の家系
今回から最後に『さとりくんのプチ劇場』をします。
主に質問返信や裏小話をするだけなので飛ばしても大丈夫です。
「__はぁ……」
いつもの放課後。僕が男子演劇部に向かおうと席を立つと前の席からため息が聞こえる。
僕の前の席は健斗だから今のため息は十中八九健斗のものだろう。
普段は元気いっぱいの健斗がため息なんて、心配だ。
「健斗、どうかしたの?」
「あ、サトリ……いや、自信を無くしかけてなぁ……俺、才能ないのかな」
「健斗らしくない」
この前、自分で「俺は天才型だからな」って言ってたのに。
「俺の家、武術やってるんだけど。どれだけ訓練しても姉に勝てなくてな」
「健斗の家って武術してるんだ……かっこいいね」
「そ、そうか? に、にしし」
いつも通りの変わった笑い方をする健斗。
「__健斗姉上! 健斗姉上はいますか!?」
「ん、健斗……姉上?」
教室の入り口の方から健斗を呼ぶ声が聞こえる。
声からいて男の人だろう。
それにしても、姉上?
「なっ、宗也!?」
「あ、健斗姉上いるんでしたらへんじっ!!?」
「少し黙っててくれ宗也」
え、健斗の声がクラスの入り口の方から聞こえる。
さっきまで僕の近くにいたのに、健斗って足あ早いなぁ。
「す、すまんなサトリ。こいつ、俺の事を姉だと思ってる変な妹でな」
「そうなんだ」
というか、妹って事は女の子なんだ。
「う゛ーー!! うう゛ーーー!!」
その、健斗の妹ちゃんのうめき声みたいなのが聞こえる。
健斗、いったい何してるのさ。
「ぶっ! 健斗姉上! いきなり口を押さえるのはやめてください!」
「宗也、俺は兄上だからな?」
「健斗姉上、いったい何を」
「な、宗也。俺はあ・に・う・えだからな?」
健斗の声の方から邪気のようなものを感じる。
そして、健斗の喋り方が脅しをしている人にしか聞こえない。
「は、はい。健斗あ、にうえ」
「よろしい」
こんなに怖い健斗、初めてだ。
「それで、何の用だ宗也?」
「いや、健斗あね、兄上が帰りに特売品かうから手伝ってくれと言ったから……」
「あ、そういやそうだった」
僕は話している二人に近づいく。
「ねぇ、健斗」
「ん、あぁ、サトリ」
「健斗の妹。紹介してくれない?」
健斗は僕の親友だ……多分。昔、健斗に「サトリくんは俺の親友だよ。絶対に誰にも傷つけさせないからね」と言ってくれたし。
あぁ、あれから一年近く経つんだよな。
いや、そうじゃなくて。
健斗は僕の親友だ。
親友の家族のことは知っておきたい。
「あぁ、こいつは俺の妹で宗也だ。一年だけど剣道部の主将なんだ」
「凄いね。もしかして健斗の家の武術って剣道なの?」
「いや、うちは柔術でどっちかってぇと合気道に近いな」
「へぇ」
家で武術してるのに剣道なんてしていいのかな?
こう、「お前は他の武術に浮気するのか!!」とか怒られないのかな。
いや、でも、健斗の性格からしてあまり厳しい親御さんは想像できないなぁ。
「あ、あ、あ、あ」
「ん、どうした宗也?」
「あね、あねね、あねう」
あれ、なんか似たような状況最近あった気がする。
僕は、宗也ちゃんの呪文のような言葉を聞いて思った。
「__健斗姉上が、男の子を侍らせてるぅー!!!」
「あっ」
「はべらせる?」
侍らせる? 確か、そばに置いて世話をさせるとかそんな意味の言葉だったと思う。
僕、別に健斗の世話はしてないけど。
「は、母上に報告「まて宗也! それは勘弁してくれ!」__いいや待てぬ!!」
プルルルという発信音が聞こえてくる。
んー、これどういう状況なのかな?
「あっ、母上!! 緊急に報告する事が」
『ん、どうした?』
電話から聞こえてきた声は多分男の人のものだ。
ていう事は出たのはお母さんではなくてお父さんだったのかな?
「健斗姉上が__男の人を侍らせて目の前でイチャイチャしてきました!!」
「い、イチャイチャってお前……」
健斗は不服があるような声で言った。
確かしかに、男同士でイチャイチャとはあまり言わない。
せめて、仲良くしていたと言って欲しい。
『__ナニィ!!? 宗也、今すぐその男の人と健斗をうちに連れてこい! 俺は今すぐ海斗と準備をする!!』
「はい、大至急連れてきます!」
「お、おい、そんな勝手に」
「家の掟です!」
「うっ……」
あれ、これはもしかして健斗の家に行かないといけない感じかな?
ていうか掟って……。
もしかして、健斗の家は武術をやっているから友達を作るのにも試練が必要とか?
宗也ちゃんと健斗のお父さんの異常なまでの反応。多分、そうなんだと思う。
というか、じゃなかったら本当に訳わかんない。
「それでは、その、健斗姉上の……すみません。名前を伺ってもいいでしょうか?」
あ、そういえば僕、名乗ってなかった。
やばい。もしかして、礼儀とかも見られるのかな?
気をつけないと。
「僕は、三河サトリ……健斗の友人です」
「そうですか……それで、そのすみませんが今からうちに来ていただけませんか?」
これは、僕が健斗と親友のままで居られるかの試験だ。
行かないと。
でも、その前に千琴さんとお母さんに連絡しとかないと。
「少しだけ、待ってて」
「あっ、はい」
僕は少し場所を離れて、お母さんと千琴さんに連絡した。
お母さんは「健斗ちゃんの家? いいわよ」と言ってくれた。
千琴さんは「大切な用事なんだろう? 僕はあまり無理強いするタイプじゃないんだ。それにサトリくんはいつも頑張ってるからね。今日くらい休んでも大丈夫だよ」と言ってくれた。
僕は連絡を入れておかないといけない二人に連絡をいれて、許可を取ると健斗たちのところまで戻る。
「大丈夫だよ」
「そうですか。お時間とらせてすみません」
「今後の為だから」
「今後の為!?」
そう、僕と健斗の今後の為だ。
健斗は僕の初めての友人だ。
絶対に認めさせる。
「うん、絶対に認めさせるよ」
「み、認め、させる……三河さん……そんなに姉上の事を……」
「う、うぅ……」
あれ、なんで二人ともそんな恥ずかしそうな声を出してるの?
もしかして、熱い友情的なのが恥ずかしいのかな?
でも、これは僕の本心だし。
「それじゃあ、行こうか」
「お、おう」
「はい……」
絶対に、僕と健斗の友好関係を認めさせないと。
頑張るぞぉ。
《さとりくんのプチ劇場》
サトリ「と、いうわけで。今回から始まる新コーナーです。ここでは主にゲストを呼んで質問返信や軽い裏話をします」
健斗「今回のゲストは俺だな」
サトリ「メタい発言などもあります。苦手な方は飛ばしても大丈夫です」
健斗「あれ無視か!?」
サトリ「説明の方が大事だから」
健斗「た、確かにそうだけど」
サトリ「ちなみに僕は、このコーナーでは目を開けています」
健斗「いいのかそれ?」
サトリ「このコーナーは作品に関係ないから」
健斗「じゃあ、今は俺の心読めてる状態なのか?《別に読まれても困らないけど》」
サトリ「うん。ばっちし」
健斗「その能力、本当すごいな《でも、サトリはその能力のせいで……》」
サトリ「健斗、優しい……」
健斗「えっ、いきなりどうした?」
サトリ「いや、なんでもない。というか、見て見たらわかるけど、健斗は本当に女の子だったんだね」
健斗「うっ、べ、別に騙してたわけじゃないんだぜ?《あ、でも、結果的に騙しちゃってる》」
サトリ「分かってるよ。健斗は家の都合で男のふりしてるんでしょ?」
健斗「あ、そうか。ここじゃ全部バレてるのか……」
サトリ「それで思うけど、健斗の家系って変わってるね」
健斗「お前が言えたことじゃないと思うぜ?」
サトリ「あ、確かに」
《さとりくんのプチ劇場終了》
ゲストを誰にして欲しいとか、質問などがありましたらできるだけ答えさせていただこうと思います。




