シチュー
ショッピングモールから帰ってきて家に入ると、
「お兄ちゃん! おかえり!」
咲が出迎えてくれた。
「咲、私には言ってくれないのかしら?」
「……おかえりって言うか__なんで手を繋いでるの!? 羨まけしからん離せい!!」
咲はそう言って僕とお母さんの手を無理やり離す。
「ちょっ、何するのよ咲! 折角の親子のスキンシップを!」
「お兄ちゃん! こんな野獣なんかの手を握っちゃダメだよ!」
「咲〜、誰が__野獣ですって!?」
「いだだだだだ!! 頭割れるって!」
今のは咲が悪いから僕は何も言わない。
僕は咲の悲鳴を無視して持っている荷物をリビングまで持っていく。
「そもそもお母さん! なんでお兄ちゃんと手を握ってるの!」
「そ、それは、サトリの安全の為よ!」
「安全? 私にはむしろ、お母さんの方が危険に見えたけど?」
「言ってくれるじゃないバカ娘」
「本当のことだから仕方ないでしょ怪力ババア」
玄関ではまだ喧嘩が続いてる。
そろそろ止めないとダメかも。
「二人とも、喧嘩はダメ」
「ほら、お兄ちゃんの言う通りだよ」
「そうね。でも、そう思うなら早く手を離してくれないかしら?」
「……二人とも本当にやめて」
僕は母と咲の間に入りむすっとした顔で仲裁する。
「……はぁ、そうね。私も大人気なかったわ」
「……ここはお兄ちゃんの可愛いムッとした顏に免じて許してあげる」
「よかった」
胸を押さえホッとする。
そもそも、なんで僕と母が手を繋いでるだけで喧嘩になるんだろう?
「私は夜ご飯の準備するから咲はお風呂を洗って溜めてちょうだい」
「分かった。その代わり私が二番風呂していい?」
「まぁ、いいわ」
二番風呂って普通は一番じゃないのかな?
「咲、なんで二番?」
「え、だって一番はお兄ちゃんでしょ?」
なんだか、当たり前でしょって感じで言われてしまった。
「いいの?」
「うん! むしろ、お兄ちゃんの……ぐへへ」
「咲、笑い方が気持ち悪いわよ」
「む、そんなことないよ!」
ごめん咲、今のは気持ち悪かった。
少し鳥肌立っちゃった。
「それじゃ、お風呂掃除行ってきます!」
「私も作ってくるわ。サトリはラジオでも聞いてて」
「……分かった」
リビングにラジオなんてあったっけ?
リビングでソファーに座り点字の本を読み始めて30分くらい経った。
「ごはん出来たわよー」
「あ、お兄ちゃんごはん出来たって、行こ!」
「うん」
隣に座っている咲が立ち上がり僕の腕を掴み急かす。
読んでいる点字の本を閉じ僕も立ち上がる。
「今日はサトリのリクエストでシチューよ」
「わぁ、シチューって珍しいね!」
「そうね。うちではあまり作らないわね」
僕は数年ぶりのシチューの匂いによだれが垂れるのを抑える。
「それじゃ、食べましょう」
「いただきまーす!」
「頂きます」
僕は手を合わせて言うと手探りでスプーンを掴みシチューをすくい上げる。
おぼつかない手つきで口の中に入れる。
「……美味しい」
「天使か」
「男神か」
僕は久々に食べるシチューの味に感動し休む間も無く口に入れていく。
「さ、サトリ、そんなに焦って食べたらこぼしちゃうわよ?」
「__あ」
母に注意された瞬間、僕は手を滑らせスプーンを落としてしまう。
膝の上にじんわりと広がる暖かい感触がシチューをこぼしたことを明確にする。
「あらら、ちょっと待ってて拭くもの持ってくるから」
「一生懸命ご飯を食べるお兄ちゃん……なんで私はカメラを持ってなかったの……っ!」
咲が机を叩いて悔しそうな声で何かを言っている。
だが、僕は罪悪感で咲が何かを言っているなんて気にならなかった。
「サトリ、拭くわよ」
「……ごめんなさい」
母に迷惑をかけてしまった。
母が折角作ってくれたシチューをこぼしてしまった。
「大丈夫よこのくらい」
「……ありがとう」
母が膝の上に落ちたシチューを拭いてくれている。
本当なら僕が自分で片付けないといけないのに。
「そんな顔しないの! こんな時くらい甘えてくれていいのよ?」
「なっ。お母さんずるい! お兄ちゃん、私にも甘えていいからね!」
二人の優しい言葉に僕の顔は自然に笑顔になる。
「ありがとう」
「天使か」
「男神か」
こんな話書いてというのがあったらできるだけ検討させて頂きます。
あと、キャラの容姿は主人公の一人称なので説明されてませんが説明した方がいいでしょうか?
ちなみに主人公の容姿は少しクセのある黒髪で痩せ型、身長は165前後です。
肌は白く、美形です。
目を開けないからいらない説明かと思いますが一応垂れ目です。




